見出し画像

宇宙初期の謎:原始ブラックホールとそのエキゾチックな仲間たち

通常のブラックホールとは異なる「原始(Atomic)ブラックホール」。以前にも何度か触れました。

通常のブラックホールは、下図のとおり天体の最終形態です。

出所:上記記事より引用

今から半世紀前、若きスティーブン・ホーキングが宇宙初期のビッグバン直後にもブラックホールが生成されたのでは?という仮説で誕生したのが「原始ブラックホール」です。
天体版は太陽の数倍から数百億倍ですが、こちらは極小サイズで、陽子1個未満のサイズで数トンの重さを持ちます。

その「原始ブラックホール」について最近新しい研究発表があったので紹介します。

ようは、
ダークマターの副産物でエキゾチックなブラックホールが生まれた、
というはなしです。

エキゾチックとは「異文化、異質な」というニュアンスです。

まず、原始ブラックホールは、ビッグバン後の最初の10兆分の1秒以内に形成されたと計算されています。
そのころはまだ原子はできておらず、その部品であるクォークとグルーオンが入り乱れたスープ状態です。
ただ、調べていくと、両者の相互作用をもたらす「色電荷」という物理量もあったそうです。

そして原始ブラックホールが出来る初期段階で(なんと100兆分の1 !)、副産物として「異質な」ブラックホールも生成されたかもしれない、というのが最新の研究発表です。

以前から仮説としてはささやかれていたのですが、今回はそのプロセスをより具体化し、その計算によれば従来かんがえられていたよりも指数関数的に多いことが判明しました。

我々が知っている原子核が形成されるのは、ビッグバンの約 1 秒後と推定されています。
その最初の原子核が形成され始めたときに優勢だった平衡状態を、今回発表された極限ブラックホールが影響を与えている可能性があるそうです。

ホーキングは、若いころだけでなく、死去する数年前まで論文を発表していました。関連投稿を載せておきます。

そして今回の研究発表を行ったアロンソ=モンサルベ氏とデビッド・カイザー氏は、(当初あまり陽の目を見なかった)ホーキングの原始ブラックホール仮説を信じて今回の研究を進めました。
このあたりもホーキングがいかに宇宙論に影響を与えたのかを感じさせてくれます。

今は原始ブラックホールがあっただろうことは知られるようになりました。

そして今回さらにその初期に異質なブラックホールが発表され、後世の宇宙に影響を与えたのであれば、ブラックホールの定義とイメージをそろそろ考え直す時期かもしれません。
そうすれば、いずれは「エキゾチック」とはよばれなくなるかも。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?