JW207 引退と継承
【孝元天皇編】エピソード10 引退と継承
第八代天皇、孝元天皇(こうげんてんのう)の御世。
紀元前208年、皇紀453年(孝元天皇7)。
立后(りっこう)がおこなわれ、鬱色謎(うつしこめ)(以下、ウッチー)が大后(おおきさき)となった。
また、同年には、稚日本根子彦大日日尊(わかやまとねこひこおおひひ・のみこと)が生まれたのであった。
そして年が明け、紀元前207年、皇紀454年(孝元天皇8)春正月のこと・・・。
ここは軽境原宮(かるの・さかいはら・のみや)。
孝元天皇こと、大日本根子彦国牽尊(おおやまとねこひこくにくる・のみこと)(以下、ニクル)のもとには、多くの家臣が年頭の挨拶(あいさつ)に来ていた。
大臣(おおおみ)の物部出石心(もののべ・の・いずしごころ)(以下、いずっち)と磯城大日彦(しき・の・おおひびこ)も例外ではない。
いずっち「あけましておめでとうございますぅ。」
大日彦「あけましておめでとうございます。」
ニクル「うむ。まことにめでたい限りぞ。して、年頭の挨拶が描かれるのは、これが初めてではないか?」
大日彦「そう言われると・・・。そうですね。」
いずっち「いやぁ・・・。こないな、めでたい日に設定されるとは思いませんでしたわ。」
ニクル「ん? どういうことじゃ?」
いずっち「クランクアップするんだす。」
ニクル「なに? ついに引退すると申すか?」
大日彦「えっ? 代替わりですか?」
いずっち「そうだす。孫の鬱色雄(うつしこお)に大臣職を譲りますのんや。」
そこに、当該の人物、鬱色雄こと「コー」がやって来た。
コー「お爺はん! また、いきなりやな!」
いずっち「そないなこと言わんと、しっかり頼むでぇ。」
コー「任せときっ!」
ニクル「で・・・では『コー』を大臣に任じようぞ。」
コー「気張って参りますぅ!」
大日彦「よろしく頼みますね。」
するとそこに「コー」の弟、大綜杵(おおへそき)(以下、ヘソ)がやって来た。
ヘソ「わてにも職務が必要やで! なんか頼むで、しかし!」
ニクル「安心致せ。汝(いまし)には、大禰(おおね)を任せようと思うておる。」
ヘソ「大禰!? 昼間の警護ですな?」
ニクル「その通りじゃ。しっかりと我(われ)を守れ。」
ヘソ「任せておくんなはれ! 気張るで、しかし!」
大日彦「では、めでたい繋(つな)がりで、私と『ヘソ』殿の孫を紹介致しましょう。」
ヘソ「おっ! ええやないけぇ。紹介せんとあかんで、しかし!」
ニクル「大日彦と『ヘソ』の孫・・・。もしや?」
大日彦「その『もしや』です。私の娘、真鳥姫(まとりひめ)と『ヘソ』殿の息子、伊香色雄(いかがしこお)こと『ガーシー』との間に、息子が生まれました!」
そこに、真鳥姫と「ガーシー」がやって来た。
真鳥姫「お初にお目にかかります。真鳥にございます。」
ガーシー「まいど! ついに産まれたで!」
ニクル「そうか・・・。磯城(しき)を受け継ぐ者が生まれたか・・・。」
ガーシー「ほな、紹介しますぅ。わてと真鳥の息子、建新川(たけにいかわ)やで! 『ケニー』と呼んでや!」
ケニー「お初にお目にかかります。わてが『ケニー』でございます。磯城のことは、お任せくださいませ。」
大日彦「おお! 私の可愛い孫、『ケニーちゃん』!」
ケニー「お・・・お爺様! は・・・恥ずかしいではありませんか・・・。」
ヘソ「そないなこと言うたら、あきまへんで! 『ケニーちゃん』!」
ケニー「ヘ・・・ヘソのお爺様まで・・・。は・・・恥ずかしいっ!」
ガーシー「ほな、そういうことで、よろしゅう頼んます!」
真鳥姫「では、大王(おおきみ)・・・。『ケニー』のこと、可愛がってくださいね。」
ヘソ「わては、もう可愛がってるで!」
大日彦「私もですよ!」
ニクル「う・・・うむ。無下(むげ)には扱(あつか)うまいぞ・・・。」
こうして、物部氏の世代交代もおこなわれ、磯城氏の次期後継者も定まったのであった。
それから一か月後の紀元前207年、皇紀454年(孝元天皇8)2月、ニクルは、先代の大后を皇太后(おおき・おおきさき)と尊んでいる。
ニクル「ん? 作者よ。おかしな物言いではないか? たしか・・・我(われ)が即位した、エピソード200で、皇太后と尊んでいるはず・・・。」
コー「大王! 実は、わしらの一族について書かれた『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』では、今年の2月と記載されてるんですわ。」
ニクル「な・・・なんじゃと?」
大日彦「どういうことなんでしょうね?」
ニクル「永遠(とわ)の謎じゃな・・・。」
コー「せやけど、大王の生みの母である、細媛(くわしひめ)様は、既に伯伎(ほうき:現在の鳥取県西部)で亡くなられてますんで、それ以外の候補に挙がってた方かもしれまへんなぁ。」
ニクル「そうとも限らぬぞ。」
大日彦「どういうことですか?」
ニクル「母上は、エピソード190において、薨去(こうきょ)なされておられるが、あれは、伯伎の伝承じゃ。もしかすると御存命であったのやも・・・。」
大日彦「ロ・・・ロマンですね。」
コー「こないなところにも、ロマンか・・・。」
こうして、皇太后の一件は、ロマンで片づけられたのであった。
つづく
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