JW291 箸墓伝説
【疫病混乱編】エピソード43 箸墓伝説
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
紀元前88年、皇紀573年(崇神天皇10)9月某日。
武埴安彦(たけはにやすひこ)(以下、安彦)の反乱は鎮圧された。
大彦(おおひこ)たちは、崇神天皇こと、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)に戦勝を報告する。
その最中、大彦は、あることを語るのであった。
ここは、三輪山(みわやま)の麓、磯城瑞籬宮(しきのみずかき・のみや)。
大彦「と・・・ところで、大王? 宮に戻る折、不思議な山を見たんだな。」
ミマキ「不思議な山?」
大彦「山と言うか、土を盛ったようなモノなんだな。」
ミマキ「伯父上・・・。それは、山ではござらぬ。」
寂し気な表情をするミマキ。
同席する人々は、目を伏せる。
大彦「ど・・・どういうことなのかな?」
ここで、彦五十狭芹彦(ひこいさせりひこ)(以下、芹彦(せりひこ))と稚武彦(わかたけひこ)(以下、タケ)が口を開いた。
芹彦「モ・・・モモ姉・・・。」
タケ「それは、モモの墓じゃ。」
大彦「えっ! モモ伯母上こと、倭迹迹日百襲姫(やまとととひももそひめ)が亡くなられたと?」
ミマキ「左様。突然のことであったゆえ、お知らせが遅くなりもうした。申し訳ござりませぬ。」
大彦「ど・・・どういうことなのかな?」
ミマキ「されば、回想シーンということで、お話し致しましょう。」
それは、武埴安彦の乱が語られて、すぐのこと・・・。
エピソード277で紹介した通り、モモは大物主神(おおものぬしのかみ)と夫婦(めおと)になっていた。
モモ「嗚呼! 大物主様ぁぁ!(⋈◍>◡<◍)。✧♡。」
大物主「おお! 可愛い姫よ!」
モモ「大物主様・・・。私・・・御願いが有るの・・・。」
大物主「どのような願いじゃ?」
モモ「大物主様・・・。あなたの御尊顔(ごそんがん)を拝(おが)みたいの・・・。いつも、夜遅くに参られて、日が昇る前に、お帰りになるでしょ?」
大物主「そうであったな・・・。」
モモ「今日は、朝まで一緒にいて! あなたの美しい、お姿(すがた)が見たいの!」
大物主「汝(なれ)の想い、たしかに受け取った。我(われ)は、明日の朝、汝の櫛笥(くしげ)に入っていよう。我の姿を見て、驚かないでくれよ。」
モモ「櫛(くし)を入れる箱? か! わ! い! い!(⋈◍>◡<◍)。✧♡。」
そうして朝になり、モモが櫛笥を見たところ、長さも太さも紐(ひも)のような、美しい蛇(へび)が入っていた。
モモ「きゃああぁぁぁぁ!!!! へびぃぃぃぃ!!!!」
驚きのあまり絶叫するモモ。
すると、蛇は、瞬時に、人の形となり、こう言った。
大物主「姫よ・・・。汝(なれ)は、我(われ)に恥をかかせた。報(むく)いとして、汝にも恥を与えようぞ!」
モモ「あっ! 大物主様! お待ちになって!」
大空を舞い、御室山(みもろやま)へと登っていく大物主。
モモは、後悔したが、先に立たずである。
御室山こと、三輪山(みわやま)を仰(あお)ぎ見るほかない。
モモ「そ・・・そんなぁ・・・。」
力が抜け、急居(つきう)すモモ。
そのとき、下腹部に激しい痛みが生じた。
モモ「ちなみに、急居っていうのは、急に坐ることよ。で・・・でも、何なの? この痛み・・・。えっ!? 私の大事なところに、箸(はし)が突き刺さってるんですけど・・・。」
ほとばしる鮮血。
白い衣が、赤く染まっていく。
それとは真逆に、モモの顔は、青白い蝋(ろう)のように変貌(へんぼう)していくのであった。
モモ「ちょっと! 『記紀(きき)』に、そんな、リアルな描写は無いか・・・ら・・・ガクッ。」
回想シーンおわり。
ミマキ「こうして、モモ伯母上は、お隠れになられたのでござる。」
大彦「お・・・驚くしかないんだな。」
芹彦「こうして、大市(おおち)の地に、モモ姉の墓が築かれたのじゃ。箸墓(はしのみはか)と呼ばれておる。」
大彦「墓にしては、大きすぎるんだな。」
ミマキ「左様。我(わ)が国、初の古墳(こふん)と言われておりまする。箸墓古墳(はしはかこふん)にござる! 奈良県桜井市箸中(さくらいし・はしなか)に有る古墳にござる。」
大彦「我が国初というのは、怪しいんだな。」
タケ「そんなことはないぞ。考古学的には、草創期の古墳であると言われておる。」
大彦「さ・・・されど、あのような大きなモノ、どうやって作ったのかな?」
ミマキ「昼は人が、夜は神が、大坂山(おおさかやま)の石を運んで築きもうした。」
タケ「大坂山は、二上山(ふたかみやま)のことじゃ。」
芹彦「山から、墓に至るまで、民(おおみたから)が立ち並び、手から手へ石を渡して運んだのじゃ。モモ姉の徳が成せる業(わざ)であろう・・・(´;ω;`)ウッ…。」
大彦「伯父上? 武人は、怯(ひる)まぬとか、申されていたような?」
芹彦「うるさい!」
ミマキ「なお、石を運んだ折に、ある人が歌を詠(よ)みもうした。」
大坂に 継ぎ登れる 石群(いしむら)を 手逓伝(たごし)に越さば 越しかてむかも
タケ「大坂山から続いている石は、重くて大変だが、手渡して行けば、運べるのかなぁ・・・という歌じゃ。」
ミマキ「ちなみに、邪馬台国(やまたいこく)の女王、卑弥呼(ひみこ)の墓とも言われておりまするぞ。」
芹彦「馬鹿を申すなっ! モモ姉の墓で決まりじゃ!」
大彦「ともかく、古墳に驚いたんだな。」
唐突な「モモ」との別れ。
そして、四道将軍(しどうしょうぐん)は派遣されるのであろうか?
次回につづく
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