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【校閲ダヨリ】 vol.48 出版業界でよく使われる言葉 その3


みなさまおつかれさまです。

専門用語特集でお届けしております近頃のお便りですが、今回は、いよいよ実作業系の単語の紹介をしていきたいと思います。
わかりづらい言葉は図を用いてできるだけわかりやすくご説明をしていきますが、それでもわかりづらいかもしれません。
その際は、コメント欄にてお気軽にご質問くださいね。


1.級数(きゅうすう)
活字の大きさを表す単位。和文活字は、正方形の枠(ボディ)に収まる形で設定されるが、この正方形の一辺を示す長さ=級数である。「Q(Quarter)」というアルファベットで示される場合もある。1級(Q)は、0.25mm(1mmの1/4)。なので、4級(Q)で「1mm四方の活字」になる。オフィス系ソフトで一般的に用いられる「ポイント」とは根本的にサイズ感が異なる。1ポイントは0.3514mm、4ポイントでは1.4056mm四方の活字になり、同じ数値でも級数方式とは1.5倍に迫る大きさの開きができる。
   
例:「キャッチは20くらいで入れましょうか」
   

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2.行間(ぎょうかん)
行と行のあいだの空間。活版印刷時代は、物理的な限界があったので一番狭めてもベタづき(活字と活字がぴったりくっついている状態)であったが、写真植字以降の組版では、行間のマイナス数値化(重なっている状態)も可能になった。
とはいえ、可読性の問題や、ルビ(後述)の問題から、適度な行間を持たせるのが通常である。
   
例:「行間ベタの本文組みなんて見たことないよ!」

   
3.行送り(ぎょうおくり)
行間と似ている感じもするが、意味には違いがある。行間が「行と行のあいだ」を示すのに対し、行送りは「行(字)幅+行間」の距離のことを指す。写真植字時代に、印字位置を物理的に移動させるための指標として「現在の位置からどのくらい移動させればいいか」という行送り値が生まれた。
   
例:「InDesignでの行送り設定の仕方を教えてください」

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4.歯数(はすう)
行送りや字送りをする際の単位。写真植字で行送りを行う際、ラチェットと呼ばれる歯車を回したことから。「H」で表す場合もある。長さという点では「級数(Q)」と同様、1歯(H)は0.25mm。活字の大きさが8級として、行送りを8歯に設定すると、行間ベタ組み(行間なし)になる。なので、通常は活字よりも大きな数値で歯数が設定されることが多い。
   
例:「脚注のあしらいをすることを考えると、歯数をもう少し上げたほうがいいよ」

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5.カーニング
字間のこと。活版印刷では物理的な制限があるので最小値はゼロ(ベタ)。写植以降、マイナス値も設定できるようになった。デザイン的にかなり重要な要素であり、文字の形状的に、ベタで組んでもどうしてもすき間ができて見えてしまう文字の間をマイナス値に設定することで、文字列として違和感のない状態に仕上げることができる。
   
例:「DTPをやるならカーニング調整ができるようにならないとね」

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6.合成フォント
複数のフォントをミックスさせて、ひとつのフォントであるように構築したフォント。「この書体、和文はいいけど欧文が気に入らない」などといった場合に用いる方法。
   
例:「僕、この欧文書体持っていないので、合成フォントの箇所全てエラーになります」
   
   
7.ルビ
ふりがなのこと。一文字ずつ該当の読みをふる場合は「モノルビ」、「東海林(しょうじ)」など、文字単位で分けてふることが難しい場合は「グループルビ」としてまとめて施されることが多い。また、「肩付き」「中付き」など、「文字のどこにルビをふるか」も決めておくべきポイントになる。漢字全てにルビを施すことは「総ルビ」と呼ばれる。
   
例:「総ルビの大変さを小学校時代に教えてもらっていたら、あのときもう少しありがたく本を読んだかもしれない……」

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8.泣き別れ(なきわかれ)
欧文単語は原則ひとかたまりで認識され、単語の途中で切れて改行されないようになっているが、その影響で1行の文字配置がスカスカになってしまう場合がある。「『change』の『n』までだと綺麗に収まるのだけれど」という場合に「chan」「ge」と強制的に改行を入れて文字詰めを優先させることを「泣き別れ」と呼ぶ。
   
例:「あの編集さんは、泣き別れをさせずとも綺麗に収まるようばっちり仕上げてくる」

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9.切り抜き(版)(きりぬき(はん))
写真で、対象物のみを抜き出して使用したいときに行う。現在はPhotoshopなどで、画面上で行える。
   
例:「自転車タイヤのスポーク部分の切り抜きは地獄以外の何ものでもない」
   
   
10.角版(かくはん)
写真を、四角い形状で用いる方法。
   
例:「ここ、あえて角版でいきたいです」
   
   
11.ゲラ
校正紙のこと。「galley(組んだ活字を入れる金属盆)」が由来。「原稿」と混同して用いられることが多いが、原稿は「レイアウトに落とす前段階のもの」ととらえるのが普通である。
   
例:「おい、校閲の伊藤さんにあの企画のゲラ渡してくれた?」
   
   

   
3回目にして薄々勘づいてきましたが、結構あるものですね。
もう1回ぶんくらいありそうです。
お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。(書いている本人は、割と楽しんでいます)
   
   
それでは、また次回。



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