JW579 直轄したい
【垂仁経綸編】エピソード1 直轄したい
第十一代天皇、垂仁天皇の御世。
伊勢神宮創建の翌年、紀元前3年、皇紀658年(垂仁天皇27)。
ある日のこと・・・。
ここは、纏向珠城宮。
垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(以下、イク)の面前には、兄弟たちが坐っている。
すなわち、彦五十狭茅(以下、のまお)。
国方姫(以下、ニカ)。
千千衝倭姫(以下、チック)。
五十日鶴彦(以下、イカッピ)。
倭彦。
腹違いの兄、八坂入彦(以下、ヤサク)である。
のまお「大王? 如何なされました? 我らを呼んだ、理由を聞かせてくださりませ。」
イク「うん・・・。僕たち、大王の一族には、領地が無いよね?」
ニカ「当たり前じゃない。土地は、豪族が治めるモノでしょ?」
イク「でも、これからは、大王の一族も、土地を治めるべきだと思うんだ。」
チック「もう、治めてると思うんだけど?」
イク「えっ?」
チック「土地に封じられ、豪族の仲間入りを果たして、『王』を名乗ってる人たちがいるわよね?」
イク「いや、そういうことじゃなくて、大王の治める地ってことなんだけど・・・(;^_^A」
イカッピ「大王が治める? 何、言ってんの? さっき、姉上が仰ったでしょ? 土地は、豪族が治めるモノだって・・・。」
イク「何て、言えばいいかなぁ。大王の直轄地って言えば、分かるかな?」
倭彦「直轄地? し・・・して・・・ゴホンッ! ゴホンッ! し・・・失礼致しました・・・。」
イク「どうしたの? 倭彦? 体の具合でも悪いの?」
倭彦「心配御無用にござりまする。しばらく休めば、治りましょう・・・。」
イク「それなら、いいんだけど・・・。」
倭彦「し・・・して、なにゆえ、今さら、そのようなモノが要り様なのです?」
ヤサク「左様。初代、神武天皇の御世より、封じられし豪族が、その地を治め、税を大王に捧げ奉っておるではありませぬか。」
のまお「義兄上、それだけでは有りませぬぞ。先代の御世からは、弭と手末の調を納めることとなっておりまする。」
ニカ「エピソード381で解説された内容ですね?」
チック「弭の調は、男に割り振られた調で、獣の肉や皮など、狩りで得た物を奉るのよ。」
イカッピ「そして、手末の調は、女に割り振られた調で、絹や布など、手作業で得た物を指すのよ。」
イク「それくらい知ってるよ。僕は、大王だよ?」
倭彦「大王? それでは、足りぬと・・・ゴホンッ・・・申されるのですか?」
イク「そんなことないよ。充分に足りてるよね。それは、僕も、よく分かってる。でも、それじゃ、ダメなんだ。」
ヤサク「大王? 単刀直入に申してくだされ。」
イク「うん。これまで、豪族たちが治める税に頼ってきたわけだけど、それだと、いつまで経っても、豪族の顔色を窺わなきゃいけない。豪族の言いなりになるしかない・・・。それじゃ、ダメなんだ。」
のまお「大王・・・。その志は、真に素晴らしきモノにござりまするが、何処に、そのような地が有ると?」
ニカ「兄上の申される通りよ。もしかして・・・父上みたいに、何処かの国を切り取るつもりなの?」
イク「そ・・・そんなんじゃないよ。」
チック「では、どうされるつもりなの?」
イク「豪族たちから、分けてもらうんだ。」
イカッピ「は? 何、言ってんの? ちょっと! 頭、おかしくなっちゃったの?!」
倭彦「ご・・・豪族たちが、己の治める地を・・・易々と分けてくれるとは・・・思えませぬが・・・。」
イク「でも、ずっと頼りっぱなしでいいの? 良くないよね?」
ヤサク「大王の申されること、一理有るとは思いまする。されど、それは、豪族たちを信じておらぬと仰るようなモノ・・・。下手をすれば、豪族たちは、大王に対し、要らぬ疑いを持ち、弑し奉らんと企てるやもしれませぬぞ。」
するとそこに、久米押志岐毘古(以下、オシキ)が乱入してきた。
オシキ「ちょっと! 作者の見解が、長すぎるんですけど!」
イク「あっ! オシキ!」
オシキ「こういう時だからこそ、忠義の一族、久米の出番なんすよ!」
のまお「聞いておったのか?!」
直轄地は、どうなるのであろうか?
次回につづく
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