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【校閲ダヨリ】 vol.19 ら抜き言葉から知る言葉の有機性 (国語学基礎概説2 [後編])



みなさまおつかれさまです。


今回は、ら抜き言葉の見分け方(簡単です)を見ていきましょう。

【ら抜きの見分け方】
★上一段活用・下一段活用・カ行変格活用(「来る」のみ)の動詞が、ら抜き言葉の対象になります。

非常に美しいですね。交響曲の完成を見ているようです。


え……活用ってなんだっけ?


そうくると思っていました。


活用とは、たとえば
遊ぶ」という動詞があったときに、「その下に付く語/使用場面(命令するときなど)」で単語の形が変わる現象のことです。


「遊ぶ」は「遊ば(遊ぼ)遊び(遊ん)遊ぶ遊ぶ遊べ遊べ」と形が変わります。


思い出してきましたか?
それぞれの形を俯瞰すると、「遊(あそ)」の部分は変わっていません。(これを「語幹」といいます)
反対に、変わっている部分(活用語尾)だけを抜き出すと


「ば(ぼ)/び(ん)/ぶ/ぶ/べ/べ」 → ばびぶべぼ(BA / BI / BU / BE / BO)


が現れます。

「ばびぶべぼ」には「あいうえお」が含まれ、活用でその全てを用いているので「五段活用」となります。
(動詞の中でいちばん多い活用の種類です)


次は、上一段・下一段ですが
見る」「考える」などがこれにあたります。変化する部分を抜き出すと

「見る」→ 「み/み/みる/みる/みれ/みろ(みよ)」

「考える」→ 「え/え/える/える/えれ/えろ(えよ)」


となります。五段活用は「あいうえお」全てを使っているのに対して、このふたつはそれぞれ「い(段)」と「え(段)」のみを使って変化しています。



い ↑
う(基点)
え ↓

と縦書きにしたときに、真ん中である「う」を基点にして「上に一段の『い』」と、「下に一段の『え』」を使っているのでこのような名前になりました。


あとは、カ行変格活用サ行変格活用ですが、これは星の数ほどある動詞の中でそれぞれひとつずつだけなので、覚えてしまったほうが早いです。

カ行変格活用→来る
サ行変格活用→する



……わかったけど、この忙しい日々の中で各動詞の活用の種類を覚えている暇などないし、脳内メモリは他のことに使いたい。


まあ、そうでしょうね。
私も全て覚えているわけではありません。「来る」「する」は覚えてしまうとして、他のものはひとつの方法を知っているだけで「全て」導き出すことができます
五段・上一・下一は、なにも全ての活用形がわかっていないと判別できないわけではありません。
最初の形(未然形)が「あ」か、「い」か、「え」かわかればいいのです。


これを導き出す魔法の呪文があります。

それは「〜ない」です。


「遊ぶ」+「ない」=遊ばない
「見る(みる)」+「ない」=見ない(みない)
「考える」+「ない」=考えない


「〜ない」をつけることで「あ」か、「い」か、「え」かわかります。(個人的には完全に裏技級と思っている方法です)


まとめると

動詞の下に「〜ない」をつけてみて、「い」か、「え」になれば「ら抜き言葉」の対象。
「来る」も対象。

ということです。


以上を簡潔にまとめた画像がこちらですが、これで復習ができるかと思います。


ら抜き言葉まとめ



練習問題も作ってみたので、トライしてみたい方はどうぞ。(解答は次号掲載を予定しております)

ら抜き問題



文法の知識を用いると、途端にアレルギー反応を引き起こす方が多いですが、思っている以上に難しくはない話ですし、注意深くなる必要があるのは最初だけです。

たとえば、洋服が好きな人は生地を見たり触ったりするだけでどんな素材が使われているかある程度わかると思いますし、表示されている書体を見ただけでその名前を判別できるデザイナーもいます。ルアーフィッシングを好んでする人は竿の動かし方でどんなルアーを使っているかわかりますし、ギターを弾く人であればその音を聴けばどんなギターなのか、エフェクターはどんな種類かわかるようになるでしょう。料理が好きな人は食べただけでどんな調味料やスパイスが使われているかわかるかもしれません。
これらはその初期段階では到底無理な話ですが、少しだけ勉強して、注意深く過ごしていればそのうち自然と身につくことです。

文法もそれと同じですし、ましてや日本語は日常使わずには過ごせないものですので、慣れのスピードは格段に速いです。
言葉で皆さんの日常がよりGood Lifeに近づきますように。


それでは、また次回。


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