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セッション定番曲その42:Route 66

ジャズ、ブルース、ロック(ロックンロール)、カントリー、いずれのジャンルでも演奏されるセッション・ド定番曲。ジャンルを繋ぐミッシングリンクのような曲です。一種の「ご当地ソング」でもありますが・・・
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:何について歌っているか

「Route 66(国道66号線)」はアメリカ合衆国8州を通り、中東部のイリノイ州シカゴと、西部のカリフォルニア州サンタモニカを結んでいた全長3,755kmの旧国道、1926年指定。州間高速道路の発達によりその役目を終え1985年に廃線となった。大陸を横断するこの道はアメリカ西部の発展を促進した重要な国道であり、映画や小説、音楽などの中に多く登場し、今なおアメリカのポップ・カルチャーの題材にされている。(Wikipedia)

もともとは米国東海岸と西海岸をほぼ真っ直ぐに結ぶルートが計画されていましたが、途中で出発点がぐっと北部に変更されてシカゴになりました。通っている8つの州はそれぞれに個性があり、気候も土地柄も人柄も違っていますね。

1946年に書かれたこの曲では、シカゴからLAに向けて車を走らせようぜ、途中には素敵な街が沢山あって、ワクワクする冒険が待っている、と歌っています。米国内で過去に何度かあった「西海岸へ向かうといい事がある」という盛り上がりも。

A Brief History of US Highway Route 66

ポイント2:今この曲をどんな気持ちで歌うか

全盛期には道中の宿屋や食堂などが栄えたRoute 66ですが、徐々にもっと速く走れる本物のハイウェイ(フリーウェイ)が整備されて、街の中心部がそっち沿いに移ったりして、次第に寂れていきます。移動手段というよりも「わざわざ訪れる道」になっていく訳です。古き良きアメリアの雰囲気を味わいに行く場所。潰れたガソリンスタンドや寂れた土産物屋、壊れかけた古いモニュメントなど。

私も実際に行ったことある訳でもないですが、かつて栄えて今は寂れたシャッター街を巡る、もの好きな旅という感じかもしれません。「古き良きアメリカ」についても、それを懐かしむ時代、さらにその懐かしんでいた時代を懐かしむ、というような循環になってきていますね。米国って歴史が浅いので「古き良き」がそんなに大昔でもない時代のことだったりします。

で、2020年代の今、この曲をどんな風に歌うか。
最初に流行った1960年代くらいまでの、勢いのある、希望に溢れた旅として歌うのか。それとも現代の視点で、ノスタルジックな対象として歌うのか。
正解は無いと思いますが、後者の視点も理解した上で歌う方がいいかもしれませんね。

ポイント3:ご当地ソング

という訳で土地の名前が沢山出てきます。

Chicago to LA
St. Louie(St. Louis)
Missouri
Oklahoma City
Amarillo
Gallup, New Mexico
Flagstaff, Arizona
Winona
Kingman
Barstow
San Bernardino
位置関係は下の地図の通り、東から西へ。
歌われた土地は大宣伝になるから大喜びしたでしょうね。

固有名詞なので、現地で発音されている通りに発音するしかないですが、米国の地名って様々な発祥言語がそのまま使われていて、フランス語系、スペイン語系、ネイティブアメリカン語系、なども入り混じっていてスペルだけ見ても発音が想像が付かない場合もあります。

ここをいかに歯切れよく歌えるかがこの曲のキモなので、頑張りましょう。

ポイント4:ブレイク

地名が沢山出てくる箇所は、お約束の(リズム)ブレイクです。
この曲がよく歌われるのは、この「お約束のブレイク」が気持ちいいのも理由のひとつかもしれませんね。

ブルースではよくあるブレイクのパターンなので、この曲を通じて覚えましょう。ブレイクによって小節数が伸びないタイプのブレイクです。

ポイント5:どういうアレンジで歌うか

◆一番有名なのはNat King Coleが朗々と歌うバージョン。ポップス寄りのスイング/ジャズという感じです。希望に満ちた旅への誘いという雰囲気。このバージョンでは「66」ではなく「6, 6」と歌っているように聞こえます。


◆女性ジャズシンガー向けに思い切りジャズに振ったアレンジ。

ジャズセッションで女性シンガーが「ブルースをやりましょう」となった際に選曲されることがとても多いですね。やはりブレイクについて事前に打ち合わせしなくても自然にキマるので、選ばれるのかしれませんね。ジャズの根底にはブルースがあるので、この曲を入り口としてもっともっとブルース系の曲(沼)にも挑戦して欲しいですね。


◆もともとあるブルースの要素を強調したバージョン。曲の構造はブルースそのものですが、歌詞があまりブルースにはない(前向きな)内容なのが面白いところ。スイングとシャッフルのノリの違いを楽しみましょう。


◆疾走感の高いロックンロール。車をぶっ飛ばしている雰囲気がありますね。高性能の車じゃなくて、自分で改造して速くした車を思い切り。


◆更にロック寄りのローリングストーンズ。この頃の彼らはリズムに粘りが無くて、がむしゃらに突っ走っている感じがしますね。
Route 66

◆呑気な雰囲気のカントリーバージョン。通っているルートや現在の寂れた現状を考えると、実はこれが一番似合っているのかもしれません。
Route 66

冒頭に書いたように、色々な米国音楽のジャンルを跨いで演奏され続けている曲で、この曲を手掛かりにすると、それぞれのジャンルの重なりや繋がりが浮き彫りになるかもしれません。

◆まさかと思ったけど、ありましたボサノバ・バージョン。なんだか涼しそうだけど、土埃の多い道のイメージとはほど遠い。
Route66  ボサノバアレンジ

◆レゲエというかスカっぽいアレンジ。このバカっぽい能天気さが、どこまでも続く道のBGMとしては似合うのかもしれません。
Route 66

◆この曲はわざわざインストでやることあるのかなと探したら出てきたもの。
Manhattan Jazz Orchestra

ポイント6:Get your kicks on Route 66

Get your kicksは「ワクワクすることをやる」とか「思い切り楽しむ」という意味です。旅の先には何が待っているのでしょうか?
Route 66が舗装される以前の大昔にもこの道を足で走るレースとかあったようで、今でもバイクや自転車や徒歩(!)でこの道を制覇しようとする人はいるようです。

Get your kicks - Idioms by The Free Dictionary

■歌詞

Well if you ever plan to motor west
Jack take my way that's the highway that's the best
Get your kicks on Route 66

Well it winds from Chicago to LA
More than 2000 miles all the way
Get your kicks on Route 66

Well it goes from St. Louie down to Missouri
Oklahoma City looks oh so pretty
You'll see Amarillo and Gallup, New Mexico
Flagstaff, Arizona, don't forget Winona
Kingman, Barstow, San Bernardino

Well do get hip to this kindly tip
And go take that California trip
Get your kicks on Route 66

Get your kicks on Route 66


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