5/2 R-18 SS 「胸と蛇」
布団の中でもぞもぞと動く彼を、暗闇の中で感じていた。
身体がくねり、目を瞑る動作に力がこもる。
あごが自然と上を向き、首が縮こまる。
いい加減にしなければ。
ただの会社の同期である彼とこんなことをしている場合ではない。
私の友達は次々に結婚していくというのに。
近所の居酒屋で飲んでいると彼が終電を逃して、良いと言ったわけでもないのに近くにある私の家に転がりこんできて・・・これで3回目か。
私もどうかしている。
彼は布団の中から顔だけひょっこりと出し、私の胸の上に顎を乗っけて
「バンザイして」
と言った。
冬の寒い日、布団に入っていた猫が顔だけ出してきて頭を撫でるよう催促してきたことを思い出す。
彼のこういうところにいちいち腹が立つ。
男と一緒に寝るつもりなく買った狭いシングルベッドでは両手を伸ばすことはできず、頭の上で手を組む。
脇を開いた無防備なそのポーズから、これから何をされるのかを想像して悲しいかな気持ちが昂る。
彼の思い通りになってしまうのは悔しいが、彼に身を預ければどういう場所に連れて行ってくれるのかを知っている。
いや、実際にはどこに連れて行かれるかがわからないから、身を委ねられるのだ。
私は薄手のコットンワンピースに着替えていて、ブラジャーはつけていなかった。普段は垂れるのが嫌でナイトブラをしている。
つまりはそういうことだ。
・・本当にどうかしている。
中学生のとき、胸が大きいことに悩まされたっけ。
思春期のサル達にからかわれるのはもちろん、街を歩いていても大人達から明らかに子供を見る温かい目ではない目線を感じた。
それが自分の武器だと思えるようになるには随分と時間がかかった。
そして、それが癖になることも。
服の上から、彼の掌が大きく円を描くように撫でる。
布地が擦れて、胸全体の触られていないところまで刺激が走る。
一番敏感なところは直に触られるよりも官能的で、背筋がぞくぞくとした。
息遣いが大きく、荒くなる。
彼が涙袋をぷくりと膨らませていやらしく微笑んだ。
「ちょっと、見ないでくれる」
私がそう言うと、へーい、と彼はまた布団の中に潜って、代わりにワンピースの中に手をすべりこませた。そのまま両手がぬるぬると体を這い、胸をめがけて伸びる。
下半身はむき出しになった。
服の中で彼は手の指を広げて、掌全体を私の胸にひたりとつける。
息が止まった。
そのまま、彼の大きな掌ゆったりと大きな円を描きながら脇を通り、乳腺を刺激する。
官能のスイッチが入っている私は、当然のようにくすぐったさを通り越していた。
手の指が、掌が、空気を含んだような脱力をしていて、胸を何周しても彼の皮膚の擦れる場所が毎回違う。
身体をくねらせ、踊るように抵抗する。
彼はその指の感触を楽しむ為に、呼吸を止めずにあえてゆっくりと触った。
こともあろうか私は脇をさらけ出してお願いするようにして、いつもなら固いワイヤーで守られているそれを味わい尽くされてしまっている。
恥ずかしい。
恥ずかしくて、気持ちいい。
彼の指先が蛇のように胸の膨らみを這わせる。
掌と指の腹、そして手首や前腕までも使って、お腹から胸にかけて、吸い付く様に円運動を繰り返した。
お腹に触れる彼の体温にふと安心して、呼吸を取り戻すと、その気のゆるみと共に声が止まることなく溢れ出る。
それは部屋に淫らに響いた。
私の突起にひとつの指が触れる。
芯が燃え、中で火花が散るように体が弾ける。
時々、胸全体を引っかくように爪を立てたり、胸と脇のラインを指でくすぐるようになぞったりもした。
その度に、内ももに力が入り、背骨にびりびりと電気が走る。
私は腰をのけぞらせたり、引っ込めたりしながら快感を逃そうと必死だ。
慌ただしく反応する私など意に介さないように、彼はゆったりとした自分のペースを決して崩すことなく私の身体を楽しんだ。
決して乱れないリズムは固い意志を伝える。
乱れているのは、私だけだ。
彼の揺らがないその意志に、私は踊らされている。
今度は物理刺激ではなく、その意志に反応して脳がほんの少し収縮する。
理性と不安が、官能の海に少しずつ溶けてゆく。
彼は本能にとって邪魔なものを1枚ずつ剥がし取り、私は強制的に快楽に集中させられ、渦に飲み込まれていった。
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