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三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》

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オンライン開催・霧とリボン企画・三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|2022.2.13〜17 *2/15休|【参加アーティスト】アンヴァンテール/花モト・トモコ/Miss M… もっと読む
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三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|展覧会のご案内

 ヴァージニア・ウルフ『私ひとりの部屋』から 着想した展覧会を開催致します オンライン開催 at MAUVE CABINET * 霧とリボン実店舗は休業中のため ご入場頂くことはできません  ヴァージニア・ウルフは『私ひとりの部屋(1929)』の中で、女性ゆえに詩人になれなかった架空の「シェイクスピアの妹」が実は連綿と女性たちの中に生き続け、一世紀後、経済と精神の自立を得ることで蘇るであろうと語っています。  出版からまもなく一世紀——私たちが「シェイクスピアの妹」として

三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|開催方法と作品販売

* オンライン開催 at MAUVE CABINET 霧とリボン 実店舗は休業中のため ご入場頂くことはできません 霧とリボン 実店舗「Private Cabinet」に作品を展示、会場の様子や各作品の紹介を写真と文章で、会期中、毎日ここMAUVE CABINET(note)にてオンライン配信致します(2/15休)。当サイト更新も含めた最新情報は霧とリボン ツイッターでお知らせ致します。 「部屋」がテーマの本展では、「書斎」「ティルーム」「ブドゥワール」「屋根裏部屋」の

三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|巻頭詩&エッセイ|森山 恵|シェイクスピアの妹たちの部屋

 ジュディス・シェイクスピアは、ヴァージニア・ウルフが《A Room of One’s Own 私ひとりの部屋》で描いた、架空の人物です。文豪シェイクスピアと同じように「冒険好きで、想像力に富み、世界を見たいと渇望」する少女。もしそんな人物がいたら。けれど女の子である限り、教育を受ける機会は与えられず、ましてや書くことなど許されるはずもありません。家事労働を強いられます。それでもジュディスは夢抑えがたく、兄のウィリアムのような役者・劇作家を目指して17歳で出奔します。  ロン

三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|書斎|花モト・トモコ

 書斎といえば、本を読んだり何か書き物をしたりする部屋のイメージが浮かぶ。周囲は本棚に囲まれ、重厚な机の上には積み上げられた本が置かれている風景だ。  実は書斎の本質は家具や用途にはない。書斎の「斎」という字は一定の場所に「こもる」ことを意味するという。自分ひとりでその部屋にこもって読書なり書き物なりに没頭する。  つまり書斎とは、自分だけの部屋のことなのだ。  ヴァージニア・ウルフの『私ひとりの部屋』には、かつて存在し得たかもしれないシェイクスピアの妹が登場する。まだ女

三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|書斎|アンヴァンテール

 天井まで積み上げられた書棚の書物、紙とインクの香り——L’Atelier d’Ectirure。図書館が大好きだった少女時代、私のためだけの図書館である書斎に大きな憧れを持っていました。  現代のシェイクスピアの妹たちに捧げる、お気に入りの書斎作りの為のアンティークをご紹介いたします。  モシュリンヌの菫&ミモザの絵柄が美しい切手用ボックスとペンホルダー&クリップ。モシュリンヌとは、1800年代から1933年までスコットランドのMauchlineモシュリンヌという町で作ら

三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|書斎|Miss Moppet Dolls

 書斎とは、わたしたちにとってどんな場所か。隠れ家、仕事部屋、あるいは読書室? なんにせよ、書斎という場所と〈孤独〉の間には決して解けないリボンの結び目が存在する。書物を愛するわたしたちが理想とする書斎、そこにあるべきものは、例えば重厚なヴィクトリアン・スタイルの書棚、カーテンの向こうから聞こえる風の音、書き心地のよい筆記具——など、挙げはじめたらきりがない。  でもきっと、いちばん必要なのは、静けさだ。室内に漂う菫色の憂いと、思考をやさしくかき混ぜる静けさ。ヴァージニア・

三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|DAY 1

Text霧とリボン  窓で縁取りされたモーヴグレイの空に、雨音が静かに響いた今日——数多のシェイクスピアの妹たちが、広い世界への扉である窓辺で物想いに耽ったことでしょう。  2022年最初のオンライン展覧会、霧とリボン企画 三人展が本日開幕致しました。訪れて下さった皆様に心より深く御礼申し上げます。  雨音のカーテンを水鏡の揺らめきで開けて、本展のはじまりを告げたのは、詩人・翻訳家の森山 恵さまによる気高き巻頭詩&エッセイ。近づいては遠のいてゆく希望という儚きものを追い続

三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|ティルーム|アンヴァンテール

 Angelina、Carette、Café Jacquemart-André・・・お家の一部屋がパリの絢爛エレガントなサロン・ド・テのようなティルームだったら、どんなに毎日が素敵でしょう。  紅茶に浸したマドレーヌが長い長い記憶の物語を紡ぎ出すように、ティルームはシェイクスピアの妹たちにとって詩想の部屋でもありうると思います。お菓子と紅茶と夢想の為の部屋、ティルーム。毎日のティタイムをとびきりのものにしてくれるアンティークをご紹介します。  フランス1900年頃、希少な

三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|ティルーム|Miss Moppet Dolls

 新鮮な水をたっぷりとケトルに汲んでお湯を沸かす。その間にお気に入りのティカップ&ソーサーを用意。今日の茶葉はどれにしよう。ラプサンスーチョンの気分ではない。もっと柑橘系の、そうだレディグレイがいい。  威勢良く沸騰を告げる合図を聞いて、まずはポットとカップを温める。それから十分に沸き立ったお湯を茶葉に注ぎ、ジャンピングを確認してから蓋をして、待つこと3分。  ティカップに注いだ水色と芳醇な香りを堪能しながら一口すすり、じっくりと思索に耽る。  それができるのは、誰にも邪魔さ

三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|ティルーム|花モト・トモコ

 お茶をする時間、というのは特別なものだ。それがお気に入りのティセットや調度品に囲まれたわたしだけのティルームであればなおさら。まるでカフェ・ラテにのったミルクのように、日常からふわりと浮いたひとときである。  花モト・トモコ氏による優雅で可憐な作品は、午後のやさしい陽光に照らされたティータイムを思わせる。《Favorite Sweets》は、まるでパティスリーの華やかなショーケースを覗いているかのよう。色とりどりのスイーツをひとりじめするのももちろん素敵だけれど、なんだか

三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|DAY 2

Text|霧とリボン  静かな雨の初日から、春の日差し穏やかなDAY 2へ——ティカップの菫の花びらに光が揺れ、白磁もいっそう艶やかに温かな紅茶を浮かべています。  DAY 2の本日は、皆様をティルームへご案内致しました。煌めきのフランスアンティーク、ロマンティックなドール達、モダンで温かなイラストレーションが飾られたお部屋で、馥郁たる香りと共に過ごすひとときはいかがでしたでしょうか。ご滞在下さいました皆様に深く御礼申し上げます。  Happy Birthday! 本日2

三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|ブドゥワール|Miss Moppet Dolls

 「私ひとりの部屋」を持つことができるよりずっと昔のお話。上流階級の女性たちに与えられた私室がブドゥワールと呼ばれました。「bouder=拗ねて引きこもる」というフランス語から派生した言葉だとか。月のもので不安定になる女性を持て余したゆえなのでしょうか。  当時着飾ることが最重要課題であった女性たちが身支度を整えるだけでなく、手紙を書いたり、親しい人たちと愉しんだり、時には秘密の客人を招き入れてみたり──自らを解放する空間として作用しました。  Miss Moppet D

三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|ブドゥワール|アンヴァンテール

 私のブドゥワールは私以外には誰も入ることができない、私だけの部屋。鏡に映る自分自身を見つめ、心に向き合い、静かな時が流れます。鏡台の抽斗の中に様々な美しいアクセサリーを揃え、その中から今日のお気に入りを選び身に着ければ、少し沈んだ気持ちの日でもふわりと心が浮き立つのです。ブドゥワールのドレッサーを彩る心ときめくアンティークをご紹介します。  ムーランルージュの美しき女優/踊り子のEdith Whiteneyのアンティークポストカードに、1930年前後頃のブローチを添えたア

三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|ブドゥワール|花モト・トモコ

 装うための部屋、ブドゥワール。お気に入りのドレスで満たされたクローゼットと宝石箱。じぶんの宝物をすべて広げられる空間。鏡の前でのときめきを呼び覚ましてくれる作品をご紹介いたします。  視界の端に菫色の光が瞬きました。大理石のトレイに載せられた神への供物の如く輝くピアス。陽の光に照らされ陰影は色濃く貴石は燦然と光を放ちます。これはわたしのためのジュエリー ──啓示を受けたような心が通じ合う出会い。  耳元にシャラシャラと光を踊らせ鏡の前でうっとり微笑む淑女が映し出されるか