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JW263 忘れ去られた一族
【疫病混乱編】エピソード15 忘れ去られた一族
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
ここは神浅茅原(かんあさぢはら)・・・。
大王(おおきみ)、そして臣下たちが見守る中、大田田根子(おおたたねこ)(以下、田根子)が謁見(えっけん)をおこなう。
そして、田根子は不可思議な発言をするのであった。
田根子「それだけではありませんよ。エピソード87・・・。大王は御存知ですか?」
唐突に振られた、崇神天皇こと、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)が慌てて答える。
ミマキ「エ・・・エピソード87? たしか・・・二代目様の頃の話ではなかったか?」
つづいて、ミマキの大伯母、倭迹迹日百襲姫(やまとととひももそひめ)(以下、モモ)が反応した。
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モモ「のちの三代目様が、日嗣皇子(ひつぎのみこ)として、妃を迎え入れた話よね? それがどうしたっていうの?」
田根子「そのとき、磯城氏(しき・し)についての解説もおこなわれておりまして・・・。」
ミマキ「妃は、弟磯城(おとしき)こと『クロちゃん』の娘であると紹介されておるな?」
モモ「なんで『ちゃん』付けなのか、よく分かんないけど、それと、どういう関わりが?」
田根子「そこで紹介された『カツオ』は覚えておられますか?」
ミマキ「ん? カツオ?」
モモ「カ・・・カツオって、弟磯城の息子として紹介されてる、健飯勝(たけいいかつ)のことよね? その御仁(ごじん)と、何か関係が有るの?」
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田根子「大いに有ります。私の御先祖様なのです。」
一同「ええぇぇぇ!!!」×多数
ミマキ「で・・・では、汝(いまし)は、れっきとした磯城の血を引く者ということか?」
田根子「そういうことになります。ですから、大物主神(おおものぬしのかみ)は、私を指名されたのだと思います。」
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ここで、これまで大物主神の祭祀(さいし)を預(あず)かっていた、物部建新川(もののべ・の・たけにいかわ)(以下、ケニー)が、項垂(うなだ)れた。
ケニー「ま・・・まさかの展開・・・。わての苦労は水の泡だったと?」
ミマキ「気落ちいたすなっ。汝(なれ)が悪いのではない。磯城が断絶したと思い込んでいた、先達(せんだつ)が悪いのじゃ。」
必死に宥(なだ)めるミマキの傍で、大臣(おおおみ)で、ケニーの父でもある、物部物部伊香色雄(もののべ・の・いかがしこお)(以下、ガーシー)が呟(つぶや)く。
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ガーシー「せやけど、なんで磯城氏が断絶したと思い込んでしもたんやろ? 親戚付き合いが無くなってたんやろか?」
田根子「詳(つまび)らかなことは分かりません。忘れ去られていたとしか・・・。何かが有って、没落していたのかも・・・。」
ミマキ「落ちぶれ、居所(いどころ)も分からなくなっておったと?」
田根子「そうでなければ、私を探したりは、しないと思うのです。」
モモ「言われてみると、そうよね。探してるってことは、身元不明者ってわけだし・・・。」
田根子「しかし、これからは御安心ください。私が、しっかりと大物主様を祀(まつ)って参ります。」
ミマキ「うむ。田根子よ。しかと頼んだぞ!」
ケニー「わての分も頼みますよ!」
田根子「かしこまりました。」
ミマキ「これで、一安心じゃ。疫(やく)も収まるであろう。国も再び栄えていくであろう。」
一同「おお!」×多数
ケニー「あのう・・・大王(おおきみ)? 一つ、占いを御願いしたいのですが?」
ミマキ「ん? 占い?」
ケニー「はい。わての父上こと『ガーシー』が、神班物者(かみのものあかつひと)になっても良いか、占っていただきたいのです。」
ミマキ「どういうことじゃ?」
ガーシー「祭祀については、田根子に譲(ゆず)りますけど、このままでは納得出来へんので、奉仕する役職だけでもやらしてほしいんですわ。」
ミマキ「奉仕する役職か・・・。」
モモ「神班物者って言ったら、捧げものを割り当てる立ち廻(まわ)りよね?」
ケニー「そうですね。祭祀を通じて得られる利益については、物部が、しっかりと押さえるってことです。捧げる者たちと誼(よしみ)を結び、権益に深く関わるということですね。」
ガーシー「おい! ケニー! 何、言うてんねんっ! はっきり言うたら、あかんやろ! ここは、祭政一致(さいせいいっち)を図ったっちゅうことにせぇ言うたやろ!」
ケニー「あっ!」
ミマキ「き・・・聞かなかったことにするぞ・・・。」
こうして占ったのであるが、結果は意外にも「吉(よし)」なのであった。
ガーシー「作者まで、余計なこと言うてるやんけっ!」
ミマキ「では、いろいろ落ち着いたゆえ、大物主様以外の神様も祀って良いか、占ってみようではないか・・・。」
モモ「ヤマト・・・中つ国で、大物主様以外の神様を祀って良いかってことね?」
ミマキ「左様。その許し無くば、天照大神(あまてらすおおみかみ)を祀れませぬ。」
ところが、こっちの占いは「不吉(よからず)」なのであった。
ミマキ「な・・・なにゆえじゃ? 大物主様は、まだ御怒りなのか?」
田根子「私が、真(まこと)に祭祀を預かるのか、疑っておられるのかもしれませんね。」
ミマキ「そ・・・そうなるのか・・・。」
早速、祭祀の準備がおこなわれ、紀元前91年、皇紀570年(崇神天皇7)11月13日、式典が催(もよお)された。
大田田根子を大物主神の祭主とし、大倭市磯長尾市(やまと・の・いちしのながおち)こと『イッチー』を日本大国魂神(やまとのおおくにたま・のかみ)の祭主としたのである。
ようやく、疫病が収まろうとしている。
つづく
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