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セッション定番曲その55:Cry Me A River by Julie London, etc.

ジャズセッションでの人気曲。歌モノですが、インストでも雰囲気がありますね。ブルージーに演奏したい曲。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:Cry Me A River

「川が出来るほど(私に向かって)泣く」って一体どういう意味なのでしょうか?

これは慣用句で「いつも不平不満をいったり、人前で過剰に泣いたりする人についての皮肉に用いる」と説明されています。
Used sarcastically to someone who is constantly complaining and or to cry excessively in front of someone else.

つまり「そんなに大袈裟に泣いても、あなた自身が撒いた種でしょ」とか「あなたの涙なんて見飽きたわ」という感じですね。

「Come on」も「こっちに来て」ではなくて「おいおい・・・」「いい加減にしてくれ」というニュアンス。

この歌は未練たらたらな(元)恋人に呆れて愛想を尽かせて、歌っている訳です。決して幸せな関係じゃないし、幸せな別れじゃない。

ポイント2:Julie London

美人女優。ジャズ歌手としての評価は賛否両論ですが、憂いのある曲を歌わせると抜群に表現力のある人でした。人としての色気って大事ですね。

資料によると、もともとはElla Fitzgeraldが歌う予定だったのが流れて、Julie Londonに回ってきたらしいのですが、エラが歌うと相手を追い詰める感じなのに対して、彼女が歌うと「自分も未練がある」感じにも聴こえるので、結果的に正解だったんじゃないかな。代表曲になりました。

定番のイントロも雰囲気たっぷりですね。


ポイント3:Plebeian

平易な言葉で綴られている歌詞の中で、これだけ聞き慣れない言葉。
「一般庶民的」というような意味らしいです。
plebeian の意味、語源、由来
ラテン語から来ていて、階級社会の中での特権階級との比較で用いられる言葉。

Told me love was too plebeian
愛なんて俗っぽいものだと、あなたは私に言ったわよね

作者のArthur Hamiltonは凝った歌詞のつもりで書いたのだと思いますが、この単語が原因でエラに歌わせる計画が頓挫してしまったようです。「黒人歌手はこんな言葉は使わない」といちゃもんが付いたという説も。

ポイント4:ブルース

形式的にはブルースじゃないですが、歌詞の内容、メロディともに「ブルー」な気分そのもので、ブルージーに歌い、演奏するのが似合う曲ですね。

だから後述するようにジャズミュージシャン達だけでなく、ロックやソウル系のミュージシャン達もレパートリーにしています。

ジャズの根っこにはブルースがある」というはよく言われることですが、それが表に出てきたり裏に隠れていたり。この曲はモロに表に出てきている一例です。歌う人はちゃんと「怨歌(えんか)」のつもりで思いを籠めて歌いましょう。ただ口先でオシャレに歌うだけでは、この曲はもったいないですね。

ポイント5:構成

定番のAABAの構成。しつこいくらいに
You can cry me a river
Cry me a river, I cried a river over you
という恨みフレーズが繰り返して出てきます。

Bパート(サビ)はちょっと変わっていて、「ああ、こういう展開か」というもので、私はなかなか覚えられずに苦労しました。

楽典的な解説はこの方が書いてくれています。
CRY ME A RIVER|たかさん

ポイント6:ジャズの歌唱、演奏例

Ella Fitzgerald、やっぱり上手いですね。ポイントポイントで言葉にニュアンスを籠める歌い回し。説得力が強いので、どうしても「相手を追い詰めて、言い訳出来ないようにしている」印象かな。


Diana Krallの余裕たっぷりの歌い方もこの曲に合いますね。美人が歌うべき曲なのかと思わされてしまいます。


Dinah Washington、さすがのブルースフィーリングです。


Michael Bublé、このスパイ映画のような大袈裟なイントロも一時期流行りました。男性が歌うと「俺も沢山泣いたんだよ」という箇所が強調されて面白いですね。


インストの例、Blue Mitchell。ジャズ喫茶の雰囲気だなぁ。


Dexter Gordon、ナイトクラブの雰囲気。


ポイント7:ポップス、ロック系の歌唱、演奏例

Joe Cockerの強烈なソウル/ファンク・アレンジでの熱唱。
Leon Russellが弾くドライブするピアノ、ゴスペル風の分厚いバックコーラス。最高のライブ録音です。

エアロスミスが迷走していた時期の録音。どうなんだろう?
アレンジは面白いところもあるけど、気の抜けた歌唱だなぁ。
Aerosmith - Cry Me A River

Jeff Beckが割と原曲に忠実に再現したもの。ギターもごく普通。
Cry Me A River (feat. Imelda May And Jason Rebello)

Jeff Beckの、こっちはインスト。味わい深いです。
Jeff Beck Cry Me a River

Linda Ronstadtがゆったりと表情豊かに歌ったもの。結構好きかも。


何と美空ひばりさんが日本語で歌ったもの。


例によってボサノバ・バージョンもあります。
Cry Me a River (Bossa Version)

余談:Justin Timberlake

近年ではJustin Timberlakeが歌った、同じタイトルの全然別の曲が有名ですね。

Justin Timberlake - Cry Me A River

You told me you loved me, why did you leave me all alone?
Now you tell me you need me when you call me on the phone
Girl, I refuse, you must have me confused with some other guy
The bridges were burned, now it's your turn to cry
Cry me a river, Cry me a river

こっちも恨み節前全開の曲です。


■歌詞


Now you say you're lonely
You cry the whole night through
Well, you can cry me a river
Cry me a river
I cried a river over you

Now you say you're sorry
For being so untrue
Well, you can cry me a river
Cry me a river
I cried a river over you

You drove me, nearly drove me out of my head
While you never shed a tear
Remember, I remember all that you said
Told me love was too plebeian
Told me you were through with me

And now you say you love me
Well, just to prove you do
Come on and cry me a river
Cry me a river
I cried a river over you


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