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【校閲ダヨリ】 vol.7 个(矢印ではありません)


みなさまおつかれさまです。
今回も、いったい正解はどこにあるんだ、という禅問答のようなお話です。

さて、下の文をいつもPCやスマホで打ったりする感覚で、頭の中で変換ボタンを押してみてください(実際に打ってみてももちろん良いです)。

 ・きょうは、つきあって6かげつめのきねんびだね。

……絶対にこのあとプリクラを撮りにいったりするんだろうなと思います。(最近のプリクラはスマホに撮影データを送れます。それをホーム画面に登録できるわけです
さて、変換はできましたか? 

ここで私が尋ねたいのは「6かげつ」の変換の仕方です。
おそらく、下のどれかのパターンに当てはまっているのではないでしょうか。

 6か月/6カ月/6ヵ月/6ケ月/6ヶ月/6箇月

あなたの「かげつ」はありましたか?
特殊な変換の仕方をしているわけではなく、上の6つは全て変換キーを何度か押すだけで出てきます。
今回、ここで少し考えてほしいのは「ケ/ヶ」です。これは何ですか?
「ケ所」という言葉でも使われていますね。

これは、カタカナのケです。フォントとしてはカタカナで登録されており、漢字ではありません。
カタカナは表音文字(漢字は表意文字)ですから、「け」以外には読み方がないということになります。
ではなんで「ケ/ヶ」を「か」と読むのか。ここには根拠があります。

「ケ/ヶ」はもともと「」という漢字だったのです。
時系列に見ていくと
箇月 と書かれていたものが、箇 を書くのが煩わしくなり 个 と省略して書かれるように、个 がさらに速記や殴り書きで ケ/ヶ に。という感じです。

では、正解はどれ? と尋ねられると、困ったことに、私見を交ぜずお答えすることが難しいです。多くの人に認知されているという現状からすると、どれを使っても良いように思われます。
ただ、私個人の意見としては、崩し字が元の「ケ」や、カタカナ(またはその音)として存在しない小書きの「ヵ/ヶ」は用いることに抵抗があるということは言えるかと思います。

しかし、これだけは言える、ということがあり
湯ヶ島」や「龍ケ崎市」のように、固有名詞になっているものに関しては、間違いなくその正式な表記が正解ということです。この場合は、大小のケ/ヶの違いも含め、正確に記載しなければなりません。

今回も、あまりすっきりとはしない展開になりましたが、日本語ではこのようなテーマが膨大にあります。言語が生きていることを実感できる端緒になれば幸いです。

では、また次回。


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