見出し画像

【校閲ダヨリ】 vol.46 出版業界でよく使われる言葉 その1

 
みなさまおつかれさまです。
今回は、我々が普段の仕事のなかで当たり前のように使用する言葉について、一般の皆さんに紹介する気持ちで書いてみようと思います。

昭和→平成→令和と、「本」というメディアは時代とともに育ち、そしてゆっくりと廃れつつあるというのが市井の評価なのは事実でしょう。
実際に、こと「出版販売額」という観点における数字は、それを裏付けています。販売部数が10年前に比べて増えているという出版物が存在するかどうか、あれば私も知りたいところです。
全国出版協会調べによる「日本の出版販売額(取次ルート)」という資料によると、書籍、月刊誌、週刊誌ともに、多少の上下はありますが過去25年ほど全体的に下降の一途をたどっていることがわかります。


このようなことが背景にあり、「一般の方が本というメディアで制作活動をする」ということが、ひと昔前からみて身近になってきたような感覚が、私にはあります。
背景というのは、販売額の減少にひも付く、刷り部数の減少です。印刷所は寡占傾向にあり、小規模な印刷所は生き残るために少ロットからの印刷・製本を手掛けるところが増えました。コミケやアートブックフェアなどのイベントの影響も相まって、「個人で本を作る」人が増えました。

そうなると、専門用語的なものの知識も、少しあったほうがよいかもしれません。
印刷所との仕様打合せなどで知らない単語を早口で連発され、あたふたしてしまうのは避けたいですよね。
……というわけで、やっと今回のタイトルにたどり着きました。


まずは、本の部位(よく使われるもの)についてです。

本名称


   
1.ジャケット
→本に付いているカバーのこと。表紙とは異なる扱いです。
   
2.帯
→表紙・ジャケットの下方に付く、帯状の販促物のこと。
   
3.表1(ひょういち)
おもて表紙のこと。
   
4.表4(ひょうよん)
うら表紙のこと。※表2は、表1の裏面、表3は表4の裏面を指します。
   
5.背(せ)
→紙の束を綴じている(接着されている)、めくれない側のこと。背表紙。
   
6.小口(こぐち)
→背の反対側(めくれる側)のこと。
   
7.天(てん)
→本の上端のこと。
   
8.地(ち)
→本の下端のこと。
   
9.のど
→本を開いたとき(見開きにしたとき)に中央にくる部分のこと。
   
10.束(つか)
→本の厚みのこと。束幅とも言う。
   
   
よく使用するのは、こんなところかと思います。
なかでも耳にする頻度が高いのは「表1, 4」、「」、「のど」ですかね……。
は、「背」のレイアウトをするときに大切になります。「中綴じ」の本は除きます(中綴じには、別の大変さがあります)が、背にある程度厚みが出てしまうものは、それを計算に入れて用紙サイズを設定する必要があるのです。
単純に中面と同じ用紙サイズで印刷をかけてしまうと、表紙が寸足らずの本に仕上がってしまいます。
束幅を知るには、紙のことを気にかける必要があります。
   
束幅=1枚の紙の厚さ×ページ数の1/2
   
という計算が必要になるからです。
紙とひと口に言っても、その種類はかなりの数がありますが、多くの場合、やりとりする印刷所が取り扱っているものの中から選んで使用することになるかと思います。
印刷所によっては「束見本」といって、使用する紙、ページ数、判型を本番仕様にして、まっさらな白い状態で見本を出してくれるところもあります。その場合はそれで束幅を物理的に計測することが可能ですが、紙1枚の厚さにも目を向けることが大切です。
   
   
のど」も、束幅の厚みが結構関係してくるところです。
これも、中綴じは別の対応の仕方を迫られるところですが、それ以外の綴じ方である程度の束のある本だと、「のど」近くが読みづらい(読めない)という副作用が生じます。
そのため、デザイナーはそうなることを踏まえてレイアウトを制作しています。1枚の写真が「のど」をまたぐようなレイアウトでは「ダブリング」といって、のど元数ミリをかぶせて、本を開いたときに1枚の写真としてきれいに見えるようなテクニックも使いつつ、「本」として美しいプロダクトになるよう手を尽くしてくれているのです。
   
   
さて、では最後に、先ほどから登場している「中綴じ」や、その他の本の綴じ方について説明をして、今回を終わりにしたいと思います。
   

本の綴じ方(雑誌に多く見られるもの)

本名称2

   
11.中綴じ
→週刊誌で多く見られる、表紙と中面を一緒に、見開きのセンターで針金留めする方法。
   
12.平綴じ
→中面を平(ひら)の面(背や小口側ではなく、表紙の平たい面のこと)から針金で綴じ、表紙でそれをくるむように、背の部分を接着剤で固定する方法。教科書に多く見られた。
   
13.無線綴じ
→針金を使わず、接着剤のみで綴じる方法。現在の雑誌製本では主流となっている。
   
   
中綴じは、紙の束(たば)全体を真ん中で2つに折ったような見た目となるため、「背」に幅がありません
そのため、表紙に背幅の長さを加えて設定する必要はありませんが、レイアウトに別の大変さが生じます。
これは、中綴じの本を天・地の側から眺めてみるとなんとなく理由がつかめるかもしれません。
」のように見えるかと思います。真ん中のページにいくにつれ、紙が出っ張ってくるのです。
中綴じは、真ん中のページはのど元までガバッと開きます。が、最初のほうの見開きや、最後のほうの見開きではのどが浅くなり、読めない部分が増えてしまいます。つまり、ページによってマージンの取り方やダブリングの有り無しが変わってくるということです。
   
   
ひと口に「本をつくる」と言っても、結構奥が深いものでしょう?
まだまだ紹介しきれない言葉がありますので、ちょっとこのシリーズを続けてみようかと思います。
   
   
それでは、また次回。
   


参考
日本の出版販売額(取次ルート)」(全国出版協会)
印刷用語ハンドブック 基本編』(印刷学会出版部)



#校閲ダヨリ #校閲 #校正 #出版 #雑誌 #本 #書籍 #エディトリアル #日本語 #言語 #言葉 #国語学 #文法 #proofreading #magazine #book #publishing #create #editorial #language #peacs

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?