民間初の月面着陸宇宙船の行方は?
日本時間4月26日1:40に、民間初の月面着陸を目指すHAKUTO-Rの最終フェーズが実行されました。下記でLIVE配信がアーカイブで視聴出来ます。
結果は、残念ながら着陸後の安定稼働までは確認できませんでしたが(タイトル画像は公式サイトから引用したCG)、ある程度着陸までのフライトデータは取得したようですので、次回のMission2に期待したいです。
折角ですので、このHAKUTO-Rというプロジェクトの経緯と今回の宇宙船に積まれたモノについて紹介したいと思います。
月面宇宙船プロジェクトの経緯
きっかけは、人類初の月面探査レースGoogle Lunar XPRIZEへの挑戦です。
XPRIZEは、スケールの大きな課題をコンテストを通じて解決することを目指した財団です。(なお、名前の通り、この企画は特殊でGoogleがスポンサーに入ってます)
何を競うかというと、下記の全てを1番に達成することです。
・月面に無人探査機を着陸
・着陸地点から500m以上走行
・画像データを地球に送信
優勝賞金は2000万ドル(!)です。ただ、これくらいのスケールなのでふさわしい額だと思います。(おそらく賞金以上に開発費用がかさみます)
日本チームの結果は、2015年にレースの中間賞を受賞、2017年にはファイナリスト5チームに選出されましたが、月面への輸送が間に合わず、2018年3月の期限をもってレースへの挑戦を終了しました。
ちなみに・・・優勝者はいません。いかに過酷なレースなのかが伺えます。
ただ、コンテスト終了後も日本チームは、この想いを引き継いでispaceという法人を東京で設立してチャレンジを継続します。(厳密には段階がありますが割愛)
今回の月面探査プログラム「HAKUTO-R」の名称は、日本古来の伝承「因幡の白兎」(HAKUTO)からきています。
さらに、上記の初心を忘れないよう、世界初の民間月面探査実現への挑戦を”R”eboot(再起動)するという想いを込めました。
ちなみに、ロゴも兎と地球-月軌道をイメージしています。
ミッションは3まで決まっており、今回はMission1(通称M1)で、既にMission2の開発が並行で進んでいます。
M1の積み荷は?
民間企業としての取り組みですので収益モデルが必要です。それは分かりやすく言えば「黒猫ならぬ白兎の月面宅急便」です。
今回の宅配物(ペイロード)ですが、公開資料を引用しておきます。
上図のうち、月面探査機や想いを載せた品は想像つきますが、日本特殊陶業(以下「日特」)の「固体電池」が分かりにくいので補足しておきます。
まずは、当時のプレスリリースを紹介します。(厳密には2019年に発表)
月面以前に、地上(&宇宙空間)でも固体電池は注目されています。基本的な特徴に興味のある方のために、過去の投稿を引用しておきます。
なぜ、今回月面に持っていったのかというと、競合との差別化のためです。
そもそも日特は、ガソリン自動車向け「スパークプラグ」(NTKと聞くと思いだす人もいるかもしれません)で、独自のセラミック技術に強みを持っている会社です。
ところが、ガソリンからEVシフトが進むとその強みが失われるため、その技術を生かした新規事業・製品を探索していました。
その1つが「月面でも使える全固体電池」で、彼らのセラミック技術を生かして月のような厳しい環境でも耐えうる仕様を目指しています。
上記で触れた通り、既に固体電池は大手がR&Dを積極的に行っているため、彼らの技術が活かせる選択肢が「宇宙開発」だったわけです。
ぜひ、次回のMission2、そして宇宙でも使える新世代固体電池の実証それぞれの成功を心から願っています。
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