JW504 親族来訪
【垂仁天皇編】エピソード33 親族来訪
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
年が明け、紀元前21年、皇紀640年(垂仁天皇9)となった。
ここは、淡海国(おうみ・のくに:現在の滋賀県)の坂田宮(さかた・のみや)。
天照大神(あまてらすおおみかみ)の御杖代(みつえしろ)、倭姫(やまとひめ)(以下、ワッコ)の元に、伯父や伯母が来訪していた。
すなわち、彦五十狭茅(ひこいさち)(以下、のまお)。
国方姫(くにかたひめ)(以下、ニカ)。
千千衝倭姫(ちちつくやまとひめ)(以下、チック)。
五十日鶴彦(いかつるひこ)(以下、イカッピ)。
倭彦(やまとひこ)である。
のまお「元気そうで、何よりじゃ。『ワッコ』も、もう立派な御杖代じゃな!」
チック「兄上? 何、言ってるの? 元気なわけないでしょ? 悩んでるのよ。この子も・・・。」
ワッコ「伯父上、伯母上。『記紀(きき)』にも、伝承にも、今年の記事など見当たりませぬが・・・。」
イカッピ「そんなことくらい、分かってるわよ。今年のことは、完全に、オリジナル設定よ。」
ニカ「でもね・・・。汝(なれ)のことが心配で来ちゃったのよ。」
倭彦「狭穂姫(さほひめ)こと『さっちん』が、あのような形で亡くなられるとは、我(われ)らも信じられぬ想いじゃ。必ずや『ワッコ』ちゃんを産んでくれるモノと思うておったが・・・。」
のまお「うむ。肝心(かんじん)の大王(おおきみ)は『心の整理が』の一点張りだしなぁ・・・。」
チック「私たちも、傷ついたけど、それよりも、なによりも『ワッコ』ちゃんが、誰よりも傷ついているんじゃないかと思って、皆で話し合い、訪ねることにしたのよ。」
ワッコ「伯父上・・・。伯母上・・・。かたじけのうござりまする。」
イカッピ「そうそう・・・。丹波(たにわ)を治めている、丹波道主王(たにわのみちぬし・のきみ)こと『ミッチー』も、悩んでおられるみたいよ。」
ワッコ「えっ? 『ミッチー』伯父上が?」
ニカ「ずっと保留のままでしょ? 娘さんを嫁に出すことも出来ず、跡継ぎが決まらないみたい。」
倭彦「『ミッチー』には、息子がおりませぬからなぁ。どこかの有力な豪族から、婿を取るほかありませぬが、ずっと保留のままでは・・・。気をもんで、いらっしゃることでしょうなぁ。」
のまお「されど、保留というのは、オリジナル設定であろう?」
チック「でも『さっちん』の遺言(ゆいごん)が有るんだから、保留みたいなモノでしょ?」
ニカ「とにかく『ミッチー』の娘さんの誰かが『ワッコ』の母上になるはずよ。」
ワッコ「五人、いらっしゃると聞いておりまするが、そのうちの誰かが・・・。」
チック「そうよ。だから、そんなに悩んじゃダメよ。いつかは、産まれてくるんだから・・・。」
倭彦「それにつけても、誉津別(ほむつわけ)こと『ホームズ』が不憫(ふびん)じゃ。『さっちん』が、あのようなことになってしまったゆえ、大王にもなれず・・・。」
イカッピ「言の葉も、全く覚えないしね・・・。ホント、どうしちゃったのかしら・・・。」
ワッコ「兄上のことは聞き及んでおりまする。やはり、全く、言の葉を?」
のまお「そうなのじゃ。話しかけたり、歌を聞かせたり、いろいろしておるのじゃが・・・。」
ワッコ「父上も苦しんでおられるのでしょうね・・・。母上を亡くし、兄上はしゃべることが出来ず・・・。そんなときに、私が悩んでいては、いけませぬな。気をしっかりと持たねば・・・。」
倭彦「その意気じゃ。我(われ)らも、ついておる。一人で悩むのではないぞ。」
こうして、親族談義で、一話を使ってしまったのであった。
つづく
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