欧州が戻ってきた:アリアン6初飛行に成功
日本の基幹ロケットH3がついに本番運用を始めました。
米国では相変わらずSpaceXが際立っており、普及機のFalcon9は週2ペースでうちあげられています。
さらに、次世代宇宙船Starshipの5回目となるテストが8月に行われます。
今回は第一段エンジンが発射台(前回は海上)に戻ってくることを目標としています。
それに追いつくべく、SpaceXの初期ステージより打ち上げ頻度記録を超えたのが、Rocket Labです。
じつは欧州でも、最近大きなマイルストーンを迎えました。
ようは、
欧州の基幹ロケットアリアン6が初のテスト飛行で成功した、
というはなしです。
名称は、欧州の宇宙企業アリアングループが開発したことによりますが、ESA(欧州の宇宙機関)も共同で行われており、欧州の象徴的なロケットとして歴代機は活躍してきました。
「成功」と報道されていますが100点満点というわけではありません。
搭載された超小型衛星を分離後(こちらは無事軌道に載りました)に推進剤タンクを加圧する装置が停止し、予定された上段エンジンの再点火ができないトラブルはありました。このエンジンは再利用される予定でした。
実はこのアリアン6、H3と開発時期と体長・積荷性能が似ています。つまり同じような貨物を運べる競合というわけです。
それまでは、ロシアのソユーズロケットにある程度頼っていたのですが、ウクライナ侵攻がきっかけで自前でのロケット開発を急ぐことになりました。
今回は11個の人工衛星を搭載し、いずれも無事軌道に到達しました。
その中にはNASA委託もあります。早速公式サイトでも今回の打ち上げを喜ぶ発表がされました。
※タイトル画像は記事内の画像
CURIE(CubeSat Radio Interferometry Experiment)と呼ばれるキューブサット(小型人工衛星)です。
6ユニット(1U)が2つに分離されて観測を行っており、1Uの長さ、幅、高さはわずか10センチメートルです。主に太陽フレアによる影響を探る宇宙天気を目的としています。宇宙天気については過去記事を。
アリアン6は、2025年には6回、2026年には8回の打ち上げが予定されています。既に29ものミッション発注があり、その多くは小売り大手アマゾンのインターネット衛星群カイパープロジェクトです。このプロジェクトの詳細は過去記事に委ねます。
実は、今回のような大型ロケットは、H3がそうであったように、大体失敗します。
ただ、一部エンジン点火がうまくいきませんでしたが、積み荷を届けるということ自体は素晴らしい偉業です。
今回一番印象的だったのは、フランスの宇宙機関(CNES)のフィリップ・バティスト長官のこの一言です。
「欧州が戻ってきた(Europe is back)」
新たなターミネータの参入で、宇宙産業がさらにヒートアップしそうです。
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