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ドイツ一人旅_路線バスにて_10_09【海外旅行】

前の話  プロローグ  10日目01

1999年冬 10日目 ハイデルベルク

路線バスに乗ってきた高校生らしきドイツ人はどう見ても酔っぱらっていた。そして、僕たち日本人に興味深々のようだ。

「ヤーパン?(日本人?)」
「ヤー(そうだよ)」

しかたなく答える。それだけで6人組は大騒ぎした。

「トーキョー?」
「ナイン(ちがうよ)」

きちんと答えた。すると次々と地名が出てきた。

「キョート?」
「ヒロシマ?」
「ナガサキ?」
「ヨコヅナ?」
「ん、横綱?地名じゃないぞ」

メガネ君がツッコミを入れる。

「トヨタ」
「カラテ」

どうやら6人組は僕らがどこから来たのか興味がある訳でなく、日本語をどれだけ知っているのか競い合っているようだった。

そうとわかると、陽気な四角い顔のペヤング君が調子を合わせてきた。

「ヤー!カラテッ!」

構えて正拳突きを始めた。これには6人組が大うけし、みんな揃って正拳突きや空手チョップのマネを始めた。

僕は内心いいぞいいぞと思った。ユースホステルに到着するまで、どうか6人組がご機嫌でいてくださいと祈った。

トラブルに巻き込まれるのは真っ平御免だ!

果たして今度の祈りは神様に通じたらしい。バスの運転手には悪いが、車内は終始騒がしく、6組はご機嫌だった。

ユースホステルの前の停留所に着くとハイタッチをして6人組と別れた。

「トラブルにならなくてよかった」
「ああ、楽しかった!」

四角い顔のペヤング君は陽気で楽天家だ。

僕らはユースホステルに戻るとそれぞれのベットに行き、就寝の準備を始めた。


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これまでの話

0日目 きっかけと準備(日本)
1日目 初めての海外(フランクフルト)
2日目 初めての散策(カッセル)
3日目 初めてのビール(ケルン)
4日目 初めてのサッカー(ドルトムント)
5日目 長い長い一日(ベルリン)
6日目 ドナウの旅人(パッサウ)
7日目 ドナウの風景(レーゲンスブルク)
8日目 スタジアムでの出会い(ミュンヘン)
9日目 白亜の城での出会い(フュッセン)

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