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AIと物理の融合:次世代の気象予測モデル『NeuralGCM』の革新

この数日猛暑と豪雨のニュースが多くなっています。日本だけではなく異常気象は世界でも問題となっており、以前に山火事の早期検知を打開するベンチャーの取り組みについても紹介しました。

迅速な対処も大事ですが、理想を言えば予測の精度向上、つまり天気予報がいかに早く正確に当たるのかが重要になってきます。以前に、従来と異なるAIが気象予測の世界に革命を与えているという話をしました。

従来予報は、対象となる地域を格子状に区切り(デジタル化ですね)、流体力学の方程式で数値計算することで近似的な予測値を導きます。有名な基礎となる物理法則として「ナビエストークス方程式」というものがあります。

一方で、今回の新しい試みは、極論を言えば物理法則はガン無視し、過去データからパターンを予測する技法で、要素技術はやはり深層学習です。

何となくこれだけ読むと凄そうですが、突っ込みを入れるとある程度の局所的な予測に限定されます。つまり、地球全体に絡む大規模な予測になるとやはり従来型の方に軍配が上がります。

こちらも上記同様、物理法則の近似解を使っており、大気大循環モデルと呼ばれます。1つだけ紹介記事を載せておきます。

こうかくと、ではそのマクロとミクロの中間はどちらを使えばよいの?と悩みますね。
そんな悩み多き天気予報で、Googleが両面に最適な新しいモデルを発表して話題になっています。

従来比較で、3500倍以上高速かつコストが10万分の1に抑えられる気象予測モデル「NeuralGCM」をGoogleが公開した、
というはなしです。

ポイントは、長期を従来の物理法則、短期(または局所的)を深層学習、とうまく切り替えられるように調整している点です。

上記論文内の図

精度も、数日間〰数週間で95%の確率、40年間の気温予測では、平均誤差0.25℃に抑えることに成功したそうです。後者は下記のグラフが分かりやすいですね。青線が今回開発したものです。

出所:上記紹介記事内の図

高性能化自体はややマヒしてしまったのでそこまで驚かなかったのですが、その計算コストが従来比10万分の1まで抑えることにも成功したそうです。

気象は(冒頭の過去記事にも書いた通り)単に我々個々人が傘を持っていく行かないの判断だけでなく、経済活動とも密接に絡みます。
もっといえば、今話題の気候変動にも直結し、人命にもつながってきます。興味のある方のために、最近気候変動による被害を多角的な視点で説明した記事を見つけたので貼っておきます。

気象学と聞くとなんとなく暗記のイメージがありましたが、今はAIの台頭で過去のブレークスルーを突破しているホットな分野ですね。

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