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不正やごまかしをしない経営者になんてなれるのだろうか?

人はなぜ、不正やごまかしをしてしまうのでしょうか。

先日、北海道の知床沖で観光船が沈没する事故が起きました。

海上保安庁の取り調べ等によると、観光船を運営していた会社の社長は、事務所の無線や衛生電話が壊れていたこと、船体の前方部分にヒビが入っていたことなど安全面の問題をいくつも把握しながら、自らで当日の出航を決めたといいます。

ネット上では当然ながら、社長に対する非難の嵐。

私もニュースを見た当初は、こんなずさんな経営の仕方はありえない!と憤慨したのですが、ふと、いやいやこれは決して人ごとではないな、と思い直しました。

というのも、夫と飲食店を経営している者として我が身を振り返ると、これまで一切の不正やごまかしをしたことがないとは、どうも胸を張って言い切れない部分があるからです。

人のことをあーだこーだ言えるほど清廉潔白でもない。

たとえば小さなところでいうと、寝坊してトイレ掃除をせずに店を開けてしまったことが何度かあります。

お客さまの前で急いでいた関係で、ついおしぼりで床を拭いてしまったこともあります(レンタルおしぼりで床を拭いちゃいけないんです)。

私の夫は、配達を急ぐあまり交通違反で何度か切符を切られています。

このほか、ここでは言いづらいことも諸々と…。


私の周囲では、衛生管理を日常的に怠っていたことが原因で食中毒を出したお店もありますし、自らの怠慢で火事を起こし、近隣に大変な迷惑をかけるなど実害を起こしているケースもあります。

お客さまから日常的にぼったくりをしていて見つかった人もいました。


経費になるのか微妙な領収書を、自分の判断でエイやっ!と処理してしまったなんてこと、心当たりのある人も多いかと思います。「そんなのクソ真面目にやってる奴いないよ!」なんて言う人もいますよね。


このように、私たちの周りには大なり小なり不正とごまかしへの誘惑が溢れています。自分だけは絶対にしない!と決めつけることのほうが危険なのです。

そして小さな不正は、ひいては取り返しのつかない大惨事を引き起こすことがある。なので(当たり前ですが)やらないに越したことがありません。

では一体、人はどうやったら不正やごまかしをしなくなるのでしょうか。っていうか、そんなことは可能なのでしょうか。

引き続き経営者の視点で考えてみます。



なぜ人は不正やごまかしをしてしまうのか

「ずる――噓とごまかしの行動経済学 (早川書房)」の中で、著者のダン・アリエリーは、

「不正を減らす見込みがあるとすれば、そもそもなぜ人が不正な行動を取るのかを理解しなければならない」

と言っています。

そして彼は、不正を作るいくつもの要因を研究によって明らかにしているのです。いくつか掻いつまんでみます。

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