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天神。

10月。
朝起きて、慌ててジャケットをおろした。


思いがけない寒さに、身体がついていかなくなってきた。
衝動買いした服は、まだ届いていない。

毎度の事だが、福岡で秋を感じることは少なくなった。
一気に気温が下がり、朝と夜が底冷えする。

せっかちな僕は革靴を履いて、バス停まで小走り向かい、飛び乗った。

窓の隙間から、甘い香りがする。
金木犀の花びらが、ふわりと、空に向かって飛んでいくのが見えた。



そういえば、最近は何かとユニドルのライブに足を向けている。
ユニドルとはいわば、大学生のサークルのアイドルである。

ステージで度肝を抜かれて以来、ずっと彼女たちに魅了されている。

この時期になると、就活や試験を控えたメンバーが卒業する時期になる。

ヲタクとして先生として、別れはつきものではあるが、慣れる事は一生ない。
仲良くしていた子なら、尚更である。

ただでさえ、大学の授業にもついていくのに苦労した自分にとって、彼女達はダンスも歌両立できて、本当に素晴らしい。
好きより先に、ずっと尊敬している。

何かに向き合う、全力で取り組むという事はこんなに素晴らしいことなんだと、常々感じさせられる。


最後のステージを終えた彼女達。

最後の挨拶まで、やりきった顔があった。
達成感という言葉は、まさにこういう事である。

彼女達の瞳より、姿が輝いて見えた。

本当にお疲れ様。

感傷的な気持ちと、ほっこりした気持ち…

涙を堪えるので、精一杯だった。



会場を出る瞬間まで、ありがとうと伝えた。


彼女達から返ってきた言葉は、「ありがとう」であった。


アクロスから出る時に、目が霞んだ。
悲しくないのに、なぜ涙は出るのだろう?


ありがとう。

帰りのバスが、ゆっくりと動き出した。


彼女達の笑顔と
金木犀の香りに、包まれながら。

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