見出し画像

人に物を贈るときは胸を張って贈ろう

今年のバレンタインは彼氏の他に会社の上役にも贈ることになった。
職場の先輩曰く「恒例行事」らしく、みんなでお金を出し合って感謝の気持ちを贈るのだそうだ。
先週終わりの時点でまだ何を用意するか決めていなかったため、土曜日に病院へ行く用事があった私が品定めをして買ってくるという話になった。
贈る相手は5人。一人頭2000円以内で良い物を買う。これだけあれば結構良い物を拵えることができる。

病院終わりに近くのショッピングモールで仕入れてきた。ラッキーなことに、バレンタインフェアの催事をやっていたため、1750円のチョコレートを4人分買った。残り1人(直属の上司)は甘い物を食べないため1個648円のレトルトカレーを3個買うことに決めた。
買い物終わりに同僚だけしかいないLINEで「これにしました」と報告し、みんな「いいね!」「美味しそう♡」と太鼓判を押してくれた。

んで、バレンタイン当日の今日。
お昼休憩前に私から上司へレトルトカレーをプレゼントすることになった。

「つまらないものですが…」

そのとき、上司が鋭く一言。

「『つまらないものですが』って言ってはダメでぇ。それ言うと会長(上役軍団の一番偉い人)怒るから」

久々に心が戸惑った。
今まで私はその文言が失礼に当たることを知らなかったからだ。

上司は続けて、こういうときは「ほんの気持ちですが」などの文言に言い換えたほうが良いということを教えてくれた。
もし目上の人にそれを言ったならば、「本当につまらないものだったら他人にあげるな」とかなり激怒することもあるらしい。現に弊社会長はそういう考えを持っているのだそうだ。

私はすぐに訂正して「みんなでお金を出し合いました。これはほんの気持ちです」と言った。
上司はすぐににっこりして「おぉ~ありがとぉ」と言ってくれた。

弁当を食べながら、「つまらないものですが 怒る」とググってみた。
するとこんな記事を発見。上司の言っていることは正しかった。

ネガティブありきで他人に贈り物を渡すことは相手を困らせてしまう。
ましてや、コミュニケーションを円滑に進めるための贈り物を「つまらないもの」と形容したら、相手は「この俺に対してつまらないものをよこすだと…!?」と不快になるかもしれないのだ。
この言葉、私は今まで謙遜の意味で使っていたのだが、どうもそうではないらしい。無駄な気遣いは一種の拒否反応にあたるもので、下手すると相手に自分自身を全否定するようなアピールになるようだ。

確かに、せっかく人様に喜んでもらうために自分のセンスを駆使して物を贈ろうとしているのにそれを自ら無碍にするような物言いはその行為自体を自分で台無しにしているも同然のことだ。
私は上司に言われて「なんて恥ずかしいことをしてしまったのだろう」とちょっとだけ恥じて、反省した。

ちょうど支払作業の兼ね合いで常務が顔を出した。
常務がオフィスを後にするとき、私は催事コーナーで買ったチョコの紙袋を持って一言声をかけた。

「みんなからの気持ちです」

「あっ!今日バレンタインだっけか!!」

めちゃくちゃ嬉し顔の常務。テンションが上がったのか、「出張のときにお返し買うよ。何がいい?」とスマイル全開で私含めた女性陣に問うてくる。
「いやいや、私らはいつも買ってきてくれる白い恋人だけで充分ですよ」と隣の先輩が笑う。

贈り物に良いも悪いもない。品選びに失敗したと思っても、人に贈り物をするときは胸を張って「はいどうぞ!」と言おう。

今年はそんなバレンタインでした。

虹倉家の家計を支えてくれる心優しい方を募集しています。 文章と朗読で最大限の恩返しをさせていただきます。