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【校閲ダヨリ】 vol.4 辞書の性格


みなさまおつかれさまです。
早いもので、4号目になりました。(普通こういう挨拶は5号や10号でするのかもしれませんが、私は4という数字が好きなのです。サンダーバードも4号がいちばん好きでした)

さて、今回は、3号でYが配信した内容とリンクさせてみます。せっかく良いテーマなので、もう少し学びを深めてみましょう。

前回Yは『広辞苑 第7版』(岩波書店)を参照して、敷居が高いという言葉について論を展開しました。

広辞苑といえば、絶大なシェア率を誇る、辞書界の大御所ですよね。「広辞苑にこう載ってました」といえば、多くの人が納得するでしょう。しかし、(広辞苑だけに限らず)新たな語や新たな解釈が辞書に載ったからという理由を楯にその語句を実際に使用する、というのは少し見切り発車かもしれません。
そして、最初に言っておくと、世の中に「万能の辞書」というものは存在しません。
……それでは、辞書の個性についてのお話を始めましょう。


携わる人物が異なれば、単語の解釈や用例も異なる
マンガ雑誌(『週間少年ジャンプ』など)をイメージしてください。作者ごとに、タッチも違えばストーリーの進め方も違いますよね? 辞書もこれと似ていて、一人の学者が全ての語について書いているわけではありません。

論文ではないので持論を積極的に展開するわけではありませんが、意味の最後のほう(新出の語釈)に自分の解釈を付け加える可能性はあると思いますし、用例をどこから持ってくるかもそれぞれで違います。

『広辞苑』における「敷居が高い」の新たな意味の登場は、筆者の解釈というよりは世間一般でそういう意味として使われている場面が多々見られる、というものとしての記載だと思われますが、筆者・編集者がGOを出さねばそもそも載らないので、そこに何らかの意思がないとは言いきれないかなと私は考えています。

新明解国語辞典』(三省堂)の語釈・用例が面白いのは有名な話ですし、

新潮現代国語辞典』(新潮社)は幕末から昭和20年までの文献で実際に用いられた例を出典つきで掲出するなど、どの辞書にもウリがあります。

プラスアルファは特色となる
収録語句の選択(どんな語句を載せるか)において、辞書の個性が色濃く出ます。当然ながら、ひとつの国語辞書に日本語全ての語句を載せることはできません。……が、「一般的にこれは外せない」というものが多くありますよね。それはもちろん各社載せます(どの辞書も似て見えるのはこのせいでしょうか)。「それ以外」に何を載せるか。ここが大きな特色になります。

『広辞苑』の場合は、新語を多く取り上げており、「婚活」「ちゃらい」「自撮り」「ツイート」「パワースポット」などが第7版で入ったようです。

三省堂国語辞典』(三省堂)は「知らないと困る社会常識語」が3200語新選されています。

岩波国語辞典』(岩波書店)は対照的に新語が少ない(「過去百年の(一時的流行ではない)言葉の群れ」「ごく最近の新語・俗用にはかなり保守的な態度となる」と序文に記載)など、とりどりです。


今回はかいつまんで2点ほど大きな差が出るところを紹介しましたが、まだまだ、特色を挙げればキリがありません。
そんな辞書たちなので、調べる時にはぜひ、複数使いをしてみてください。紙の辞書が煩わしい人は、「コトバンク」 がオススメです。同時に複数の辞典の検索結果を表示してくれます。


最後に「日本最大の国語辞典」を紹介して終わりにします。私たちはよくこれを引きます。
日本国語大辞典』(小学館)です。

総項目50万、用例100万。全20巻。
これの良いところは、遡れる限りの古い文献から用例を集めている点です。つまり、その言葉の根源的な意味を知ることができるんです。
一般には完全にオーバースペックですが、もし、その言葉の古い時代の使われ方に当たる必要があるときには活躍してくれることと思います。

では、また次回。


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