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「ロナプリーブは皮下投与でも有効」

TONOZUKAです。


ロナプリーブは皮下投与でも有効

以下引用

米国Pittsburgh大学医学部のErin K. McCreary氏らは、本来は点滴静注で緊急使用許可を得ている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するモノクローナル抗体のカシリビマブ・イムデビマブ(商品名ロナプリーブ)を、スタッフ不足で患者数増加に対応できないことから、やむなく皮下投与を行った患者に対する治療成績を検討し、皮下投与でもCOVID-19患者の入院と死亡を減らす効果が見られ、点滴静注を受けた患者に劣っていなかったと報告した。結果は2022年4月12日のJAMA Network Open誌電子版に掲載された。

 カシリビマブ・イムデビマブの臨床試験は点滴静注で実施されていたため、米食品医薬品局(FDA)の緊急使用許可は、この投与法を強力に推奨している。しかし、点滴静注が実施困難である場合は、治療の遅れを回避するために代替ルートとして皮下投与も可能とされている。皮下投与であれば、外来でより多くの患者に対応できるが、皮下投与した場合の成績は明らかではなかった。

 著者らが所属している医療機関では、2021年9月にCOVID-19患者が急増したため、医療従事者が不足し、外来での点滴静注継続が困難になった。そこでやむなく責任者が皮下投与への切り替えを決断した。この研究では、点滴静注が実施可能な状態に戻るまでカシリビマブ・イムデビマブの皮下投与を受けた患者が、抗体治療を受けていない患者に比べ、28日以内の入院と死亡を減らしていたかを評価し、静注された患者に比べて成績が劣っていないかを検討した。

 著者らの施設では、2021年3月10日から9月9日までに紹介されたCOVID-19外来患者は、通常の対応ができていた。しかし9月9日以降10月26日までは、外来紹介患者の急増で人員不足となり、大半の患者にカシリビマブ・イムデビマブの皮下投与を実施した。10月26日以後は点滴静注ができる状態を回復している。

 対象は、2021年7月14日から10月26日までに外来を受診し、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の診断が確定した12歳以上の患者で入院しなかった人。7月14日に全国的な追跡システムが準備できてCOVID-19のデルタ株に感染した患者を解析できるようになったことから、この日を分析対象期間の開始日とした。対象となった期間は全ての患者がデルタ株に感染していた。この間に、軽症から中等症のCOVID-19患者で、重症化リスクがあり、カシリビマブ600mgとイムデビマブ600mgの点滴静注を受けた患者群、皮下投与を受けた患者群、投与を受けなかった患者群のアウトカムを比較することにした。

 主要評価項目は、28日後までの入院または死亡とした。皮下投与群と無治療群の比較では調整リスク比を推定し、皮下投与群と点滴静注群の比較では調整リスク差を推定した。副次評価項目は、28日間の入院、死亡や、有害事象発生率などとした。抗体投与群については、投与日から28日後まで、無治療群はSARS-CoV-2検査で陽性になった日から28日後までのイベント発生の有無を調べた。
 抗体の皮下投与を受け28日後までのアウトカムを追跡できた患者は969人いた。平均年齢は53.8歳(標準偏差16.7歳)、56.4%が女性患者だった。一方、軽症から中等症のCOVID-19患者で抗体治療を受けなかった患者で28日後まで追跡できた患者は4353人いた。このうち傾向スコアがマッチする組み合わせを選び出して、皮下投与群652人と無治療群1304人のアウトカムを比較した。

28日後までに入院または死亡していたのは、皮下投与群の3.4%と無治療群の7.0%で、調整リスク比は0.48(95%信頼区間0.30-0.80)になった。両群の入院または死亡の累積イベント発生率の差は15日後まで拡大したが、それ以降は一定の差が維持されていた。28日死亡率は、皮下投与群が0.2%、無治療群は2.1%で、リスク比は0.06(0.01-0.44)だった。

 続いて、皮下投与を受けていた969人と、点滴静注を受けていた1216人(平均年齢は54.3歳、標準偏差16.6歳、54.4%が女性)の比較を試みた。ワクチン接種完了者の割合は、皮下投与群が55.5%、点滴静注群が44.1%で、差は有意だった。ただし、同じ場所で治療を受けた皮下投与群721人と点滴静注群441人に限定すると、ワクチン接種率の差はなくなった。

 28日間の入院または死亡の発生率はそれぞれ2.8%と1.7%で、調整リスク差は1.5%(-0.6から3.5%)になった。あらかじめ設定されていた同等性の限界は3%で、リスク差自体はこれを超えていなかったが、信頼区間の上限は3%を超えていた。調整リスク比は1.79(1.01-3.17)だった。

 ICU入院率の調整リスク差は0.7%(-3.5から5.0%)、機械的換気を必要とした患者の調整リスク差は0.2%(-5.8から5.5%)に差はなかった。

 これらの結果から著者らは、カシリビマブ・イムデビマブの皮下投与は、軽症から中等症のCOVID-19患者の入院と死亡を減らしており、病床数や医療従事者が足りない事態では代替手段として皮下投与が有効だと思われると結論している。

 原題は「Association of Subcutaneous or Intravenous Administration of Casirivimab and Imdevimab Monoclonal Antibodies With Clinical Outcomes in Adults With COVID-19」、概要はJAMA Network Open誌のウェブサイトで閲覧できる。

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