自然の美しさを証明した偉大な数学者「エミー・ネーター」
史上最高の物理学者と聞かれると、多くの方がアインシュタインと答えるでしょう。
その最も有名な理論は、時間と空間が相対的でグニャグニャ曲がる宇宙像を記述した一般相対性理論です。
リーマン幾何学という難解な数学を用いるので、以降アインシュタインは数学の必要性を感じたと言われます。
そんなアインシュタインが、
「物理にもっとも貢献した数学者」
と称賛した同世代の研究者がいます。
「エミー・ネーター」(1882-1935)というドイツの数学者です。
その最も称賛された理論は、本人の名前から「ネーターの定理」と呼ばれています。
ざっくりいうと、
「(連続的)対称性があればそれに対応する保存則が存在する」
ことを示しました。
例えば、ある物質が動いているとき、宇宙空間には方向に偏り(中心)がないので対称といえます。(並進対称性と呼ばれます)
だから「運動量(質量✕速さ)保存則」が成り立つわけです。(これは直感的にわかると思います。あくまで重力など作用を受けるものが均一な空間での仮定)
もう1つ例をあげておきます。
今度は「時間」対称性があるとします。
馴染みのない用語だと思いますが、もし、今日テニスボールをほうり投げた軌跡を観測したとします。
おなじみの放物線を描きますね。
もし明日同じことをしても、同じ結果を得るはずです。
これが違っていたらえらいことですね。これが時間対称性を指します。
このときに保存されるのが、「エネルギー保存則」です。
これがどんな対称性でも一般的に成り立つ、というのがネーター定理です。
よく物理学者が美を追求するときによりどころにするのが、この対称性です。
例えば、以前とりあげたヘルマン・ワイルもその一人です。(この方もネーターの業績を認めています)
対称性にも上記で触れた日常的にしっくりくるものもあれば、非日常的かつ深遠な対称性もあります。
なかでも、上記のワイルが提唱した「ゲージ理論」は、それまでばらばらだった物理法則をゲージ(物差し)を変換することで対称性を与えるものでした。
そして、今残っている宇宙の最大級の謎「ダーク(暗黒)エネルギー」もこの対称性を信じて解決しようとする動きもあります。
ダークエネルギーとは、宇宙加速膨張の元ですが、理論と実観測との乖離が120桁も違うことで、物理史上最大の誤差ともいわれます。
詳細に関心ある方のために、過去投稿を載せておきます。
そしてこの謎に取り組む仮説の1つが「超対称性」粒子を導入することで、こちらも過去記事の引用にとどめておきます。
ダークエネルギーについては、時間対称性がない(宇宙創成の莫大なエネルギーが時間変化で放出されているように見えます)ためエネルギー保存則は成り立ちません。
それでも、ネーター氏が残した業績は全く色あせません
今年も自然の美しさが発見されることを願っています。
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