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味とイメージ勝負?リニューアルラッシュから見る緑茶飲料の戦略

 こんにちは。ベトナム在住ライターの寺内です。

 以前Knowns Bizで「緑茶を好む理由」のデータ分析がありましたが、現在「ボトル緑茶」のシェア争い激化しているとネットニュースでみました。

 今春はリニューアルを行うボトル緑茶が多いのはなぜでしょうか?それぞれのリニューアルのポイントからボトル緑茶について分析してみたいと思います!

≪Knowns Bizについて簡単にご紹介≫


2024年春 4ブランドのリニューアル

Knowns Biz 「あなたが緑茶を好む理由は?データ分析から分かる綾鷹×お~いお茶」より
認知度×満足度グラフ 緑茶飲料
Knowns Biz調べ:現在の認知度×満足度グラフ ウェイトバックあり

 まず前回の記事と現在のデータを比較すると、

満足度ランキング 前回→現在
1位 綾鷹 ( 78.5% )→お~いお茶 ( 62.9% )
2位 伊右衛門 ( 77.3% )→綾鷹 ( 60.8% )​​
3位 お~いお茶 ( 76.4% )→伊右衛門 ( 60.3% )​​

認知度ランキング
1位 お~いお茶( 94.3% )→同じ
2位 伊右衛門 ( 93.6%)→同じ(92.7%)
3位 生茶 ( 92.4% )→生茶・綾鷹同順(90.6%)

という結果でした。
 今春のリニューアルのニュースでは、満足度・認知度でランクインしている「綾鷹」「伊右衛門」「生茶」の3ブランドと、2023年4月に発売した「アサヒ颯」が多く取り上げられていました。「アサヒ颯」は現在のデータでは満足度・認知度ともに5位となっています。
 ではそれぞれどのようなリニューアルを行うのか見ていきたいと思います。

日本コカ・コーラ社「綾鷹」

引用元:日本コカ・コーラ社より綾鷹リニューアルページ

 以前の分析で満足度の1位だった「綾鷹」は、7年ぶりのリニューアルとなり、新たな味わい・デザインにするほか、パーソナルサイズの容量はこれまでの525mlから650mlへ増量するそうです。
 「綾鷹」の特長は、京都・宇治の老舗茶舗「上林春松本店(かんばやししゅんしょうほんてん)」の協力のもと開発された、急須でいれたような本格的なお茶の味わいですが、今回のリニューアルでは“旨みはしっかり本格、後味は軽やか”をコンセプトに旨みの出る茶葉の割合を増やす茶葉選定を3年間かけて行ったそうです。
 また、水分補給ニーズの高まりも考慮して容量の増量と、パッケージデザインは波打つ心が整うような波紋のモチーフとグリーンを基調に、豊かな旨みを表す藍色を、新しい「綾鷹」にふさわしい現代的なあしらいでブランドロゴをデザインしたそうです。
https://www.coca-cola.com/jp/ja/brands/ayataka/campaign/renewal
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000896.000001735.html

サントリー食品「伊右衛門」


引用:サントリーより伊右衛門大刷新より

 認知度・満足度ともに2位に位置していた「伊右衛門」は味わい・パッケージのリニューアルを2024年3月に行っています。2004年3月の発売から今年20周年を迎え「伊右衛門」は、創業200年以上の歴史をもつ、京都の老舗茶舗「福寿園」の茶匠が厳選した茶葉を使用した本格緑茶を使用しているのが特徴です。今回のリニューアルでは、非加熱無菌充填・一番茶使用・石臼挽き抹茶使用は変えずに、 現行品「伊右衛門」と比べ、茶葉1.5倍、“旨み抹茶”3倍にすることで、伊右衛門本体史上最高レベルの濃さに進化だそうです。
 また新パッケージでは、旨濃い味わいを表現した濃い緑のカラーとグラデーションをベースに、余白を活かす非対称なロゴ配置にすることで、今の時代に合った緑茶であることを表現しているそうです。
https://www.suntory.co.jp/softdrink/news/pr/article/SBF1450.html

キリンビバレッジ「生茶」

引用元:キリンホールディングスより生茶リニューアル

 「生茶」は容器・パッケージ・中味を全てを2024年4月にリニューアルします。特長は2016年から導入している生茶葉鮮度搾り製法に加え、新製法の「凍結あまみ製法」を新たに採用し、微粉砕茶葉も現行品から約3倍に増やすことで、苦渋みを抑え、新茶のような“あまみ”際立つ、生茶史上最高レベルのおいしさに進化しているそうです。
 パッケージについてはペットボトル緑茶が人に見られる「自己表現のアイテム」として生活を彩る、現代的で上品な佇まいを目指したパッケージに刷新しています。
 また容器に関しては2021年より「生茶」ブランドを、「環境」に配慮した取り組みを推進するフラッグシップブランドとして、一部容器で再生PET樹脂を100%使用した「R100ペットボトル」やロールラベルの導入、ラベルレス商品の発売を行っており、今回刷新する「生茶」においても、小型ペットボトルの一部を、6月以降、現行重量の20gから18gへ軽量化を進めているそうです。
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2024/0125_04.html

アサヒ飲料「アサヒ颯」

引用元:アサヒ飲料よりアサヒ颯リニューアル

 2023年4月に立ち上げた「アサヒ 颯」ブランドは、年間で約560万箱を販売するなどヒット商品に育っています。2年目となる今年は、販売目標を1000万箱に設定し、支持されている味わいはそのままに、特徴である「微発酵茶葉」を使用していることを強調したパッケージに刷新します。今回のパッケージリニューアルでは、緑茶を想起する緑色を強調するために背景を白色に変更し、商品特長である「微発酵茶葉使用」のアイコンを従来より大きくあしらっているそうです。
https://www.asahiinryo.co.jp/company/newsrelease/2024/pick_0112_2.html

リニューアルの背景は?

どんな人が緑茶を好む?

Knowns Biz調べ:緑茶飲料 現在購入者のデモグラ(ウェイトバックあり)

 緑茶飲料購入者のデモグラ構成比をみると40代前半~50代前半、60代後半が多く出ています。
 男女比はほぼ同率です。

Knowns Biz調べ:緑茶飲料 現在購入者の個人価値観
Knowns Biz調べ:緑茶飲料 現在購入者の社会価値観
Knowns Biz調べ:緑茶飲料 現在購入者の消費価値観

 緑茶飲料購入者のサイコグラフィックを見てみると、個人価値観は"アウトドア派”"倹約家”"健康志向”な方が多いです。
 社会価値観は"自分より家族優先”"トライブ重視”“ワーカホリック”と、正反対のクラスターが並んでおり、さまざまな職業や環境の方に利用されているようです。
 消費価値観は"エシカル消費”“ノスタルジー消費”が高いです。

それぞれの緑茶のイメージは?

Knowns Biz調べ:綾鷹のイメージ時系列分析 ウェイトバックあり
Knowns Biz調べ:伊右衛門のイメージ時系列分析 ウェイトバックあり​​
Knowns Biz調べ:生茶のイメージ時系列分析 ウェイトバックあり​​
Knowns Biz調べ:アサヒ 颯​​のイメージ時系列分析 ウェイトバックあり

 今回リニューアルをする4商品のイメージ時系列分析を見てみると、
・綾鷹 「伝統・頑固さ」
・伊右衛門 「知的・クール」
・生茶 「深み渋み・落ち着いた」
・アサヒ 颯​​ 「リラックス・リフレッシュ」
がそれぞれ上位にきています。
 特に「綾鷹」と、3月に既にリニューアルを行った「伊右衛門」は直近の半年間でイメージが大きく変わっています。「伊右衛門」の新パッケージは余白を活かす非対称なロゴ配置が「知的・クール」な印象に繋がっているのかもしせません。
 「伊右衛門」以外の3商品は4月にリニューアルとなるので、今後イメージも変わっていきそうですね。

緑茶購入時のポイントや場面は?

引用元:PRTIMESより マイボイスコム株式会社実施第12回「お茶系飲料」に関するインターネット調査

 マイボイスコム株式会社の「お茶系飲料」に関するインターネット調査によるとペットボトルのお茶系飲料(紅茶以外)の購入時の重視点は、「飲みやすさ」が飲用者の49.2%、「価格」が45.5%、「旨みがありそう」「味の濃さ」が3割前後となっています。
 今回「綾鷹」「伊右衛門」「生茶」3社のリニューアルも飲みやすさ・旨味・濃さにこだわったものとなっており、消費者の傾向に合ったリニューアルになっているのではないでしょうか。

引用元:マイボイスコム株式会社より第12回「お茶系飲料」に関するインターネット調査

 またペットボトルのお茶系飲料紅(茶以外)の飲用場面は、「のどが渇いたとき」「昼食」が飲用者の4割前後、「仕事・勉強・家事の合間」「くつろいでいるとき」が各20%台です。「レジャー・遊びのとき」は、女性30代以上で比率が高くなっているそうです。
 サイコグラフィックの社会価値観でもさまざまな職業や環境の方に利用されている結果になっていたのはこのような背景があるからかもしれません。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001319.000007815.html

ペットボトル飲料、どこで買う?

引用元:excrie 調査データコレクション「ペットボトル飲料」に関する調査結果

 またexcrieの調査データコレクションによると、ペットボトル飲料を購入している場所では「スーパー」が最多で66.4%でした。年齢層が高いほどスーパーで購入している人が多く、60代は74.0%だったのに対し、20代は53.5%と20%の開きがありました。デモグラで多く出ていた層はスーパーで購入されている方が多いのかもしれません。
 サイコグラフィックでも“倹約家”が多く出ていましたが、上記の購入時の重視点でも2位に価格がランクインしていたことから、スーパーで低価格での購入だけでなく、コンビニ利用者でもプライベートブランド商品購入者が多いのかもしれません。

Knowns Biz調べ:「お〜いお茶」とPB商品の相関分析離反予備軍・ウェイトバックあり

 満足度・認知度ともに1位だった「お〜いお茶」離反予備軍とプライベートブランド商品の相関分析をみてみると、流通大手のイオングループが手掛ける「トップバリュ」に次ぎ、セブン&アイグループの「セブンプレミアム」が上位にきています。
 サイコグラフィックでも“倹約家”が多く出ていましたが、緑茶購入時のポイントでも2位に価格がランクインしていたことから、スーパーで低価格での購入だけでなく、コンビニ利用者でもプライベートブランド商品購入者が多いのかもしれません。
https://www.excrie.co.jp/datacolle/life/rs20230630/

認知度1位の「お〜いお茶」はリニューアルなし?

 ちなみにKnowns Bizの緑茶飲料認知度でトップの伊藤園「お~いお茶」は、本体で大きなリニューアルをする予定は今の所ないそうです。しかし「お〜いお茶」は季節ごとに味わいを若干変化させるなど、その時々に合った製品設計に取り組んでいるようです。また、契約栽培の茶葉の使用比率を高め、着実に品質向上を進めています。

Knowns Biz調べ:緑茶飲料 積極的ロイヤル層の満足率
 Knowns Biz調べ:お~いお茶の7Journey時系列分析 ウェイトバックあり

 なぜ今回他社がリニューアルを行う中で「お〜いお茶」は行わないのか、緑茶飲料の積極的ロイヤル層の満足率のポジショニングを見てみると、「お〜いお茶」の満足率は67.2%と、他のブランドに比べて高いことがわかりました。
 また「お~いお茶」の7Journey時系列分析を見てみると、ロイヤル層が増えていました。
 緑茶飲料消費者のデモグラでも“ノスタルジー消費”が高く出ていたことから、“変わらない”ことも一つの戦略なのかもしれません。

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まとめ

「緑茶飲料」購入者の特徴
・40代前半~50代前半、60代後半が多い
・アウトドア派・倹約家・健康志向
・さまざまな職業や環境の方に利用される
・エシカル消費・ノスタルジー消費の傾向

 上記分析から、今春リニューアルを行う4ブランドは緑茶消費者のサイコグラフィックや消費者の購入時のポイントに合わせたリニューアルであることがわかりました。
 価格帯ではプライベートブランドは脅威になりそうですが、それぞれのブランドの特長をアピールすることで、今後順位も変わっていきそうな気がしますね。

筆者のひとこと

 私は緑茶が好きなのですが、水分こまめに取るので容量の多さとコスパから伊藤園の「健康ミネラルむぎ茶」を買いがちです(笑)。
 今回「綾鷹」は容量が多くなるとのことなので、今後は「綾鷹」も買うようになりそうです。
 「健康ミネラルむぎ茶」に関してはこんな記事も見つけました。

 “ステルス値下げ”、“2030年頃には1.5Lくらいになるのでは”と、様々な分析が展開されています!
 みなさんの推しボトル緑茶は何ですか?

≪本記事は新しいバージョンのダッシュボードを利用しております≫
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