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JW204 偉大な大王

【孝元天皇編】エピソード7 偉大な大王


第八代天皇、孝元天皇(こうげんてんのう)の御世。

紀元前209年、皇紀452年(孝元天皇6)9月6日。

この日、先代の陵(みささぎ)が完成したのであった。

完成記念式典には、新たに出雲(いずも)の君主となった、世毛呂須(よけろす)(以下、ケロロ)も参列している。

地図(出雲より来訪)
系図(出雲君)

陵を臨みながら、孝元天皇こと、大日本根子彦国牽尊(おおやまとねこひこくにくる・のみこと)(以下、ニクル)は、想いを述べるのであった。

ニクル「エピソード198にて、各地の陵が紹介されておったが、ようやく、ヤマトにも陵を築くことが叶うた・・・。」

ケロロ「ヤマト君(やまと・のきみ)。立派な陵が出来もうしたな。」

ニクル「出雲君(いずも・のきみ)にも参列いただき、先代も喜んでおりましょう。」

ケロロ「なに・・・先代におかれては、月支国(げっしこく)来襲の折、御助力たまわったゆえ・・・。」

ニクル「エピソード186と187にござりまするな?」

ケロロ「そげだ。して、陵の名は何と申される?」

ニクル「片丘馬坂陵(かたおかの・うまさか・のみささぎ)にござる。」

ケロロ「ほう・・・。して、二千年後の地名は?」

その問いには、最近登場していなかった、ニクルの大叔父、和邇日子押人(わにのひこおしひと)(以下、ひこお)が答えた。

系図(ひこお)

ひこお「お久しゅうござる。エピソード153以来の登場にござる。」

ケロロ「そげなことは聞いちょらん! 二千年後の地名を聞いておるんだに。」

ひこお「これは失礼仕(しつれい・つかまつ)った。奈良県王寺町本町(おうじちょう・ほんまち)にござりまする。」

地図(孝霊天皇陵・片丘馬坂陵・奈良県王寺町本町)
孝霊天皇陵(遥拝所)

ケロロ「そげか・・・。偉大な大王(おおきみ)に相応(ふさわ)しき陵だに。」

ニクル「そう言っていただけるとは、我(わ)が国の誉(ほま)れにござる。」

ケロロ「なに・・・。まことを申したまでじゃ。国を大きくなされた大王ではないか・・・。三か国も切り取られた御方だに。」

ニクル「さ・・・三か国とは?」

ケロロ「存じておらぬはずが有りますまい。稲葉(いなば:現在の鳥取県東部)、隠伎(おき:現在の隠岐の島)、伯伎(ほうき:現在の鳥取県西部)・・・。」

地図(稲葉・隠伎・伯伎)

ニクル「あ・・・あれは、詮無きことにて・・・。」

ひこお「左様! 三か国の豪族たちの心変わり・・・。ヤマトとしては、如何(いかん)とも成し難く・・・。」

ケロロ「しからば、なにゆえ・・・。前回、稲葉の豪族を召喚(しょうかん)なされた?」

ニクル「い・・・いえ、あれは作者の陰謀と申すモノにて・・・。」

ケロロ「まことに、そげに考えておられるか?」

ニクル「な・・・何という申し様・・・。我(われ)の一存であったと申されまするか?」

ケロロ「これみよがしに、稲葉の民は、ヤマトに帰(き)したと喧伝(けんでん)なされたのではないか?」

ひこお「出雲君様! 何か、お考え違いをなされておられるのでは?!」

ニクル「さ・・・左様。そ・・・そのようなこと・・・滅相もないことにて・・・。」

ケロロ「まあ良い。どちらに帰するかは、その地の豪族が決めること・・・。わしらには、如何(いかん)とも成し難いことよのう・・・。」

ニクル「さ・・・左様・・・。」

ケロロ「さて、これにて御恩返しは出来たはずだに。これにて帰国致す。」

ニクル「も・・・もう少し、ごゆっくりなさっていかれては?」

ケロロ「そうもいかぬ。国を守るが務めゆえ・・・。次は、どこぞの誰に奪われるか、分かったモノではありませぬからな・・・。」

ニクル「さ・・・左様にござりまするか・・・。」

こうして、出雲君は帰国したのであった。

場面は変わって、軽境原宮(かるの・さかいはら・のみや)。

地図(軽境原宮)
牟佐坐神社(拝殿)

ニクルは「ひこお」と、二人の大臣(おおおみ)を加えて語らっていた。

二人の大臣とは、磯城大日彦(しき・の・おおひびこ)と物部出石心(もののべ・の・いずしごころ)(以下、いずっち)である。

系図(いずっちと大日彦)

大日彦「大王! 出雲君の機嫌を損(そこ)ねることなく済みましたね。」

ニクル「そうであろうか・・・。」

いずっち「まあ、何と言われようと、わてらのシマになったんやさかい、文句は言わせまへんで。」

ひこお「されど、かなりキツい申され様でありましたな?」

ニクル「大叔父御(おおおじご)がいてくれたおかげで、幾分(いくぶん)か、助かりもうした。」

ひこお「そのような・・・。もったいなき御言葉・・・。」

ニクル「されど・・・先々代は、まことに困った御方じゃ・・・。」

いずっち「先々代とは、六代目こと孝安天皇(こうあんてんのう)のことですな?」

ニクル「そうじゃ。民(おおみたから)を救わんがためとはいえ、出雲と蟠(わだかま)りが出来てしもうた・・・。」

大日彦「出雲に服属を求めたことですか? 先代が皇子(みこ)だった頃の話ですね?」

ニクル「その通りじゃ。」

ひこお「されど、その交渉は、出雲君が、首を縦に振らず・・・。」

ニクル「そうではあるが・・・。あの交渉が有ったがゆえ、稲葉、隠伎、伯伎の人々は、ヤマトに属することを選んでしもうたのではないか?」

いずっち「それで、ええんやないですか? 国が、まとまれば、豊かになりますぅ。」

ニクル「それは存じておる。されど、それがゆえ、出雲と無用の戦(いくさ)となっては・・・。」

ひこお「本末転倒というわけですな?」

ニクル「その通りじゃ。」

いずっち「せやったら、戦(いくさ)にならんようにしたら、ええんだす。それが、大王の務めやと思いますで。」

ニクル「それが、我(われ)の務めか・・・。」

こうして、なにはともあれ、七代目、孝霊天皇(こうれいてんのう)の陵が完成したのであった。 

つづく

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