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JW161 雨降って稲作

【孝霊天皇編】エピソード16 雨降って稲作


第七代天皇、孝霊天皇(こうれいてんのう)の御世。

一人の皇女(ひめみこ)が讃岐(さぬき:現在の香川県)を救うため旅立った。

皇女の名は、倭迹迹日百襲姫(やまとととひももそひめ)(以下、モモ)。

伝承では、生母の倭国香媛(やまとのくにかひめ)(以下、国香)も共に旅立っている。

しかし、この物語では、旅の仲間が追加されたのであった。

一人目は、モモの弟、彦五十狭芹彦(ひこいさせりひこ)(以下、芹彦(せりひこ))。

二人目は、モモの妹、倭迹迹稚屋姫(やまとととわかやひめ)(以下、ワカヤ)。

そして、腹違いの姉妹、千千速比売(ちちはやひめ)(以下、チチ)。

それから、腹違いの兄弟、稚武彦(わかたけひこ)(以下、タケ)である。

系図(旅の仲間)

オリジナル設定により、鏡を失った一行は、姿見(すがたみ)の井戸に案内されたのであった。

モモ「こ・・・これが、姿見の井戸?」

姿見の井戸
姿見の井戸(内部)

モモの質問に対し、讃岐の住人、アマンダが返答する。

アマンダ「そう! これが、姿見の井戸じゃ。これで少しは、身だしなみを整えれるやろ?」

国香「アマンダ殿、かたじけない。」

アマンダ「いえいえ、そんなぁ。ちなみに、香川県東かがわ市の大谷(おおたに)というところに有るけん(有るから)、覚えといてな。」

姿見の井戸(地図)

モモ「しかし、なんか暑いわねぇ。ちょっと、袖(そで)を引きちぎりまぁぁす!」

国香「なっ!? 何をするのです?! 汝(いまし)は皇女(ひめみこ)ですぞ!」

モモ「だって、暑かったんだもん・・・(´;ω;`)。」

ワカヤ「こ・・・このことが原因で、そ・・・袖掛神社(そでかけじんじゃ)が・・・創建されたそうです。」

袖掛神社(登り口)
袖掛神社(鳥居)
袖掛神社(拝殿)

チチ「袖を引きちぎって、どこに掛けただ?」

ワカヤ「そ・・・それは、き・・・聞いちゃダメらしくて・・・。」

モモ「そうよ! ロマンは大事にしないと!」

チチ「それは、おっとう(父)が分からねぇ時に言う台詞だべ!」

タケ「ところで、袖掛神社の鎮座地は、どこなのじゃ?」

モモ「東かがわ市の小磯(こいそ)よ。立ち寄った理由は分からないわ。」

袖掛神社(地図)

芹彦「モモ姉(ねえ)! それで良いのか?! 何か理由(わけ)が有るのでは?!」

モモ「だって、分かんないんだもん・・・(´;ω;`)。」

芹彦「ふん! これだから、七歳児は困るのじゃ。」

モモ「はぁ? 何言ってんの? 私、八歳ですから!」

芹彦「なんと! いつ歳を取ったのでござる?!」

モモ「上陸した時には、八歳になってたみたいよ。」

タケ「旅の途路(とじ)で、年を越したわけか・・・。」

国香「モモ殿・・・。それよりも、雨乞いをおこなわねば・・・。」

モモ「あっ! そうだった! で・・・では、雨乞い致しまする。」

こうして、モモの祈祷(きとう)により、讃岐の地に雨が降ったのであった。

これに歓喜(かんき)する讃岐の住人たち。

住人を代表して、サントスとナビルが駆け寄って来た。

サントス「ほんに(本当に)ありがとうございます! おたしは、今、猛烈に感動しとる!」

ナビル「それを言うなら、わしもじゃ! ありがとうございます!」

芹彦「よし! 水の心配は要(い)らなくなった。ではこれより、開墾(かいこん)致ぁぁす!」

サントス・ナビル・アマンダ「へ?」×3

芹彦「開墾じゃ! 田んぼを作るのじゃ!」

サントス「そ・・・そうか! もう水に困ることはないけん(ないから)、なんぼでも田んぼを作れるんじゃ!」

ナビル「よぉぉし。こうなったら、競争じゃな!」

アマンダ「あたいが、優勝するけん(するから)!」

水の安定供給が約束された讃岐。

空前絶後の稲作ラッシュが到来したのである。

だがそれは、一人の皇女の身体的負荷を伴うものでもあった。

そして、そのことに、誰も気付いていないのであった。

モモ「誰か、気付きなさいよ!」

タケ「モモよ。すまぬ。汝(いまし)にばかり苦労をかけておるようじゃな?」

モモ「祈祷だけじゃダメよ。水脈(すいみゃく)を調べ、水路を確保するのよ。」

タケ「水脈?」

モモ「ヤマトには、銅や鉄などの鉱脈(こうみゃく)を調べる人たちがいるわよね?」

タケ「ま・・・まあ、そうであるな。」

モモ「その人たちの力を借りて、水脈を探してもらえば、こんなに祈祷しなくて済むわ!」

タケ「な・・・なるほどのう。では、早速、調べてもらおうではないか。」

こうして、清らかな水を求めて、調査が開始されたのであった。

その結果・・・。

モモ「素晴らしき水源を確保したわよ!」

国香「では、ここに新たな行宮(あんぐう)を設(もう)けましょう。」

ナビル「こうして、わしら地元民は、この行宮のことを『大内(おおち)』と呼ぶようになったんじゃ。理由については、聞かんといてな(聞かないでね)。」

サントス「ちなみに、二千年後も大内の地名は残っとるんで!」

大内(地図)

アマンダ「けんど(だけど)、二千年後は、狭い地域を指すみたいじゃな。あたいたちの時代は、もっと広い地域を指しとったんで!」

昔の大内(想定図)

芹彦「その通り! そして、ナビルたちが大内と呼んでいる行宮は、神社となった!」

ワカヤ「こ・・・これが、み・・・水主神社(みずしじんじゃ)・・・です。」

水主神社(鳥居)
水主神社(拝殿)

芹彦「ワカヤ! 声が小さい!」

ワカヤ「えっ? えっ?」

国香「芹彦殿は、声が大き過ぎるのじゃ。」

チチ「ちなみに、東かがわ市の水主(みずし)に鎮座してるだ。与田川(よだがわ)の川上だぞ。」

水主神社(地図)

モモ「こ・・・これで、私も、少しは楽ができるってもんよね。」

芹彦「楽をするつもりか?! モモ姉! それがしは、認めぬぞ!」

モモ「ちょっとくらい休ませてよ! 近くの池で、足を冷やしてくるわ・・・。」

疲れ果てたモモ。

そんな皇女に、待ち受ける悲劇とは・・・。

次回につづく

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