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日本の企業組織に走る二つの断層

日頃企業の方々と接している中で、ここ最近、一つの企業の枠に留まらない、日本の多くの企業に共通する非常に大きな問題が見えてきました。それは、「企業内には今、二つの断層が走っている」ということです。

見ろ-くれ断層

一つ目の断層は、名付けて「見ろ-くれ断層」です。今の40歳代後半より上の世代の部下・後輩育成は、「見て覚えろ」というスタイルです。これは、この人たちが若手だったころに、そのようにして教えられてきたからです。
一方で今の若手の学び方は、「答えを教えてくれ」というスタイルです。そして、答えを教えてくれず、「見て覚えろ」という上の世代に対して、「パワハラだ」と反応します。上の世代からすれば、育成しているだけなのに、「パワハラ」と言われるくらいなら、かかわりたくないと思うわけです。
こうしてこの二つの世代の間に断層ができるわけです。

氷河期-Z断層

もう一つの断層は、名付けて「氷河期-Z断層」です。今の40歳代後半より上の世代が新卒の就職活動をしたときは「就職氷河期」と言われ、内定を取ることが非常に難しく、取れた内定は、たとえ第一希望でなかったとしても、そこにしがみつく会社人生を強いられてきています。
一方で「Z世代」と言われる今の若手は、人手不足時代でいくつかの内定の中から入社する企業を選ぶことができ、入社しても違和感があればすぐに辞めて別の企業に入り直すことができます。
こうしてこの二つの世代の間に断層ができるわけです。

二つの断層が重なり問題の対応が難しく

注目すべきポイントは、それぞれの断層が二律背反の構造になっていることです。
「見ろ-くれ断層」では、育成・学びのスタイルを上の世代に合わせると、今の若手はついてこなくなり、やがてその企業に入る若手がいなくなります。一方で、今の若手に合わせると、上の世代は自分たちのスタイルが否定されたと感じ、モチベーションやコミットメントが大きく下がり、二つの世代の間のコミュニケーションが崩壊します。
さらに「氷河期-Z断層」が、それぞれ相手の信念や価値観の受け入れを困難にしています。
このように、この二つの断層が重なることで、問題の対応を難しくしてしまっています。

問題の対応のポイントと二つの対応策

この問題の対応は、ロナルド・ハイフェッツ氏の言う「適応課題」に該当し、この2つの世代それぞれが信念や考え方を変容しないと解決できません。しかし凝り固まった信念や考え方を自分自身で変容することは難しく、第三者の支援が重要になります。
この第三者の支援者としてまず考えられるのが、この2つの世代の間に位置する、30歳代後半から40歳代前半のリーダーや課長クラスの人たちです。しかし、この世代も就職氷河期であり、各企業の中でも人数が少ない上、人が変容することを支援という高度なスキルを持っている人はさらに少ないでしょう。ただ、この世代に人が変容することを支援するスキルを教育することが一つの対応策になります。
もう一つの対応策は、キャリアコンサルタントやビジネスコーチなどの、人が変容することを支援するスキルを持った外部者を活用することです。

この問題は今後時間が経てば経つほど深刻さを増し、最終的には立ち行かなくなる企業も出てくると考えられます。まだ断層が浅い今のうちに対応する必要があります。
(吉田善実)


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