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三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|ブドゥワール|Miss Moppet Dolls

 「私ひとりの部屋」を持つことができるよりずっと昔のお話。上流階級の女性たちに与えられた私室がブドゥワールと呼ばれました。「bouder=拗ねて引きこもる」というフランス語から派生した言葉だとか。月のもので不安定になる女性を持て余したゆえなのでしょうか。

 当時着飾ることが最重要課題であった女性たちが身支度を整えるだけでなく、手紙を書いたり、親しい人たちと愉しんだり、時には秘密の客人を招き入れてみたり──自らを解放する空間として作用しました。

 Miss Moppet Dolls様が継続的に制作されているふっくらした頰のあどけない少女のブローチ。ふわふわの髪にボンネットやリボンを飾り、ビスクドール特有の滑らかなポーセリンスキンを持った少女たち。まっすぐで真摯な眼差しはひとりひとりそれぞれの人生を物語ります。

 

 石膏型にスリップを流し込み幾重にも焼成を重ねて作られるビスクドール。数々の精緻な作業工程を経て少女たちの人生が生まれてくるのです。

 手のモチーフのジュエリーはヴィクトリア時代から長く愛されてきました。繊細なレースの袖口から覗く柔らかな手。優雅な指先の仕草からたくさんのメッセージを伝えてくれます。
ただどんなに柔らかそうな肌に見えても磁器で作られたもの。どうかお気をつけて。強い衝撃は禁物です。

 ヴァージニア・ウルフの時代からおよそ100年。若くして亡くなった詩人に肉体を差し上げましょう。ぜひ彼女たちとお話しいたしましょう。一緒におでかけして100年後のこの世界を見せてあげましょう。蘇ったシェイクスピアの妹たちとあたらしい詩を紡ぎはじめるのです。

 貴方の中に生けるシェイクスピアの妹はどんな姿をしていたでしょうか。どんな手をしていたでしょうか。


Miss Moppet Dolls|人形作家 Twitter
2013年よりビスクドールの制作を始める。2017年より恋月姫人形教室「銀の翼」在籍。2018年、2019年、Silent Music「祈りの光」展。2020年、2021年、霧とリボン「アブサンの文法」「少女の聖域」展ほか、グループ展参加多数。

ヨネヤマヤヤコ|イラストレーター・ライター →Blog
香りの世界を偏愛するイラストレーター兼ライター。カルチャー・ソロリティ《菫色連盟》にてサロン「香水談話室」を主催。現在はモーヴ街6番地にあるブライオニー荘に隠匿中。
Twitter|@yoneyacco



作家名|Miss Moppet Dolls
作品名|フェイスブローチ A~D

ビスク・布・レース等
作品サイズ|
A~C:約10.5cm×8.5cm×2cm
D・E:約10cm×8cm×2cm
制作年|2022年(新作)

作家名|Miss Moppet Dolls
作品名|Victorian Hand A~E

ビスク・布・レース等
作品サイズ|約3cm×8cm×2cm
制作年|2022年(新作)

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