共話日記

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共話日記というサイト作成中です。 共話とは..聞き手が話し手の話をひきとって一緒に会話を進め、一本の線のように会話を進めてくやりとり。「お腹すいたね」「すいたね、ご飯食べようか」など。

最近の記事

熊と青年

熊は森の中を歩いていました。今日も大忙しです。何しろ冬が近づいてきているので、その前にたくさんの食べ物を探して栄養を体に取り込まなければいけません。 熊は足元の大量の落ち葉の隙間から、木の実の匂いがしないかと鼻をとがらせ、踏み込んだ時に木の実の割れる音が鳴らないかと耳をそばだて、そして丸く固い触感が足の裏から伝わってこないかと神経を集中させました。 「あれ、おかしいな。」 しかし、昨日もおとといも歩き回っても、どこにも木の実は落ちていません。今年の夏は暑かったので、木は根

    • 米粒の魔が差す

      A「ええ、ええそれはもうえらいこって。 気いついたらすうとおらんくなっておりまして。」 B「‥‥」 A「まあわたしどもも、こうたくさんお客さんおりはりますので、お酒は切らしておらはりませんやろかと気いはってみましたり、かと思いましたら玄関口でまあまあお足元のわるい中よう来てくださりましたとご案内してましたりと、 心配事も少なからずありまして、あっちへこっちへとまあ絶え間なく足動かしておりましたら、アレがいなくなってもちっとも気いつきませんのですわ。」 B「‥‥」 A「

      • 水を貸せばややこしい。とかくに人の世は住みにくい。

        化粧水の空ビンが出されているのに気づく。 冬の夜に顔を洗うのが得意な人はいないだろう。 「ひー ちべたっ」 濡れた手で洗顔料の蓋を開けると、もう残りが少ない。 お化粧をしなかった日は夜に顔を洗わないようにしている。ちびたい水と毎夜 向かい合わなくてもいいために 日中もお化粧をしないのではないかと 自分でも半分そうだと思いつつも半分は違う理由をあてがっている。 一度浴びればなんてことはない水をぴしゃぴしゃと顔にかけながら そうだ 彼は今 化粧水を切らしているのではないかと思

        • 道とおねしょ

          何度目かの繰り返しの中で、いつもと違う方向にハンドルを切ったとき、ぐるぐると回る遠心力からようやくスポンと抜け出した気持ちになる。 なんてことはないよくある公園の中を わたしはもう何往復も自転車で走っている。柔らかくカーブした砂利道を道なりに進むと出口付近の左側に細く短い分かれ道が現れる。そちらには目もくれず、まっすぐに突き進んだ先でハッと気づく。「しまった」と心の中で舌打ちするがもう遅い。そう、その左の細い道を選ばないと、先の自転車道へと続かないのである。 公園の中は緑

          おべんとうばこのうた

          「これくらいのお〜 お弁当箱にい〜」 出だしは大事だ。元気よく声を出しながら両手を目の前に平行に並べたら、右手と左手は各々端まで移動する。ありったけ腕が伸びると、そのまま下へ直下する。この辺りで「これくらいのお〜 」の「のお〜」のところだ。 そして両手は互いの引力に引かれるように中央へ戻ってくると、お弁当箱が完成する。 「おにぎり おにぎり ちょっとつめて」 おにぎりを握る動作をする。 直前に作った巨大なお弁当箱の中でコロコロ転がりそうなサイズだ。 「きざーみしょーがにご

          おべんとうばこのうた

          白色

          昔、こんなことがあった。 こんがりと焼けた肌色をした女の子が立っていた。 にかりと笑うと 歯と歯のすきまにポツポツ黒い穴が目立つ。 彼女は白い服はきらいと言った。 隣の男の子はどうしてと尋ねた。 彼女はおしりのしっぽを振りながらこう答えた。 「だってだんだん歳をとると髪が白くなるでしょ。 最後に残った骨も真っ白でしょ。 おまけに煙突から出る煙も白いし。 白い服なんか着てるとうっかり一緒にのぼっていっちゃう。」 よく見ると彼女のふわふわの髪はところどころに白が混じっている。 「

          昔 所さんの番組で見た ○○さん

          ずいぶん前に、所さんのテレビ番組で、ある芸術家の女性が取材されているのを見たことがある。 その番組は、所さんがカードを一枚引いて1文字を選ぶところから始まる。 伏せて並べられたカードには かな文字の1字が書かれ、選ばれた1字から始まる名字(姓)を決定し、その名字の活躍する人を 企画者側がネットで調べて取材する、という内容の番組だ。 突然と偶然がつながって、選ばれたその方は当時70〜80歳くらいのおばあさんだった。彼女は毎日 朝から夕方までずっと絵を描いていた。正確には'ず

          昔 所さんの番組で見た ○○さん

          虫目線

          室内に植木鉢を置いてから、小さな黒いものが目に入るようになり、 数ミリしかない小さな体躯をふわふわと運ばせている生き物は どうして果敢にこちらに向かってくるのだろうと不思議に思いながらも、 パチンパチンと手を叩くたび その命は簡単に息絶えます。 それでもまた新たな命がこちらに向かってきます。 作業に集中していると、ピントが合わないほど至近距離に近づいてくるコバエたちにわたしは苛立ちます。 憤慨し手を大きく払うと、小さなそれは瞬く間に風の渦に飲み込まれます。 「向こうの方が

          ツール・ド・フランスに見る個人と共同体の関係性

          目の奥に鮮烈なイエローの残像を残しつつ、美しい街並みを走る自転車の集合。 ドローンが映し出す集合は滑らかに道なりを移動していく。無言で進行する塊と相反するように、周囲からは賑やかな歓声が響く。 自転車レース ツール・ド・フランス。 わたしも例にもれず、毎日のレース実況に胸を熱くさせています。 特に印象的なのはゴール間近の接戦です。一人の選手が突然速度を早める。残された体力とゴールまでの距離、そして周囲の選手たちの状況を読んで、今だと思うタイミングで勝負をかけます。それに呼応

          ツール・ド・フランスに見る個人と共同体の関係性

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          【漫画】「今日のアナーキー」 第1話 エミィ_2

          【漫画】「今日のアナーキー」 第1話 エミィ_2

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          【漫画】「今日のアナーキー」 第1話 エミィ_1

          【漫画】「今日のアナーキー」 第1話 エミィ_1

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          般若心経はそらで言えますか?

          「般若心経はそらで言えますか?」 外はまだ暗く寒い朝7時、暖かな多目的室のようなフロアでお坊さんにそう聞かれました。 “はんにゃしんぎょう” 耳慣れない言葉は、久しぶりの友人に偶然ばったり出会ったような、新鮮さと懐かしさを与えてくれました。 わたしは「いえ まったく」と手をぶんぶんと振って初心者アピールをふんだんに出しました。 部屋にはすでに何人かの人がいて、みんな壁の方を向いて足を組んで座っています。 大きな窓はカーテンでしっかりと隠され薄暗く、まどろんだ分厚い空気が充

          般若心経はそらで言えますか?

          「今日のアナーキー」 第3話 キミちゃん

          「ま〜ま〜」 まさしがお母さんに気がつくと、砂遊びを放り出してこちらに向かってくる。 手にはお気に入りの怪獣のおもちゃを握っている。 キミちゃんはしゃがんでまさしを包み込みながら、今日のことが気にかかっていた。 「さっきのエミィちゃん、ちょっと変やったなあ。」 2度目の出会い 「ちょっとすんませんっ …まさしっ」 人だかりの中にぐいぐいと分け入ると、 キミちゃんはぐったりとした息子の姿を見つけ、肩を強く握る。 安堵と緊張が同時に湧き上がる。 そばにいた数人がまさしと同じよ

          「今日のアナーキー」 第3話 キミちゃん

          「今日のアナーキー」 第1話 エミィ

          【あらすじ】 「幸せって何?」無邪気に尋ねるエミィ。両親に溺愛されて育った彼女にとって幸せは常にそばにあった。 太陽を崇め、植物を育て、湖を眺め、そして物流センターで働くエミィ。軽度の知的障害がある彼女は、周期的に知能が向上することがある。揺れ動く思考のはざまでアイデンティの確立に悩みながらも「幸せ」を求めて新しい生活を始めるのだった。 民間企業が立ち上げた 通称「アナーキタウン」という街で、気ままな一人暮らしを試みるエミィと、3児を育てる若ママのキミちゃん、アナーキタウン

          「今日のアナーキー」 第1話 エミィ

          「今日のアナーキー」 第2話 世田さん

          プロローグ 「…今日はかなり安定してるなあ。来週も予報では晴れが続くし、このままいくと業務稼働率72.5%か。」 夜もすっかりふけた時間、部屋の隅の蛍光灯だけが灯された薄暗いメインオフィスに世田さんは一人パソコンを睨んでいる。 今週の物流センターの稼働率結果を眺めながら、来週の天気予報を確認し、残りの備蓄電気量、物流センター全体の電気使用率などを改めて見直している。 「やっと日照時間が長くなって助かったわ。」 目頭を抑えた後、ゆっくりと伸びをする。 「んん゛~」 身体中に心

          「今日のアナーキー」 第2話 世田さん

          緩やかに開かれた日記の面白さ

          日記を「こっそり」つける あなたになら、これまで誰にも打ち明けられなかったことを、なにもかもお話しできそうです。どうか私のために、大きな心の支えと慰めになってくださいね。 引用 「アンネ・フランク著 アンネの日記 増補新訂版」 わたしが初めて「アンネの日記」を読んだのは35歳の時です。初めの1行でグッと心を掴まれました。それはアンネが初めて未知なる領域へと飛び込んでいくときめきが伝わってくるようだったからです。(当時アンネは13歳。1行目からなんとうまい心の描写だ!とその

          緩やかに開かれた日記の面白さ