JW253 笠縫邑にて
【疫病混乱編】エピソード5 笠縫邑にて
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
紀元前92年、皇紀569年(崇神天皇6)9月23日。
この日、天照大神(あまてらすおおみかみ)を祀(まつ)る神社が完成した。
それを頼もしく眺める、崇神天皇こと、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)。
同伴するのは、妃の遠津年魚眼眼妙媛(とおつあゆめまぐわしひめ)(以下、アユ)である。
アユ「ついに完成したね!」
ミマキ「うむ。まずは、満足じゃ。」
アユ「ところで、渟名城入姫(ぬなきいりひめ)こと『ナッキー』のことは残念だったね。」
ミマキ「あのようなことに、なろうとはな・・・。」
アユ「仕方ないわよ。日本大国魂神(やまとのおおくにたま・のかみ)こと『おっくん』が、御機嫌斜めなんだから、誰がやっても同じだったと思うよ。」
ミマキ「そんな簡単な話ではないのじゃ。『ナッキー』のことを想うと・・・(´;ω;`)ウッ…。」
アユ「もう! しっかりしなさいよ! 大王(おおきみ)でしょ?」
ミマキ「分かっておる。分かっておる。」
するとそこに、一人の皇女(ひめみこ)が駆け寄ってきた。
豊鍬入姫(とよすきいりひめ)(以下、きぃ)である。
きぃ「大王、母上、遥々お越しくださり、まことにかたじけのうございます。」
ミマキ「おう! 『きぃ』か!」
アユ「嗚呼! 私の『きぃ』ちゃん! 元気にしてた?」
きぃ「はい。祭祀(さいし)の方も、つつがなく進んでおりまする。されど・・・。」
ミマキ「何かあったのか?」
きぃ「あれから『ナッキー』は、如何(いかが)しておりまする?」
ミマキ「そ・・・それか・・・。実は、『ナッキー』は、心の病ということで、引退となった・・・。」
きぃ「えっ! そ・・・そのような・・・。」
ミマキ「まことにすまぬと思うておる。わしに徳が無いばかりに・・・。」
きぃ「そ・・・そうだったのですか・・・。」
ミマキ「されど、心配致すな。『ナッキー』は神となって祀られておる。」
きぃ「か・・・神に?」
アユ「そうなのよ。その名も、渟名城入姫神社(ぬなきいりひめじんじゃ)だって! そのまんまでしょ?」
きぃ「ま・・・まあ・・・。されど、祭神が、すぐに分かって良いではありませぬか。それで、どこに鎮座(ちんざ)しているのですか?」
ミマキ「奈良県は天理市岸田町(てんりし・きしだちょう)に鎮座しておるぞ。」
きぃ「で・・・では『ナッキー』の御魂(みたま)は、そこで安(やす)んじておるのですね?」
ミマキ「左様じゃ。だから心配致さずとも良い。」
きぃ「そうですか・・・。良かった・・・。本当に良かった・・・(´;ω;`)ウッ…。」
アユ「あんたたち、小さい頃から仲良かったもんねぇ。」
きぃ「兄上と話すより、同じ女の子同士で、話が弾むのです。」
アユ「たしかに、たしかに(´―`*)ウンウン」
ミマキ「と・・ところで、本題に移りたいのじゃが・・・。」
アユ「本題って?」
ミマキ「天照大神を祀りし神社の解説が、まだであろう?」
きぃ「左様にございましたね。まず、鎮座地ですが、場所は、笠縫邑(かさぬい・のむら)とされておりまする。」
ミマキ「なるほど。して、社名は何と申すのじゃ?」
きぃ「天神社(てんじんじゃ)にございます。」
アユ「ところでさぁ。笠縫邑って、二千年後の地名では、どこになるの?」
きぃ「奈良県は桜井市小夫(さくらいし・おおぶ)にございます。山も、この伝承を基に、斎宮山(さいぐうさん)と呼ばれているんだとか・・・。」
アユ「桜井市ってことは、大王の宮から近い場所ってことね?」
きぃ「ま・・・まあ、同じ市内と言っても、山中に踏み入ることになりまするので、近くとは言い難いかと・・・。」
アユ「えぇぇぇ、そうなの? 歩いて行ける距離だったら良かったのに!」
ミマキ「何を言うておるのじゃ! 遊び半分で行くところではないぞ!」
アユ「でも、可愛い娘の顔が見たくなる時もあるでしょ?」
ミマキ「言わんとするところは分かるが・・・。」
きぃ「されど、場合によっては、近くになるかもしれませぬよ。」
ミマキ「ん? どういうことじゃ?」
きぃ「実は・・・。諸説有りなのです。」
ミマキ「な・・・なんじゃと?!」
アユ「創建された日付は、はっきりしてるのに、場所は、よく分からないの?!」
きぃ「9月23日というのは、あくまで天神社の伝承でして・・・。」
ミマキ「ほ・・・ほかに有ると申すか?」
きぃ「桜井市(さくらいし)だけでも、いろいろ有りまする。」
ミマキ「い・・・いろいろ?」
きぃ「そういうことですので、強力な助っ人に来ていただきました。三輪山(みわやま)の祭祀をあずかる、物部建新川(もののべ・の・たけにいかわ)こと『ケニー』殿にございます。」
ケニー「エピソード207以来の登場ですよ!」
アユ「ちょっと! これって、どういうこと?」
きぃ「桜井市といえば、三輪山。三輪山といえば『ケニー殿』ということで・・・。」
ミマキ「たしか、磯城氏(しき・し)が断絶した折、汝(いまし)が跡を継いだのであったな?」
ケニー「左様にございます。」
唐突な助っ人の登場。
そして、諸説ある笠縫邑。
一体いくつ有るのであろうか。
次回につづく
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