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セッション定番曲その1:Isn’t She Lovely? by Stevie Wonder

歌モノとしてもインストでも、今日も日本中のセッションイベントで演奏され、歌われている曲。歌詞の内容をちゃんと理解することで、曲への思いが深まり、良い演奏、良い歌唱に繋がるかもしれません。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここでは歌詞のポイントだけ説明します。


ポイント1:Isn't she lovely?

「She is very lovely」ではなくてなぜ疑問形なのか?
She... だと独り言ですが、疑問形にすることで周囲への呼び掛け、「ね、可愛くない?可愛いでしょ!」という、喜びのあまり自然と出てしまった言葉に思えます。それがこの曲全体を貫いていて、とても「開いている」曲だと感じられます。だからこの曲を歌う時には、自分の世界に閉じこもるのではなくて、楽しそうに喜びをシェアするように、客席に語りかけるように歌ってみましょう!演奏する人も同じように楽しそうに!無表情はダメですよ。

ただのノリのいい曲ではなく、笑顔が広がっていくような曲にしましょう。

ポイント2:Less than one minute old

曲の冒頭から「可愛いでしょ!」「素敵でしょ!」と訴えかけてきて、「she」っていったい誰?と思いますよね。ガールフレンドなのかな、それとも奥さんなのかな、と。ところが「まだ生まれて1分も経っていないんだ」という歌詞が出てきて、ああ、生まれたての赤ちゃんなんだ、と気付く訳です。普通は「〇〇歳」という数字で表すところに「年どころか1分以下」というのが入ることで表現の意外性がありますね。「one minute」をちゃんと強調しないとこの歌詞の面白さは伝わらないので、「one」をはっきりと歌いましょう。生まれたての赤ちゃんを見た(Stevieの場合は見えないから、うぶ声を聞いたんだと思うけど)感動を新鮮なまま歌にした、というのが感じられますね。

「この世界にようこそ!」という歌なのが、ここで分かります。

ポイント3:I never thought through love

発音の難しい箇所ですね。「th」が続けて出てくるのと、「t」のすぐ後に「th」が出てくるというトリッキーさ。ここは外国人(当然Stevie本人も)が歌っているのをよく聞いて真似してみましょう。

かたまりとしては「I never thought」と「through love」で分かれるので、前半で一息ついても大丈夫です。末尾の「t」はそんなに強く発音しなくても伝わります。

ポイント4:we'd be making one as lovely as she

one」はその前に出てきた何かを受ける表現です。ここでは直接は出てきていない「生まれたての赤ちゃん、愛の結晶」というところですかね。

ポイント5:Made from love

「made from」は何かの質が変化して作られた(生み出された)時に使います。ここでは「love」が「彼女=生まれたての赤ちゃん」になった、と。生命の不思議さみたいなものを表現している気がしますね。

「made of」だと質の変化ではなく原材料から作られた場合に使われます。「その泥だんごは泥を固めて作った」とか、ね。

ポイント6:知らない単語はだいたい固有名詞

ポピュラーソングの中ではそんなに難しい言葉や聞き慣れない言葉は使われないので、何だコレ?と思ったらだいたい固有名詞です。人名、地名、その土地では有名な店名やブランド名。その辺は調べるしかないですね。米国人、英国人なら当たり前に知っている固有名詞が日本では全然知られていないなんて普通にありますよね。

その固有名詞の背景をちゃんと知ることで、歌詞の意味をより深く理解出来ることになります。

この曲の場合は「Aisha」「Londie」と2つ出てきますが、いずれも人名。「Aisha」が「she=赤ちゃん」の名前、「Londie」は赤ちゃんのお母さん(当時の婚約者)の名前です。Aishaはちょっとエキゾチックな響きのアラブ系/イスラム系の名前のようで、元の意味は「alive and well=生命力に溢れている」だそうです。「Life is Aisha, The meaning of her name」と歌詞でも説明されていますね。当時の邦題は「可愛いアイシャ」でした。

ポイント7:I can't believe what God has done

「what God has done」でひとかたまりです。「神様がやってくれたこと、起こしてくれた奇跡」。「本当に信じられないよ=素晴らしいことだよ」と。

ポイント8:シャッフルのリズムに乗ろう

前のめりにハネる「シャッフル」のリズムがこの曲の楽しさ、ノリの良さの原動力ですね。この軽やかでにぎやかなリズムにいかに乗って歌うか、演奏出来るかが大事ですね。上級者になれば意図的にズラして、というのもあり得ますが、まずはちゃんとみんなでリズムを合わせて一体化していくことを心掛けましょう。

セッション定番曲で「シャッフル」のリズムの曲って意外と少ないし、「シャッフル」のハネの体感って人によって微妙に違うので、ちゃんと合わせるのはけっこう難しいです。

更には三連符を意識できると、より原曲のニュアンスを表現出来ると思います。難しいですけどね。2010年代以降のアメリカのヒット曲にはこの三連符を使ったものも多いので、いまでも流行のノリだと思います。米国南部のリズムが底流にありますね。

ポイント9:他のリズムも試してみよう

セッションイベントは原曲再生を目指す場ではなくて、何か新しいことを試してみる場でもありますよね。原曲のリズムは上記の通りですが、ボサノバにアレンジしたものレゲエにアレンジしたもの、原曲よりもファンキーにしたものなど、Youtubeで探すといくらでもアイディアはあります。リズムを変えると聞き慣れた曲がまったく違うものに聴こえて新鮮ですよね。それこそ全員の意思統一がゼロからのスタートになるので、そういう面白さがあります。

レゲエ版


ボサノバ版


ジャズ?版


■歌詞


Isn't she lovely?
Isn't she wonderful?
Isn't she precious?
Less than one minute old
I never thought through love, we'd be
Making one as lovely as she
But isn't she lovely? Made from love

Isn't she pretty?
Truly the angel's best
Boy, I'm so happy
We have been heaven blessed
I can't believe what God has done
Through us, He's given life to one
But isn't she lovely? Made from love

Isn't she lovely?
Life and love are the same
Life is Aisha
The meaning of her name
Londie, it could have not been done
Without you who conceived the one
That's so very lovely, made from love



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