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【校閲ダヨリ】 vol.17 裏焼き



   
   
みなさまおつかれさまです。
今回は、普段の作業で私たちがほぼ見つけられない裏焼きという事象の話をしようと思います。
   
   
昨今、Instagramなどでよく見られる(またはよく行う)写真の反転。
セルフィをしたとき、自分が見ている自分との視差に違和感を覚えて行うのだろうと思います。(視覚と聴覚で異なりますが、なんとなく、録音された自分の声を聞いたときと同じ違和感なのかなと思っています)
   
反転、とよく言われますが、業界では「裏焼き」と呼ばれています。
   
さて、ここからが大切なのですが、「権利が自分に属さない写真・画像は、裏焼きを勝手にしてはいけない」ということがあります。
利益が発生するような場面で写真や画像を使う場合は特に注意しなければならない問題といえるでしょう。
   
   
なぜかというと、
そもそも写真などの構図は撮影者の意図の下決められ、それも含めて著作物となっています。作品にはもちろん著作権が発生していますし、人物が写り込んでいれば、その人の顔や姿を反転させることで肖像権を侵害する可能性もある(肖像権は、財産的側面をのぞき、その人物が生存中のみ生じるようです)からです。
   
   
直近では、お札の新デザインに関するニュースが特に話題になりました。
弁護士ドットコムニュース」というサイトで詳細がわかります。権利の問題も弁護士が説明しているので、わかりやすいです。

   
   
問題なのは、この「裏焼き」が残念ながら私たち校閲者の目が届く範囲を超えたところで発生するということです。
私たちが目にするゲラ(原稿)は、すでに誌面としてレイアウトが完成した状態なので、写真や画像を元のものと比較する術がないのです。
   
   
ひと昔前は、「ネガの裏表を間違える」という事象を通しての裏焼きでしたが、現在は「反転」としてワンクリックでできてしまい、悪い意味でお手軽です。
デザイン的に向きが逆のほうがよい場合も、権利の観点からNGの場合があるということを皆さんにご理解いただき、私たちが追えない部分を少しでもクリアしていただけるようお祈りするばかりです。
   

それでは、また次回。
   
    

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