【月報2022年10月】元公僕が地域おこし始めてみた件
10月は、
【神戸から大槌、そして神戸へ】
【若者の悩みは道しるべ】
【訓練って言う言葉、重苦しい】
【当たり前を見直す】
【防災は災害のみのためならず】
【人の生き方は災害から学べる】
【コミュニティフォトグラファー】
の内容でお送りします。
1.ぼうさいこくたいに出展
10月22日(土) 10月23日(日) @HAT神戸
●大槌からのバトンを神戸につなぐ
神戸で開催されたぼうさいこくたいに、おらが大槌夢広場の震災伝承コンテンツの紹介で出展してきました。
ブースにお立ち寄り頂いた多くの方から、大槌への様々な思いを頂きました。
主に、大槌に行ったことがある、支援で関わったことがある、また行きたいといった声を頂きました。
コロナ禍の影響で簡単に行けないとは言え、大槌から1000キロ近く離れた神戸の地で、そう言った思いの人がたくさんいることは大変ありがたいことでした。
大槌での震災からの経験を他の地域の人に伝える一方で、様々な地域の方々の大槌への思いを大槌の皆さまへ届けることも大切だと感じました。
大槌の方々や、今まで大槌に関わって頂いた方々のためにも、これからも思いを繋ぐ活動を続けていきたいと思います。
●若者の悩みは「道しるべ」
先日、神戸で開催されたぼうさいこくたいに神戸で開催中のぼうさいこくたいに、おらが大槌夢広場の震災伝承コンテンツの紹介で出展してきました。
そしてブースを訪れた大槌に関わり、思いを寄せてくださるたくさんの方からのお声をいただきました。
また、途中で登壇させて頂いた神戸大学のボランティアのシンポジウムでは、学生さんの切実な課題を知ることができました。
自分では、今はコロナで学生さんも東日本大震災の被災地に訪れることができないが、時間と共にまた来れるようになると思っていました。
しかし、ずっと大学にいる先生とは違い学生さんは代が変わることでメンバーも卒業していってしまい、活動の継続が危ぶまれているとのことでした。
大槌にいるだけでは気づかないことだったので自分には、その危機感が伝わっていなかったので、その場で質問にはうまく答えることはできませんでした。
しかし、若者の悩みは自分のこれからの道標となり新たにわからなかったことに気付く機会になりました。
話し合うことで、現状がわかり、次に繋げる可能性の芽がでたことは大きくはなくとも一歩につながると思います。
今回神戸に訪れたことで、多くの人が大槌を思ってくれていることを知るだけではなく、自分の新たな方向性にも気付くきっかけとなって本当によかったです。
2.避難所運営に向けて
避難所運営体験学習説明会
10月23日(日) @大槌学園
大槌学園の9学年ではふるさと科の締めくくりとして避難所設運営の体験学習をやることになっています。
先日、その避難所運営に参加する生徒さん達への事前説明会に参加してきました。
僕は避難者に聞き取りをする班で、主な仕事の内容やその仕事が必要な理由、自分達で考えて欲しいことについて話しました。
特に避難者の名簿を正確に作ることで、誰がどこに避難しているかを知ることで家族が早く会うことができたり安心できたりします。
また、災害時に支援の必要な方を把握することで早期の支援に繋げることができ、災害関連死を減らすことにも繋がります。
そう言ったように、そこに『誰が』いるかということはみんなで生きていくためには欠かせない情報となっています。
住民票の情報が自治体運営の基礎になっていると言われるのは同じような意味です。
自分自身は避難所生活を送った経験はありませんが、避難所設営の手伝いや避難所運営のマニュアル作成などには関わってきたことがあります。
今はどこの町でも避難所運営マニュアルというものがあり、当然のように受付を作り、避難者名簿を作り、聞き取りをするということが定められています。
かつては当然ではなかったことが、その分野で当たり前になることはとても大切なことだと思います。
その一方で、当たり前だと思っていたことが当たり前ではなくなるのが災害です。
例えば、マニュアル上では、避難者名簿に避難所生活において配慮する項目があり、理想としてはそれを避難者が当然のように記入して、避難所運営にうまく生かされることになっています。
それがうまく行けば良いのでしょうが、事前に定めたマニュアル通りにいかないのが災害です。
例えばそれがハンディだと本人は思っていなかったり、周りに迷惑をかけたくなかったり、また配慮が必要な人だと思われたくなかったりする心のハードルなどがあるケースが想定されます。
仮に配慮して欲しい事項の欄に何も書いていないからその人は大丈夫だろうと決めつけるのではなく、家族や身近な人の意見、本人の表情や行動から本当の困り感がわかれば良いと思います。
例えば災害時に、被害の情報が入ってこないのは何も被害がないのではなく、情報も出せないほど被害が重いと考える原則があり、それと同じような考え方です。
ただ、それを他人が察知するのは容易ではないので、だからこそ日頃の関係というものが大切と言われる所以だと思います。
仮にやり方は知っていて、マニュアルは完璧だったと思ったとしても実際にやることの難しさを体感する良い機会になればと思います。
3.『訓練』を身近な要素に
防災・危機管理エキスパート育成講座(実習コース)
10月24日(月) 10月25日(火)@岩手大学地域防災研究センター
越野修三客員教授の指導の下、以下の図上訓練の考え方と4つの訓練についての講義を受けてきました。
●図上訓練について
災害対応に限らず、普段の業務においても適切に実行するためには、知識だけではなく、経験や訓練が必要です。
『訓練』という単語がここでは使われますが、一般的にイメージされがちな防災訓練という大層なものに限らず、普段の練習、トレーニングとさして変わらないものだと感じています。(かつて、訓練という名称を使うだけで内容に限らず業務量が増えた経験があるので)
今回は主に自治体や組織で災害やそれ以外にも有効な図上訓練で実践的な対応力を学びました。
訓練でイメージされがちな実動訓練は、普段訓練をやらない組織だと負担が大きすぎます。
そのために簡易にできるツールとして『図上訓練』が有効とのことでした。
そして、ここからが一番大切なことになります。
練習やトレーニングだとうまくいかないことは当たり前だと思いますが、『訓練』においてはうまくいくことが当然のように求められます。
例えば『避難訓練』は、必ず全員が助かりますし、行政の災害対応訓練では、幹部はシナリオを事前に知っているというケースもあります。
この講義では、うまくいく訓練ではなく問題点が明らかになる訓練で訓練目的を明確にすることが大切だと学びました。
そして、災害の初動対応など難しく正解と言える手段が分からないシチュエーションにおいては、初めから完璧な対処ができるはずがないとのことでした。
社会では一定規模の組織や施設では、法律で訓練が義務づけられていることが多く、形式ばったものになってしまっていることが多くあります。
特に抜き打ち訓練などは失敗を恐れるあまり参加者にプレッシャーがかかるなどの負担を強いることがあります。
訓練で失敗が見つかったことは訓練としては大成功だと思います。
本番で取り返しのない失敗をする前に気づけたのですから。
そこで今一度訓練の目的を振り返ることで、過去の災害のような犠牲や、失敗を減らすことに繋がるのではないかと思います。
●クロスロード
クロスロードとは、阪神・淡路大震災で、災害対応にあたった神戸市職員へのインタビューをもとに作成された、カードゲーム形式の防災教材です。
クロスロードの問題カードには、「3000人いる避難所で、2000食を確保した。この食糧を配るか配らないか」など、どちらを選んでも何らかの犠牲を払わなければならないような「ジレンマ」が多数あります。
プレイヤーは、自分なりの理由を考え、苦心の末に「Yes」か「No」か、一つだけを選び、自分の前にカードを裏返して置きます。
合図で一斉にオープンし、多数派の人は、青座布団を獲得できます。
一人だけの人がいる場合、その人は金座布団を獲得し、他のプレイヤーは何ももらえません。
個人的には、一人だけ違う意見がいるのは、決して組織としてブレーキになるのではありません。
一見それが正解に見えるとしても、その人にしか見えない落とし穴に気づいくことで、一見交代のように見えるが、新たな道を拓くきっかけになるかもしれません。
それが組織をより良い方向に導くことに繋がると思います。
ちなみに自分は一人だけ別の意見を出すことが2回あり、金の座布団を2枚も頂きました。
何を世間一般と呼ぶかわかりませんし、他の参加者の意見の方が世間一般からずれている可能性も十分あるのですが、自分に出来る役割として、他の人が照らしているライトの隙間の影を見つけることが出来ればと思っています。
そして、座布団の配当を終えたら、問題を全員で話し合ってみます。
その人が「Yes」または「No」を選んだ理由を聞くことで、多くの価値観や視点に出会うことができます。
理由を聞くことで、おなじ「Yes」でもその理由は異なっていたり、また違う選択をしても考え方の根本は同じなどより深い理由に気づくことに繋がります。
数字や「Yes」か「No」などの選択肢など定量的に見えるものが求められやすい現状だからこそ、その深層にある考え方を知る良い機会になりました。
それは、その人の考え方を知ると同時に、その人がどういった人かを知ることに繋がるので、災害時の想像力を高めるだけにとどまらず、人同士の距離感を近づける有効なツールにもなると感じました。
裏を返せば、入社試験や新人研修などで、その人の考え方の傾向や人となりを把握することにも使われそうです。(笑)
クロスロードは、災害を自分の身に引き寄せて考えると同時に、他者のさまざまな考えを知ることができる、優れたゲームだと言われています。
クロスロードは「分かれ道」を意味し、災害対応のイメージアップ・防災へのモチベーションの向上や、多様な視点や価値観を認識することを目的としています。
要するに、災害対応力などを向上するためのイメージトレーニングとなります。
この訓練で良いと感じたことは、『様々な人の意見を聞くことが出来ること』『少数の意見を尊重できる仕組みになっていること』だと感じました。
防災目的に限らず、他人の考えを知り、普段アウトプットされている部分以外でも認め合うことは、チーム作りにも活かせそうです。
毎回同じ選択肢を選ぶ人同士で作られたチームだと、誰も落とし穴に気づかない可能性もあると思います。
組織として失敗しないために多様性を担保しておくことに活かせればいいと思いました。
また、課題と感じたことは、誰でも気軽にできる一方で、クロスロードをやっただけで満足してしまう懸念があることです。
クロスロードは、普段は考えないことを通じて新たな体験を提供するツールだと思います。
その一方で新たな体験をしたということで満足し、そこで終わってしまうと非常にもったいないと思います。
訓練で体験したことを、自分の立場で活かし、他の人にもうまく伝えるそこがこの訓練にも限らず、大切なポイントだと思います。
クロスロードは、自分の考えの隙間や、他人の意見の大切さ、そしてそのような状況になる前の備えや覚悟の大切さを教えてくれます。
だからこそ、ここで気づいた課題を、単純に勉強になったと言うだけではなく、少しでも自分自身の普段の行動に落とし込む工夫や、次の行動につながるための方向性が必要だと感じました。
究極の選択に追い込まれないように、または究極の選択に追い込まれた時に、決断する覚悟を持てるようになれば、想定外の事態にも自分自身が耐えることが出来る力を養うことに繋がると思います。
●DIG(災害想像ゲーム)
そして『訓練』という単語が持つ堅いイメージとは異なり、堅苦しいルールは必要ではなく、楽しく、自由かつ活発に意見交換できる雰囲気をつくるよう意識すること(相手の意見をよく聞く)がルールということでした。
かつて、仕事でHUG(避難所運営ゲーム)をやった際に参加者の一人から「ゲーム」を遊びだと解釈され、苦言を呈されたことがあったが、そもそも英語の「game」には遊びの意味ではなく、野球のデイゲームのように勝負ごとに用いられるものです。
また、仮に遊びだとしても、厳しい本番に備えるために、訓練で発言しやすく、パフォーマンスを最大限まで発揮するためには、大切な要素だと考えられます。
主な流れは、自分の住む地域の地図に、災害の想定や、危険箇所、役に立つ施設や人を話しながら記入していきます。
その過程で、「災害を知る、町を知る、人を知る」ことができるもので、硬いるーづに縛られず、自由に活発に意見交換することが大切です。
この訓練で良いと感じたことは、『その地域に住んでいれば誰でも参加できること』『自分の住む地域の知らない点に気づくこと』だと感じました。
実は、自分の住む地域で「DIG」をやったことは無いのですが、防災といった話を抜きにしても、自分の住む地域を知るということにも繋がります。
そういった意味では、小学生の町歩きの授業の前などに使われるように、例えばその地域に移住してきた人は、その地域を知り、地域の人とコミュニケーションをとるツールとして活用できれば良いのではないかと感じました。
課題と感じたことは、ハードルが低い事と表裏一体ではあるのですが、「誤解をしたまま終わる」「解決策がその場で出ない」ことだと感じました。
例えば、当日訓練を体験した地域は、その町の中心部に近く、市役所や消防署、県庁など行政機関が多い地域でした。
それだけ聞けば、その地域は災害発生時に行政の支援を受けやすいので安心と感じてしまうかもしれませんが、どうでしょうか?
個人的な考えですが、地域の○○センターなどはそうかもしれませんが、本庁となる施設の場合、その地域のためだけの災害対応をするのではなく、市全域の災害対応の調整をするのがメインの施設です。
市役所の庁舎は、基本的に避難所としての機能を持たないことが多く、また、近くにあるということで、その自治体の災害対応の司令塔も一緒に被害を受けるということになります。
災害時に調整機能を持つ組織は、現場対応をせず、調整機能に徹するのが原則だと言われています。
その調整機能が損なわれてしまうと、鳥の目で全体を俯瞰し、本当に必要なところに支援の手が回せなくなってしまいます。
東日本大震災でも行政組織が被災し、機能を失った自治体でも同じだと思われます。
なので、近くに公共施設がある=災害時の安心に繋がるとは限らないのが現状です。
かつて仕事で、町全体の防災備蓄倉庫が近くにある地域の人々に、その倉庫のものはこの地域だけのものではないことを説明するのに苦労しました。
個人的には、こういった行政側と住民側の考え方の違いが引き起こす勘違いが、災害時の被害を拡大する社会的要因の一つではないかと考えています。
実際、防災の仕事をしていた時、学校の先生や、行政の職員ですら、避難所に行けば誰かが何とかしてくれると思っていました。
要するに、『できると思っていたのにできない』といったことが災害時の被害を拡大することに繋がるのではと思いました。
例えば「津波が来ないと思っていたのに来る」「助けに来ると思っていたのに、来られない」など、大きな災害時には十分ありうることを事前に正しく理解してもらうことが大切だと思います。
最後に、このDIGは大きな模造紙と、それと同じサイズの透明のシートを使うので、誰でも気軽に出来ません。
また、作業量が多く、そちらに力を割きがちなので、オンライン上やメタバース空間などで、同じ図面を共有しながら気軽にできるようになれば良いと思いました。
●マップマヌーバー
マップマヌーバーとは、時間経過に沿って全体の流れを把握し、行動の課題を改善につなげることを目的とした訓練です。
簡単に言うと、地図上で駒を動かしながら、全体の動きの中で自分の動きを考えていきます。
戦争の映画や漫画のキングダムなどで戦場を駒で再現しているのも同じようなものです。
バスケやサッカー、アメリカンフットボールなどのスポーツで、敵味方の選手の動きを再現するのにも使われることもあると思います。
また、イベントや災害発生時などの動きを、現実に行動する前に図上でやってみることで、新たな課題を発見することに繋がります。
この訓練で良いと感じたことは、いったん動かしてみることが図上で出来ることです。
動きをシミュレーションするときに、頭の中でやったり、線で描いたりすることはありますが、『複数人で』『実際に動かしてみる』ことで、全体を見る『鳥の目』だけではなく流れを読む『魚の目』で全体の動きを把握することが出来ました。
課題と感じたことは、ファシリテーターまたは、参加者の経験や考え方が一定以上必要ということでした。
訓練の最中で出た参加者の意見の中で、災害発生時において『消防車が助けに来る』『先生が集まってくる』という事前の決め事が、さも当然のように実行される前提で話しが進みがちだったということでした。
私は、知識や経験として、消防車が来られないのが災害で、公務員など災害時に役割を果たすと思われている存在が役割を果たせないのが災害だと思っています。
ただ、それはあくまで私個人の中での考えあり、『人は自分の想定の範囲を越えられない』のだと感じることに繋がりました。
この訓練でファシリテーターは、電気が止まったら?、電話がつながらなかったら?、建物の入り口が開かなかったら?、リーダーが支持できないよう案状況になったら?といった質問を投げかけてきました。
そのたびに思ったのが、自分はその通りに行くだろうと勝手に思い込んでいたシナリオを根底から覆す事態が起こりうるということでした。
ただ、それは一人だけでは思いもよらない想定外であるわけなので、当たり前を見直すためには、多様な人の意見や過去の経験を参考にすることが大切だと感じました。
だからこそ、「防災」「伝承」「地域おこし協力隊」という偏在している分野(と個人的に思っている)だからこそ、ここで学んだツールを、それらの分野以外でも利活用できればと思いました。
●状況判断のケーススタディ
状況判断のケーススタディは、状況判断を誰でも適切に行えるツールを体系化したもので、解決すべき課題の目標を設定し、その目標を達成するために当面の状況を分析・判断して、行動を実行する過程を体感することが出来ます。
与えられた情報(緊急時には入ってくる情報が少ない)から対策案を分析し、比較するので、システマティックになっており、判断過程を図で分かりやすく説明することが出来ます。
「クロスロード」も、問いによっては、個人の決断だけではなく、達成すべき目標に応じて、最良案を選択することが出来るものもあるかもしれません。
この訓練で良いと感じたことは、事例が災害に限らず、普段の選択肢にも応用できることです。
例えばドラゴンクエスト5には究極の2択があります。
主人公がビアンカと結婚するか?フローラと結婚するかの2択だったり、昼ご飯を寿司にするか焼肉にするかの選択にも活用できると思います。
仕事でも、企画を比較したり、やるやらないの判断にも、決裁権者の主観のみだと、どうしても間違いは起こりうるので、それをサポートするための助言として説得力のある説明にもつながると感じました。
課題と感じたことは、直感などでこうだと自分で選んだ選択肢を選ぶように分析結果を操作しがちだということです。
自分自身も訓練をやりながら、頭の中で選んだ選択肢(正しいとは限らない)に導くような、判断基準を選んでいました。
外部の説明する際の都合の良い切り取りにならないように、参加者の多様性や中立性なども必要な場合もあると感じました。
最後に、この訓練で一番大切なことは『目標』を明確にするということです。
訓練の最後には、様々な対策案を比較し、どれを選択するか結論を出すのですが、比較するメリット・デメリットが全て同列ではないということです。
例えば、3つの交通手段を選ぶ問題で、お金より早さを優先したい場合は、金額の比較は考慮すべき事項ではありません。
逆に、10円でも安くすませたいという重いが強い人は、最低限の目標(到着する)が達成できれば、時間や手間がいくらかかろうと、安い金額の手段を選ぶかもしれません。
災害時の人員の割き方でも、発災直後は、避難所の環境を整えることより、人命救助活動ができるようなサポートを優先するなども同様です。
ただ、世の中にある選択肢は、そう分かりやすく優先順位がつくものばかりではありません。
命と命を比較することや、仕事と家族など、過ぎには決断できない選択肢もたくさんあると思います。
そこには、機械的には決められないことがたくさんあると思います。
でも、だからこそ決めないといけない状況で選択肢を選ぶためには機械的に判断する仕組みも目標達成のためには必要だと思いました。
●感じたこと
この訓練を通じて一番強く思ったことは『目標や目的を立てること』ですが、それとは別に大事だと感じたことがあります。
『当たり前を見直す』ということです。
様々な図上訓練の中で、各個人の中の「当たり前」が飛び交いました。
そうやると決まっているから、違法だから、常識だからという行き止まりで思考が完結していると感じました。
人は常に、マニュアル上、法律上のことをやっているのではなく、それらや過去の出来事も踏まえ、少しずつでも変化し続けているのだと思います。
普段は当たり前の行動が、災害時には命取りになることもあります。
また、普段の当たり前では出来ない行動が、災害時に人を救ったということもありました。
例えば、漁業無線の目的外利用、ガソリンスタンドのガソリンを事前の断りなしにくみ上げる、道路が封鎖されたので、地元の人達で他の道路と繋げるなどの行動です。
その時はまだ、その行動は当たり前ではなかったのかもしれません。
けれど法改正などによって、それが新たな当たり前になることもあります。
今ある当たり前も、過去に誰かがその時の当たり前を見直して作られていると思います。
この『当たり前を見直す』マインドこそが、大規模災害で産まれたものの一つだと思っていますので、東日本大震災から学べる『生き方』はたくさんあると感じました。
また、災害対応の訓練については、自治体職員時代に学んで、実施することもありましたが、再度学びなおしたことで、災害に限らず様々な人材育成の場などで活用できると実感できました。
私自身今までやったこともある図上訓練もあるため、人に頼まれたら実施することは可能です。
図上訓練をやることは可能ですが、そのために一番大切なのは、図上訓練をやる目的を明確にすることです。
自分の得手不得手を知る、苦手なこと改善するなどの目的のために練習や訓練があり、逆に無駄な練習や訓練をしないことが普段の仕事量を減らし、より良いライフワークバランスに繋がると思います。
本来の災害対策のための研修で、それ以外の活用用途や気づきも得られたのは良かったです。
4.プロジェクトマネジメントを学ぶ
考えて動かす学校
10月7日(水) 10月20日(木) 10月27日(木)
大槌町地域おこし協力隊では、様々な研修を受けることが出来、遠野市にある「富川屋」の「考えて動かす学校」という研修に参加しました。
専門外なので、あまり深くは書きませんが、地域おこし協力隊仕事の中でのプロジェクトマネジメントを、自分たちで考えながら学ぶ研修でした。
主に、企画の作り方や、チーム作り、関わる人の集め方やスケジュール管理などを実際に考えて、話し合いました。
内容はさておき、この研修で学んだ事は、様々な知見を合わせて作られてはいるものの、あくまでも兵法の基本のようなものだと個人的には思っています。
なので、天・地・人に応じて自分なりに応用していくことが大切だと感じました。
5.異分野はクロスする
上記の2つの研修「防災・危機管理エキスパート育成講座(実習コース)」と「考えて動かす学校」を両方受けたからこそ、気づけたことがあります。
まずは防災から
「防災・危機管理エキスパート育成講座(実習コース)」では、図上訓練をやっている最中に「避難する」「避難しない」という言葉がよく交わされたのがとても気になっていました。
話の中で、避難所に行くことについて「避難する」と言い、避難所に行く道中が危険なので、そのまま家の上の階に留まることについて「避難しない」という傾向が見れれると感じました。
「する」「しない」だけを見ると「避難しない」ということがネガティブな選択肢としてとらえられてしまうかもしれません。
しかし、最近テレビで大雨の時などによく使われる「身を守る行動をとる」と考えると、避難所・緊急避難場所に行くという意味で使われがちな「避難する」「避難しない」ではなく、その状況下で一番安全だと思われる行動を取ることが必要だと思われます。
研修でも用いたクロスロードの質問の際も、安易に「YES」「NO」と選択肢に上下を感じさせる風に分けるのではなく、それぞれの選択肢を具体的に示すことも大切ではないかと感じました。
用語の曖昧さ
そこで思ったのが、防災関係でよく使われる用語の意味の曖昧さについてです。
他の分野の用語でも同じようなことはあるかもしれませんが、「防災」「避難」「連携」といった単語が、これらの言葉を使っておけばそれっぽく見えるが、具体的な内容が全然伝わらない言葉ではないかと考えました。
「防災」とは
「防災」という単語、本来の意味はありますが、様々な広い意味でも使われているので、なんとなく他人ごと感のある言葉になっているかもしれません。
例えばよく耳にする「防災グッズ」という単語、一体何を指すのでしょうか?
防災グッズを備えましょうと言われることはあると思いますが、それだけだと具体的に何を備えればいいのかもよくわからず、より災害に備える具体的な行動に移しづらくなっているのかもしれません。
また、「防災意識」を高めると言いますが、「防災意識」って何なんでしょう?
どうなったら防災意識が高いと評価されるのか?具体的な項目がないと正直よくわからないと思います。
「防災訓練」もなんとなく使われるかもしれませんが、訓練の内容も多種多様にあるので、どういった内容の訓練をするか具体的にした方が良い気がします。
例えばスポーツにおいて、観客など外部の人がチームが強くなるためには練習をすればいいと言うと思います。
一方で、内部の関係者やプレイヤーは、具体的に自分の長所を延ばしたり、短所を克服したり、チームの課題取り組んだり、より具体的な目的を持って練習をすると思います。
すごく当たり前のことを言っていると思うのですが、災害に置き換えると、このプレイヤーは誰でしょうか?
私は、自分達だと思います。
災害時の具体的な行動を考えるようになるためには、日常生活の延長線上に起こる災害のプレイヤーは自分自身であると気付くことがスタートではないかと思いました。
「連携」とは
また、行政関係では「連携」という言葉を多用します。
地域との連携、関係機関との連携などです。
かつて、ものすごく仕事で多用した言葉ですが、具体的に何をするのかあまり分からないまま、言葉の響きで使っていました。
年に1回顔を合わせることが連携でしょうか?飲みにケーション(死語)を取ることが連携でしょうか? 日常から連絡を取り合うことが連携でしょうか?
「連携」という言葉を言った人はいったいどういう意味で使っているのでしょうか?
自分自身も分かっていないこともある便利なようで不便な言葉です。
「避難」とは
災害時にメディアではよく「避難してください」という言葉が使われます。
この場合の「避難」というのは決まった「避難所」や「避難場所」に行ってくださいと言っているのではなく、その場や時間や危険度に応じた身を守る行動を取ってくださいと言う意味で使われているはずです。
それを前提で考えると、夜中に外に出るのが危険で家の上の階に行くことは「避難しない」とネガティブな表現で言ってしまうのは、それが最善の方法だとしても取りづらい行動に感じてしまうのではないかと思います。
また、「避難してください」という時に取る行動も、それぞれの人の置かれた状況によって異なります。
そこで難しいのが、関東や関西圏では、一つのテレビ局がカバーしているエリアが非常に広く、和歌山に台風が到来している場合でも、広いエリアに「避難してください」と呼びかける映像が流れます。
ここで感じたのは、ここで言われる「避難」とは、各個人の個別具体的な状況で身を守る行動を取ることについての開始のトリガーに過ぎないのではないかということです。
以上にあげた「防災」「連携」「避難」という単語は、本来の言葉の意味はあるものの、具体的な行動内容が非常に伝わりにくい言葉となっていると感じました。
プロジェクトマネジメントの観点から
そこで「考えて動かす学校」で学んだ内容の出番です。
仕事のスケジュール管理で大切なことは「タスク(作業)管理」ということでした。
スケジュールを引くと、ある程度タスクが見えてくるようになり、それを実行していくことでプロジェクトが進行していくことになります。
そこで重要なのが「タスクの粒度」だということでした。
要するに、スケジュールの遅れや事故は、タスクの粒度が荒いか、きちんと分解していないときに起こることが多いということでした。
この考えを聞いた時、防災とプロジェクトマネジメントの考えでつながる線が見えました。
防災×プロジェクトマネジメント
ここで感じたのは、災害に関する内容で、主に一般的に(災害の業界以外で)使われる言葉のタスクの粒度が荒いということです。
「災害に備える」「避難する」「連携する」といった言葉は災害に関する話の中でよく使われますが、これを具体的な行動に落とし込むとかなりのボリュームがあると思います。
普段では「ボールを投げて」と言われたら、深く考えずに投げることが出来ると思います。
この「ボールを投げる」という行動のタスクの粒度を細かくすると
ボールを握る(どういった握り方か?)
投げる方向を決める
投げ方を決める
投げる強さを決める
投げることを相手に伝える
構える
投げる方向を見る
脚を上げる
重心を動かす
腰をひねる
肩を回す
腕を振る
指先に浸からを伝える
ボールをリリースする
となります(あくまで個人的な考え方です)
14工程にも及ぶ動作を無意識にできるのは、普段からやっているからであり、逆に普段からやっていないと出来ないことはタスクの粒度が荒く、うまくできない可能性があります。
仕事でも、普段レジ打ちをやっている人に言えば「これをレジでお願い」と言えば通じるかもしれません。
しかし、普段やっていない人だと打つボタンの意味や、打つときの楽な姿勢など細かな手順を説明しないと出来なかったり、途中で工程が抜けてしまったりする可能性があります。
災害時の行動は、普段は使わずに災害時の特別な行動と思われているがゆえに、抽象的な言葉が多く、具体的な行動が事前に示されにくいと考えています。
災害時の行動が具体的になりにくい要因として考えられるのが、避難行動は当事者の状況によって異なったり、災害の規模などによっても異なるなど、状況に左右される要因が大きいからという理由もあると思います。
だからこそ、各個人が自分の立場で、行動をイメージして振り返る機会が必要だと感じました。
避難行動のタスクの粒度を上げる
先ほどのボールを投げる動作と同じように、災害から身を守る行動の経過を具体的に出していき、タスクの粒度を上げることで、実際の行動の確実性が上がり、また課題を見つけることが出来ると思います。
例えば、「そんなにたくさんのものを持って避難できない」「業務上の動きばかりで、自分の身を守る行動が抜けていた」「このタスクは出来ない可能性がある」などです。
こういったタスクの粒度を上げる練習は必要ですが、難しい問題もあると感じています。
起こる可能性が低い出来事にそこまでかける時間がない。
1人または同じ組織内だけだと、タスクの粒度が上がらない。
図上訓練でも感じたことですが、一人や同じような考え方の人だけでは『当たり前の壁』を越えることが難しい場合もあると思います。
そこで必要なのはチームや参加者の多様性だと思っています。
みんなが、それぞれの立場で異なる意見を言わないと解けないパズルのようなものになればもっと他のことに活用できると感じました。
『災害』というテーマは、実は誰もが同様に必要で、政治ほど荒れないテーマだとは思っているので、初対面だったり分野や組織の壁を越えるためのツールとして活用していければと思いました。
こういった活用が、行政、学術、民間で防災に関わった自分だからこそできることではないかと思います。
6.大槌町で生きる
●安渡地区大運動会
10月9日(日)
先日、安渡地区の大運動会がありました。
この運動会は、震災後に人口が3分の1以下に減ってしまった安渡地区で12年ぶりに開催されました。
僕は、記録写真撮影担当としてお手伝いをさせていただきました。
写真を撮っていて良かったといつも思うのは、自分の周りの人たちの楽しい瞬間が僕自身も見れることです。
何か新しいことや流行りのことじゃなくても、人が集まりそこに笑顔が生まれれば、そこが人々の大切な場になると感じました。(めっちゃクサイ言葉だと自覚してます(笑))
そしてそういった場にいることで僕自身も大槌のこと、安渡のことを少しずつ知り、近づく機会にもなりました。
大槌に来て、運動会の手伝いができてよかったと思える瞬間でした。
大槌まつりが終わって、寂しい気持ちになるタイミングで気持ちを持ち直せるイベントがあるのは本当によかったと思います。
この場がずっと安渡の人達の大切な場として続き、自分もそこにいられたらと思いました。
ただ、心残りな点がひとつあります。
借り物競争で、安渡の美人とアナウンスされた時の美人の動きが速すぎて、写真にうまく収まらなかったのが残念でなりません。
安渡美人恐るべし(笑)
●薪まつり(吉里吉里国)
10月29日(土) 10月30日(日)@NPO法人吉里吉里国
NPO法人吉里吉里国で開催された、薪まつりに手伝いとして参加しました。
この日は、他にも参加したい用事がいくつか被っていましたが、こちらを優先させていただきました。
僕はカメラマン兼ピザ焼きの弟子を担当させていただきました。
先日学んだピザづくりのスキルと、日々練習している写真撮影のスキルを活かす良い機会になりました。
29日はツリークライミング体験会があり、参加者の皆さんは木の上から見える海の絶景に酔いしれていました。
ツリークライミングは昨年体験したので、今年は登りませんでしたが、天気も良くてとても良い景色でした。
30日の薪まつりの当日は、森や木に関する様々なプログラムやピザや肉汁のおふるまいがありとてもにぎやかな場所でした。
ずっと写真撮影と、途中からピザ焼きの手伝いをしていたので、木工などを体験は出来ませんでしたが、おふるまいはとてもおいしく、あっという間に時間が過ぎて行きました。
薪まつりは10回目とのことですが、毎回NPO法人吉里吉里国にずっと関わり続けてきた人が全国各地から集まり、参加する地域の人のみならず、より多くの人にとっての1年の生で大切な日ではないかと感じました。
だからこそ、こういった機会をコロナ禍や少子高齢化などの向かい風の中ですが、続けるための力になることが地域おこし協力隊の役割のではないかと思いました。
7.ちおこの休日
10月の休日は、イベントの手伝いや出張などでほとんど何もしていません。
その合間に釜石まつりを観に行ってきました。
まず、ずっと行きたかった釜石まつりの曳き舟まつりについてです。
どれだけ行きたかったと言うと今朝曳き舟まつりに行く夢を見て、目が覚めたらギリギリの時間だったくらいです(笑)
曳き舟まつりを観るのは8年ぶりで、当時初めて観て感動したのを覚えています。
その時はまだ港の様子も今と違った気がしますが、ほとんど覚えていないので、復興途中の様子って記憶に残りにくいものだと実感しました。
そして、海上渡御の最後に船が集まってきて、なんか行ったり来たりして盛り上がる瞬間が最高でした。
次の日に、釜石まつりの日本製鉄山神社宵宮祭を観に行ってきました。
ここにに来るのも8年ぶりで、当時は郷土芸能と言えば虎舞と太神楽くらいだと思っていました。
そこで、遅めの太鼓のテンポで優雅に舞う小川鹿踊を初めて見た時は、とても衝撃を受けました。
暗くかがり火に照らされた中、鹿頭と刀振り?が踊る様はとても幻想的に感じました。
それ以降、鹿踊を見ることはなかったのですが、大槌に来てかがり火の舞で臼澤鹿子踊を見て、また異なる踊り方ですが、とても感動しました。
その時、郷土芸能を自分達の誇りとして持っている人々を羨ましく感じたのも今となっては昔のような気がしています。
8.今月の大槌
9.おわりに
今月は、防災や伝承を学ぶ機会からそこで学んだことを様々なことで活かすヒントをたくさん得た1ヶ月でした。
また、写真を撮る機会もいただき、Businessと言うよりLIFEという意味での大槌の人との関わり合いの中に少しずつ入って行けたような感覚でした。
こういった暮らし方も誰でもできるわけではないですが、アリなのかなって思いました。
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