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JW261 三人の夢

【疫病混乱編】エピソード13 三人の夢


第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。

ここは三輪山(みわやま)の麓、磯城瑞籬宮(しきのみずかき・のみや)。

地図(磯城瑞籬宮)

紀元前91年、皇紀570年(崇神天皇7)8月7日早朝。

崇神天皇こと、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)は、大臣(おおおみ)たちに相談していた。

すなわち、物部伊香色雄(もののべ・の・いかがしこお)(以下、ガーシー)と、その息子、建新川(たけにいかわ)(以下、ケニー)である。

系図(物部氏)

ミマキ「大田田根子(おおたたねこ)なる御仁(ごじん)に祀(まつ)らせよと申すのじゃ。」

ガーシー「三輪山の祭祀(さいし)が、磯城氏(しき・し)から、わてら、物部氏に移ったことに腹を立ててるってことですか?」

ケニー「そ・・・そんな・・・(´;ω;`)ウッ…。わてだって、一所懸命に祀ってきたんですよ?!」

ミマキ「それは、わしも、よう分かっておる。されど、大物主様は、田根子でなければならぬと申したのじゃ。」

ガーシー「せやけど、聞いたこともないですよ。田根子とか言う人物・・・。」

ミマキ「そこよ。どこにおるのか、見当もつかん。」

ケニー「大王(おおきみ)の聞き間違いじゃないですか? 本当は『ケニー』に任せろとか言ってたんじゃないですか?」

ミマキ「聞き違えるはずが有るまい! 大物主様は、はっきりと仰(おお)せになられたのじゃ。」

するとそこに、倭迹速神浅茅原目妙姫(やまととはやかんあさぢはらまくわしひめ)がやって来た。

ミマキ「ん? 誰じゃ?」

この姫、何者かと言うと・・・。

倭迹迹日百襲姫(やまとととひももそひめ)(以下、モモ)なのであった。

皇室系図(モモ)

モモ「誰って・・・。あんたの大伯母よ! 悪かったわね!」

ミマキ「まだ、何も言っておりませぬぞ。ところで、なにゆえ、名が変わっておるのです?」

モモ「知らないわよ! なんでか、この時に限って、こんな名前で紹介されてるのよね。神浅茅原(かんあさぢはら)での神がかりから、そう呼ばれるようになったんじゃないかしら・・・。」

ガーシー「たしかに・・・。名前に神浅茅原が入ってますねぇ。」

ケニー「しかし、別人の可能性も有るんですよね? モモ様と同一人物っていうのは、一部の学者の説だと聞きましたが・・・。」

モモ「そうなのよ。でも、話の流れからいって、私の可能性大よね? だから、まあ、いいんじゃないかって思ってるのよ。」

ミマキ「と・・・ところで、それを言うために参内(さんだい)なされたのでござりまするか?」

モモ「そんなわけないじゃないっ! 変な夢を見たから、報せに来たのよ。」

ミマキ「夢? も・・・もしや・・・大物主神の夢では?」

モモ「やっぱり、あんたのところにも来てたのね。私が見た内容は、こんな感じよ・・・。一人の貴(とうと)い御方が現れ、こう言うのです。『大田田根子を、大物主神(おおものぬしのかみ)を祀る者とし、また、大倭市磯長尾市(やまと・の・いちしのながおち)こと『イッチー』を、日本大国魂神(やまとのおおくにたま・のかみ)こと『おっくん』を祀る者とすれば、天下大吉。』と・・・。」

系図(大倭氏)

ミマキ「なっ!? わしは、大田田根子の話だけでしたぞ!? ど・・・どういうことじゃ?」

モモ「知らないわよ。言ってたんだから、仕方ないでしょ。」

ガーシー「市磯長尾市こと『イッチー』かぁぁ。」

ケニー「父上? いえ、大臣? 何か気になることでも?」

ガーシー「実はなぁ。エピソード122で『イッチー』の『ひいお爺ちゃん』に当たる、大倭邇支倍(やまと・の・にきべ)こと『ニッキー』が、大倭氏が祀るべきと主張してるんやわ。」

系図(大倭氏) 再掲

ミマキ「なんじゃと!? しれっと伏線を張っておったのか!?」

ガーシー「まあ、そういうことになりますねぇ。」

話が賑(にぎ)わっているところで、つづいて、穂積大水口(ほづみ・の・おおみなくち)(以下、みなお)がやって来た。

系図(物部氏・穂積氏)

みなお「大王! おはようございますぅ! エピソード200以来の登場やで!」

ミマキ「それだけを言うために来たのなら、今すぐ、帰れ!」

みなお「そないなこと言わんといてぇなぁ。今朝、夢、見たんで、報告に来たんですよ。」

ミマキ「なっ!? 汝(いまし)も夢を見たのか?」

ガーシー「大伯父上? どういうことです?」

みなお「いやぁぁ。なんや、偉そうなおっさんが出てきてな。こないなこと言うんや。『大田田根子を、大物主神(おおものぬしのかみ)を祀る者とし、また、大倭市磯長尾市(やまと・の・いちしのながおち)こと『イッチー』を、日本大国魂神(やまとのおおくにたま・のかみ)こと『おっくん』を祀る者とすれば、天下大吉。』と・・・。」

モモ「私の夢と一緒じゃないの!」

みなお「えっ? モモ様も?」

ミマキ「こ・・・これは、もしかすると、もしかするぞ・・・。」

驚愕するミマキ。

そこに、一人の人物がやって来た。

伊勢麻績(いせ・の・おみ)である。

ミマキ「だ・・・誰じゃ?」

麻績「初登場なんやから、そう言われても、仕方ないわな・・・。伊勢(いせ)を治める豪族なんじゃないかなと・・・。」

地図(伊勢)

ミマキ「なにゆえ、伊勢の豪族が、わざわざやって来たのじゃ?」

麻績「それがですねぇ。夢を見てしもたんですよ。」

ミマキ「ゆ・・・夢!?」

麻績「そんなに驚かなくても・・・。」

モモ「ちょっと! どんな内容の夢だったのよ!?」

麻績「それがですねぇ。とても上品な男の人が現れてですねぇ。こんなことを言うたんですよ。『大田田根子を、大物主神(おおものぬしのかみ)を祀る者とし、また、大倭市磯長尾市(やまと・の・いちしのながおち)こと『イッチー』を、日本大国魂神(やまとのおおくにたま・のかみ)こと『おっくん』を祀る者とすれば、天下大吉。』と・・・。」

同じ内容の夢を見た人物が三人も現れた。

ミマキは、これをどう受け止めるのか・・・。

次回につづく

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