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【校閲ダヨリ】 vol.49 出版業界でよく使われる言葉 その4



みなさまおつかれさまです。

あしかけ2か月以上にわたる本企画も、いよいよラストを迎えます
今回は、制作の流れを追いつつ、赤字の入れ方などもご紹介しようかと思います。



1.ラフ
編集者がデザイナーに渡す「このページはこんな感じにしたい」という誌面案。手書きの場合がほとんど。ラフがそっくりそのままレイアウトに落ちることは比較的少ない。


2.デザイン出し
ラフをデザイナーに見せつつ、ページの背景などを説明しながら行うレイアウト制作依頼のこと。


3.初稿(しょこう)
著者、ライター等が最初に書き上げた原稿のこと。お米でたとえると玄米、宝石でたとえると原石の状態。テキストボックスに対して文字数が多すぎたり(「あふれ」と呼んだりする)、精度的にもまだあまり高くない。


4.流し込み(ながしこみ)
初稿テキストを、完成したレイアウトのテキストボックスに文字フォーマットを維持したままコピー・ペーストしていく作業のこと。簡単な作業のようだが、全角/半角を整えたり、カーニングを調整したり、段落や文末チェックをしたりと奥が深い。
   
   
5.初校(しょこう)
初めての校正。誤字脱字の確認や統一表記を整えたり、テキストボックスからあふれている文字を収めたり、足りない場合は補ったりする。「初稿」とは意味が異なる
   
   
6.再校(さいこう)
2回目の校正。内容は初校とだいたい同じだが、意外と修正事項が生じる。以降、3校、4校……と整うまで校正を重ねる。最後の校正は「念校」と呼んだりもする。
   
   
7.色校(いろこう)
色校正とも。写真やイラストなどの色が意図した通りに出ているかを確認する。家庭やオフィスのプリンターで出力するのではなく、印刷所に指定紙を渡して出してもらうのが通常。
   
   
8.責了(せきりょう)
校正→修正を重ね、「もうあとココだけ直せば終わり」という状態になった誌面を、印刷所側が修正し編集側の再チェックなしで印刷に回すこと。「責任校了」の略。責了の位置づけは各社でローカルルールが存在することが多い。
   
   
9.校了(こうりょう)
修正が完了し、印刷に回した誌面のこと。全誌面完了の意味でも用いる。
   
   
   
……細かい作業は数多くありますが、流れはざっとこんな感じです。
私たち校閲の仕事はどこのタイミングで入るのかといえば、ベストは「責了後」だと考えています。著者校正、クライアントなど先方校正が済み、テキスト変更の可能性がなくなった状態で作業しなければ、正常なパフォーマンスが発揮できないからです。
けれども、さまざまな事情により状況が変わりますので、その時々でベストな仕事をするしかありません。
   
   
さて、次は赤字の入れ方についてお話ししましょう。
先にお断りしておくと、私の赤字は日本エディタースクール版を基本としながら、少々アレンジを加えています。これといって正解がなく「ちゃんと伝わり、修正してもらえればOK」という本質から外れたものではありませんが、所属する会社等にローカルルールがあればそれに則っていただくのがよいかと思います。
   
   
1.挿入

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写真のように、挿入したい位置に引き出し線を挟み込む。文字を書きやすい位置まで引っ張ったら「」のような囲いを設け、対象の文字を入れる。修正者が遠目でもどの位置に挿入するのかわかりやすいように、脇に「」を付けるのが一般的。
   
   
2.段落づけ(頭落とし)

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写真のように、「どこまで下げたいか」のラインをまず決める。1文字ぶんであれば、そのぶん下げた位置から書きはじめる。「」の上部のような記号を書く。
   
   
3.全角アキ(全角スペース)の挿入

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1の「挿入の仕方」を基本に引き出し線を書く。その後「」を書き入れる。をそのまま挿入されるのを防ぐため、補助として「全アキ」と添え書きする。(添え書きは、鉛筆など色を変えて行うのが良い
   
   
4.文字の変更

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写真のように、対象となる文字を囲み(文字に打ち消し線を引いて示す場合もある)、引き出し線を書く。その後、正しい文字を書く。(私は、挿入と区別する意味で「  」は付けていません)
   
   
5.ダッシュ(ダーシ)の挿入

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挿入の引き出し線を書いた後、写真5のように「—」を書き入れる。全角であることを示す「□」で対象を囲み、オンビキ「ー」やハイフン「-」と混同されないよう、添え書きを施す。
   
   
6.行頭「 の字間調節

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行頭「 においては、おおまかに世間で3通りの組まれ方に分かれる。「全角アキ」か「二分(半角)アキ」か「1.5角アキ」。「 」の記号で対象の位置まで引き上げる指示を教わることが多いが、修正の段階で見落とされ落ちる(漏れる)場合がある。写真のように空間自体を囲み、文字で指示を入れることで修正漏れを防ぐ手段としている。
   
   
7.句読点の挿入

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写真のように引き出し線を書いた後、「」「」を書き入れる。本来は「右寄せ」の記号であるが、目立たせる意味合いで「」の補助記号を鉛筆書きする。横書きの場合は「」と向きを変える。
   
   
8.小書き文字への変更

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対象文字を選択、引き出し線の設置後、正しい文字を書き入れる。特別に小さく書く必要はなく、その後の補助記号で小書きの旨を示す。縦書きの場合は「」で示し、横書きの場合は「」となる。それぞれ反対向きで示すと「おおきく」の指示になってしまうので注意。覚え方としては、「<」の開いている方向にギュッと引っ張るイメージを持つとよい。
   
   
9.三点リーダーの挿入

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写真9のように、挿入の引き出し線を伸ばし、「」を書き入れる。全て全角の「・・・」と区別をするため、1角内に収める旨の補助記号を鉛筆書きする。
   
   
   
いかがでしょうか。
引き出し線にかんして、ほかの文字を横断して伸ばしてもよいというのがスクールで教えられることですが、私はあとに読む人のことを考えてなるべく文字横断を避けるようにしています。
また、特に赤色引き出し線が交差してしまうのはよろしくありません。修正作業をする人が混乱するからです。
余計な混乱を避け、わかりやすく、シンプルに。鉛筆での疑問出し等でごちゃごちゃになってしまうゲラ(校正紙)だからこそ、おもいやりのある赤入れを心がけたいです。
   
    
それでは、また次回。
   
   

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