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関節技ならぬ、『間接技』。~会社の生意気な若手と老練な先輩の戦い~

多くの場合、
ひとつの課や部の単位となると
年代も経験も考え方も、さまざまなメンバーで
構成されることになる。

そこに個性の強いキャラクター性なんかが加わると
まとめあげるのにもひと苦労するところ。

ただ、苦労するところであるからこそ、
管理職、マネージャーの腕の見せ所でもある。


「直接」教えるだけが全て、ではない。
誰かに託し、「間接」を効果的に使う。


わたしのいた組織は、
昭和の古い体質の会社で、
かつ業績が芳しくない時期が長かったため
新卒採用していなかった期間が長く、

採用自体を積極的に行える状況ではなかったようで
年代別の人員構成が、
現代の日本を象徴するような、

少子高齢化の逆ピラミッドだった。


こういった会社で陥りやすいのが、
ベテラン社員の「PC苦手」問題。

若手、中堅からの刺激や突き上げがなく、
「どうせ、みんな使えないから」
という空気が蔓延し、なかなか改善しない。


当時、
ワードやエクセルなどのofficeの基本ソフトの使用以前に
メールや文字入力さえ、ままならない社員が多かった。

こんなベテランも多くいた。
数字やアルファベットなどを半角で入力する際、
全角で入力してから変換し、半角にしていたのだ。

全角と半角の切替がボタンひとつで出来ることさえ、
認識されていない状況だった。


このような状況では、
スマホやPCに慣れ親しんだ若い世代とベテランが
同じ土俵に立つと、PC操作やその周辺の予備知識については
歴然とした大きな差が見て取れ、

それをきっかけにして
あからさまに若手がベテランを疎ましく思って
接する状況を目にするようになる。

そうなると当然、通常業務に支障が出てくる。

若手はベテランを小馬鹿にして
「こんなこともできないのか」
という態度をする。

PCを使用した業務はあくまでも
「本来業務をITツールで効率化しているだけ」
ということを忘れ、

自分の方が「ベテランより仕事ができる」
と思いあがってしまって

「なんで仕事ができないベテランの方が給料が高いのだ?」
と考え、
ベテランへのアタリがきつくなった。

ベテランはそんな小生意気な若手に対して
自分が苦手なPCに関連することについては
下手に出て、教えを乞うたりするのだが

当然、小馬鹿にしてくる若手に
本来業務についての
経験に基づいた後輩指導やサポートをしなくなり、
お互いのコミュニケーションが
悪くなっていった。

そんな天狗となってしまった若手に対し、
頭ごなしに言ったところで変わらないだろう。

とは言え、ベテランがPCを苦手としており
それを使用する業務について、
作業効率が上がっていないことも事実。

ベテランにPC操作を叩き込むか。。

いや、人件費の高いベテラン社員全員に
人件費の高い管理職がマンツーマンで
パソコン教室のようなことはやっていられない。

仕事の仕組み自体に多くの問題を抱え、
赤字体質が状態化している中で

そういった初歩的なところから
立て直す余裕はなかった。


どうするか。。
そうだ、関節技を使ってみるか。
関節の可動域を殺し、負荷をかけて
締めあげていくやつ。

ではなく、間接的に指導していくやつ。
直接やらない、名付けて『間接技』!

そこで、PCが苦手なベテランの中でも、
PCに順応する努力をしている方をひとり探し、
その方に集中して教えることにしてみた。


とにかく細かい説明は省き、
作業時間の短縮を目的として
基本操作にショートカットキーを
多用することを教えた。

すると、苦手だったPC操作が
カンタン便利になったことで、
本人はPC操作がおもしろくなったようで、
得意げに他のベテランに教えて回ってくれるようになった。

教えられたベテランは、
得意げに教えられることにプライドが刺激され
競争心が沸き、

教わったことの吸収が早くなった。


そして更に、
部署内全員で共有し活用する、
わたしがエクセルで作成した売上分析の資料の

見方、考え方、操作方法、作成意図などを
そのベテランの方に細かく説明した。

若手であれば、大抵の操作方法は、わかる。
ショートカットキーでも何でも、
わからなかったらグーグル先生で調べて
学んでいく。

でも、新しく配布されたエクセル資料の
見方や考え方、作成意図までは
説明を受けないと、理解できない。

だから、敢えて
部署全体の前でその資料について大まかな説明を行い、
細かい部分の説明については
その、集中的に説明をしたベテランの方に
個別対応をして頂くよう、お願いをした。

強制的に
ベテランが教える側で
若手が教えられる側となって、

コミュニケーションを取らなければならない状況をつくった。


ベテランを小馬鹿にして
生意気な態度を取っていた若手も、
そのベテランの方には頭を下げて
教えを請わなければならない状況をつくる。


元々、そのベテランの方は
ベテランの中でも老獪な営業マンで
教え方も上手ければ、そういった生意気な若手が
どういった心理になっているかも
お見通しであったので、

手慣れたもので、説明は上手くいった。
時々、嫌みを交えながら笑


おもしろいもので、
上の立場のひとに対しては質問を遠慮するが、
同僚という立場だと、バンバン質問する。

質問された側が答えに窮すると
ふたりで解答を考え始める。

そして、負けてない、と思っている相手から
教わると、負けん気が刺激されて
より早く吸収する。

何より、

同じ方向を向くことで
チームとしての

仲間意識が強くなる。

何をどのように教わるか、も
もちろん大切なのだけれど
「誰に」教わるか、も
けっこう大切。

上司から直接受ける説明は
流して聞いてしまうかもしれない。

同僚から間接的に受ける説明は
感じ方が変わる。


学校の先生に質問することと、
友達や先輩にきいて教えてもらうこと、の
違いのような感じでしょうか。


ただ、そういった説明役を
誰にでもお願いしても良いかと言ったら
そういうわけではなく、

能力が高いだけではダメで
他者の世話を焼いてくれる方がいい。

更に、日頃から密にコミュニケーションを取って
信頼を重ねている方にお願いした。


管理職やリーダー、マネージャーは
過程よりも結果が求められるからこそ、

自分ひとりでなく、誰かに託す
『間接技』を使うといい。



最後までお読み頂き、ありがとうございます。

マネジメントでお悩みの方、
管理職になって日が浅い方、
上司の考えに「?」と思っている方、
カッチカチに古い体制の会社に疑問を持たれている方、
などなど。

お仕事でそんなお悩みを持たれている方に向けて
発信していきたいと思います。

 きのした


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