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JW277 吉備冠者

【疫病混乱編】エピソード29 吉備冠者


第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。

紀元前88年、皇紀573年(崇神天皇10)のある日、川内(かわち)にて大蛇が出没し、民を悩ます事件が発生。

地図(川内)

崇神天皇こと、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)は衝撃を受ける。

ただちに、大伯父の彦五十狭芹彦(ひこいさせりひこ)(以下、芹彦(せりひこ))と稚武彦(わかたけひこ)(以下、タケ)が退治に赴くこととなった。

更には、タケの息子、武彦(たけひこ)(以下、たっちゃん)、そして、大伯母の倭迹迹日百襲姫(やまとととひももそひめ)(以下、モモ)が加わる。

皇室系図(旅の仲間)

一行は、大蛇こと大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)の荒御魂(あらみたま)を鎮(しず)めたのであったが、ここで、モモから衝撃の真実を知らされる。

出雲(いずも)が、妙な企てをしているというのである。

タケ「されど、なにゆえ、モモは、出雲のことを知っておるのじゃ? 誰から聞いたのじゃ?」

モモ「誰って・・・あの御方・・・大物主神(おおものぬしのかみ)から聞いたのよ。」

ミマキ・芹彦・タケ・たっちゃん「えええぇぇぇ!!!」×4

モモ「そんなに驚かなくても、いいでしょ!」

芹彦「大物主神が、夢に現れたと申されまするか!?」

モモ「ち・・・違うわよ。」

ミマキ「ん? 夢に出て来たのでなければ、どのように降臨(こうりん)あそばされたのです?」

モモ「ま・・・毎晩のように、通ってきてくださるのよ・・・(〃▽〃)ポッ。」

芹彦・タケ・たっちゃん「えええぇぇぇ!!!」×3

ミマキ「ん? 皆の衆、どうしたのじゃ?」

たっちゃん「お・・・大王(おおきみ)? 御存知ないのですか?」

ミマキ「ん? 何をじゃ?」

タケ「私たちの時代は、通い婚。すなわち、モモの屋敷に大物主神が通っているということは・・・。」

ミマキ「なんとぉぉぉ!!! お・・・伯母上がっ!? 大物主様と?!」

モモ「あんた・・・・・・わざとでしょ?」

ミマキ「い・・・いえ、こ・・・これは読者を慮(おもんばか)ってですな・・・。」

モモ「まあ、そういうことだから、いろいろと教えてくださるのよね。」

川内で、一行が衝撃を受けていた頃、吉備国(きび・のくに)では・・・。

地図(吉備)

吉備の住人、ジョンとヨーコが、息子のジュリアン、ショーンと共に語らっていた。

ジュリアン「親父! 温羅(うら)が、手下を引き連れ、ヤマトに向かう船を襲っとる! 輸送する物資を奪っとるんじゃ。」

ショーン「物品だけじゃのうて、婦女子も奪っとるみたいじゃな。」

ジョン「温羅(うら)か・・・。エピソード265以来、吉備に在住してる、アイツか・・・。」

ヨーコ「それだけじゃないわ。岡山県総社市(そうじゃし)の新山(にいやま)に城を造ったそうよ。」

ショーン「母ちゃん、城の名前は、地元の人から、鬼ノ城(きのじょう)と呼ばれとるんじゃ。」

ヨーコ「そうなのよ。なので、地元の人は、山のことも、鬼城山(きのじょうさん)と呼ぶようになったみたいね。」

ジュリアン「おふくろ! そこだけじゃのうて、総社市の岩屋山(いわややま)にも館(やかた)を構えたみたいじゃぞ。」

ヨーコ「そ・・・そうなの?」

ジョン「まあ、仕方ないだろ。帰れって言って、帰るようなヤツじゃない。」

ジュリアン「親父! そんなことで、ええんか?」

ショーン「地元の人は、恐れ慄(おのの)き『ウラ』のことを吉備冠者(きびのかじゃ)と呼んどるそうじゃ。吉備の王、みたいな意味じゃな。更には、王丹(おに)という弟もおるそうじゃ。」

ジョン「そうじゃ、そうじゃ。総社市だけに、そうじゃ。」

ジュリアン「何を言よるんじゃ! 親父!」

ジョン「だから、仕方ないって言ってるだろ!」

ヨーコ「あなた・・・。どうにかならないの?」

ジョン「七代目が生きておられたら、すぐさま退治(たいじ)てくれたんだろうが・・・。」

ジュリアン「親父は、七代目と仲良くしてもらっとったんじゃろ? そのコネで、今の十代目に御願いしてみたら?」

ジョン「七代目の曾孫(ひまご)だぜ? 俺のことなんか、知るはずも無いしな・・・。」

ヨーコ「でも、なんとかしないと・・・。」

ジョン「分かったよ・・・。とりあえず、こういうのには、順序ってモンが有る。」

ジュリアン・ショーン「順序?」×2

ジョン「地元の豪族に頼むのが先だろ?」

ヨーコ「吉備の豪族って、県主(あがたぬし)の楽楽森彦(ささもりひこ)こと『サモリ』様?」

ジョン「その通りだ。ちょっくら行ってくる。」

こうして、ジョンは、サモリのところに向かったのであった。


ここは、サモリの屋敷。

サモリ「いやぁ。よく来てくれましたねぇ。」

ジョン「俺の来訪を見越してたってのか?」

サモリ「いやぁ、ねぇ・・・。皆、来るんですよ。小生(しょうせい)のところにね・・・。」

ジョン「どこも一緒ってことか・・・。」

サモリ「でもねぇ。このまま野放しにするわけにもいかないってのは、分かってますよ。やっつけないとねぇ。」

ジョン「だよな。だが、ウラの手下ってのは、結局、俺たちと同じ吉備人(きびびと)だろ? 疫(やく)で食い物に困り、製鉄を生業(なりわい)にしてた『ウラ』を頼った奴らだ・・・。」

サモリ「忍びないとか思ってる?」

ジョン「俺や家族も、もしかしたら、あっちに入ってたかもしれないって思うとな・・・。」

サモリ「そりゃあ、そうだけど、だからって、物を奪うのを見過ごすわけにはいかないよねぇ。」

ジョン「じゃあ、大王に伝えてくれよ。退治てくれってな・・・。」

サモリ「そうしたいけど、吉備人にも矜恃(きょうじ)ってモンが有るでしょ? ここは、吉備勢だけで、やっつけるべきだと思うんだよねぇ。」

完全オリジナルになってしまった、吉備の物語。

一体、どうなるのであろうか? 

つづく

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