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JW162 鯰が翔んだ日
【孝霊天皇編】エピソード17 鯰が翔んだ日
第七代天皇、孝霊天皇(こうれいてんのう)の御世。
倭迹迹日百襲姫(やまとととひももそひめ)(以下、モモ)は、讃岐(さぬき:現在の香川県)に滞在していた。
讃岐を実り豊かな地に変えるためである。
伝承では、生母の倭国香媛(やまとのくにかひめ)(以下、国香)も赴いているが、この物語では、モモの兄弟姉妹も同伴しているのであった。
すなわち、モモの弟、彦五十狭芹彦(ひこいさせりひこ)(以下、芹彦(せりひこ))。
モモの妹、倭迹迹稚屋姫(やまとととわかやひめ)(以下、ワカヤ)。
そして、腹違いの姉妹、千千速比売(ちちはやひめ)(以下、チチ)。
腹違いの兄弟、稚武彦(わかたけひこ)(以下、タケ)である。
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そして、度重なる祈祷(きとう)で疲れ果てたモモは、ある池の畔(ほとり)で、足を冷やして休んでいたのであった。
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モモ「ああぁぁあ、気持ちいいぃぃ。足がパンパンになってたのよねぇ。」
そのとき、水中では、一匹の大鯰(おおなまず)が回遊していた。
大鯰「ばばっ! オル(私)の住処(すみか)に、女の子の足が浸かっとぉ。こうなったら、足に噛みつくしかなかねぇ。いただきまぁぁす! カプッ。」
モモ「はうぁぁ!!!! なに?! なになに?!」
大鯰「カプ、カプ。」
モモ「ぎゃぁぁ!!! 鯰ぅぅぅ!!! ちょっと! 何してんのよ! どっか行きなさいよ!」
怒り狂ったモモは、力任せに水面を蹴り上げた。
その勢いは凄(すさ)まじく、衝撃波と呼べる代物(しろもの)であった。
鯰が抵抗することもできず、空高く舞い上がる。
大鯰「ばばっ! 鯰が翔んだ! 鯰が翔んだ! オルは、一人(一匹)で生きられるとです!」
こうして、鯰は雲の彼方(かなた)へと消えていったのであった。
それと同時に、衝撃波の轟音を聞いた人々が駆けつけて来た。
モモの家族と、讃岐の住人たち(ナビル、サントス、アマンダ)である。
国香「モモ殿! 何があったのです?!」
チチ「い・・・池を囲う堤(つつみ)が・・・。」
ワカヤ「ふ・・・吹き飛んでる(;゚Д゚)」
ナビル「ほんで(そして)、空に舞う土が、次々に・・・。」
サントス「落ちて来たで!」
アマンダ「それが、どんどんと重なって・・・。」
タケ「丘になってしまったではないか!」
モモ「ちょっ・・・ちょっと、やり過ぎちゃったかな?(〃艸〃)テヘペロ」
芹彦「モモ姉(ねえ)! なんということをしてくれたのじゃ?!」
モモ「し・・・仕方ないでしょ。驚いちゃったんだもん!」
芹彦「そうではござらぬ! なにゆえ、それがしに衝撃波を放ってくださらなかったのか?!」
一同「は?」×7
芹彦「鍛錬(たんれん)には『うってつけ』であったというに!」
タケ「い・・・いや、芹彦よ。死んでしまうぞ・・・。」
芹彦「何を言うか、タケ! 武人として一皮むける、絶好の機会を逃したのじゃぞ?!」
国香「芹彦殿。命あっての物種(ものだね)と申しまするぞ。死んでしまっては、武人も誉(ほまれ)も有りますまい?」
芹彦「母上まで、そのようなことを・・・。御安心くだされ! それがしの辞書に『不可能』という文字は有りませぬゆえ!」
国香「では、今日より、小さくとも良いから、書き足しておきなされ。」
芹彦「なっ!」
ナビル「ちなみに、この池は、保田池(ほだいけ)と言うんじゃ。」
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アマンダ「ほんで、此度(こたび)の一件以降、この辺りに鯰は住まなくなったそうじゃ。」
モモ「でも・・・なんで、あの鯰・・・熊本弁だったのかしら?」
芹彦「エピソード84.8に出て来た鯰と、同種、もしくは同族なのやもしれぬな。」
モモ「それって、完全に作者の妄想じゃないのよ!」
国香「まあまあ、無事に済んだのですから、それで良いではありませぬか。では、みなさん、行宮(あんぐう)に戻りましょう。」
チチ「行宮ってのは、前回紹介した、水主神社(みずしじんじゃ)のことだべ。」
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こうして、一行は、行宮(水主神社)に戻ったのであった。
行宮に戻ったところで、モモは不思議なものを発見した。
モモ「社務所の傍に、変な塚(つか)が有るんだけど、これってなに?」
タケ「社務所? そのようなものは無いぞ。」
モモ「えっ?」
国香「モモ殿は神通力(じんつうりき)で、二千年後の景色をみておられるのでしょう。」
サントス「その通り! その塚が出来上がるのは、モモ様が亡くなられてからじゃけん(だから)、今、有ったら、おかしいんじゃ。」
モモ「わ・・・私が亡くなったあと?」
アマンダ「モモ様の墓と言われとるんよ! 地元のあたいたちは『わかばさん』と呼んどるよ。」
モモ「ええぇぇ! 私って死んじゃうの?!」
ワカヤ「モ・・・モモ姉・・・。二千年後も・・・生きてるつもりだったのですか?」
チチ「ちなみに、神社では、神陵(しんりょう)と呼ばれてるだよ。」
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モモ「と・・・ところで、神社本殿の真後ろに、孝霊神社(こうれいじんじゃ)っていう社(やしろ)が有るんだけど・・・。」
ナビル「ああ、二千年後には有るじゃろうなぁ。」
モモ「孝霊だなんて、そんな神様、聞いたことないんですけど。」
国香「当たり前じゃ。まだ御存命なのですから・・・。」
芹彦「そうか・・・それがし・・・ということか・・・。」
国香「そうではない。モモ殿や芹彦殿の父上様じゃ。」
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芹彦「なんとぉ!! その手があったか!」
モモ「父上も祀(まつ)られてるのね。」
こうして、鯰は翔んで行き、水主神社の補足説明も無事に終わったのであった。
つづく
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