JW256 笠縫邑は何処
【疫病混乱編】エピソード8 笠縫邑は何処
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
紀元前92年、皇紀569年(崇神天皇6)9月某日。
数多くある笠縫邑(かさぬい・のむら)の伝承地。
各地を巡る旅は、再び、桜井市(さくらし)に戻る。
彦坐王(ひこいます・のきみ)(以下、イマス)。
和珥彦国姥津(わに・の・ひこくにははつ)(以下、ニーハン)。
そして、豊鍬入姫(とよすきいりひめ)(以下、きぃ)の三名による解説はつづく。
イマス「して、ここが、最後の桜井市の候補地か?」
きぃ「左様にございます。その名も、長谷山口坐神社(はせやまぐちにますじんじゃ)にございます。祭神は、大山祇神(おおやまづみのかみ)にございます。初瀬(はせ)の山口に鎮座する、山口神(やまぐちのかみ)ともされておりまする。」
ニーハン「こちらは、天照大神(あまてらすおおみかみ)こと『アマ様』と関わりが無いような・・・。」
イマス「左様にございますな。」
きぃ「たしかに、叔父上や『ニーハン』殿が仰る通り、天照大神とは関わりが無く、初瀬山(はせやま)を祀(まつ)りし神社にございます。鎮座地(ちんざち)は、奈良県桜井市初瀬(さくらいし・はせ)にございます。」
イマス「その神社が、なにゆえ、笠縫邑の伝承地となったのじゃ?」
きぃ「太古の昔から祀られていた山ですので、天照大神を鎮座(ちんざ)させるに相応(ふさわ)しき地と判断されたのやもしれませぬ。」
イマス「相応しき地が、いろいろ有り過ぎて、諸説有りになっておるのじゃな・・・。」
きぃ「ま・・・まあ、そんな感じです。」
ニーハン「して、これで、ようやく終わりですな?」
きぃ「何を仰いますか! 奈良県には、あと一つ有りまする。」
ニーハン「あ・・・あと一つ?」
きぃ「奈良県明日香村飛鳥(あすかむら・あすか)に鎮座する、飛鳥坐神社(あすかにますじんじゃ)にございます。こちらも、御多分に漏れず、天照大神は祀られておりませぬ。」
イマス「お・・・多すぎる・・・。」
ニーハン「されど、これで、全て紹介できたわけじゃな・・・。」
イマス「伯父上? さきほどの『きぃ』の言の葉を聞いておりませなんだか?」
ニーハン「ん?」
イマス「奈良県には・・・と申しておったな?」
きぃ「は・・・はい。大変申し上げにくいのですが・・・。あと一つ、大阪府にございまして・・・。」
ニーハン「なっ!? 奈良県を飛び出して、お・・・大阪府じゃと?!」
こうして、三人は、更に足を延ばしたのであった。
きぃ「・・・ということで、やって参りました。大阪府です!」
イマス「して、大阪府のどこなのじゃ?」
きぃ「大阪府吹田市岸部北(すいたし・きしべきた)にございます。」
ニーハン「されど、拙者(せっしゃ)たちが生きていた時代に、大阪府は有りますまい。拙者たちの頃は、何と呼ばれていたのでござるか?」
きぃ「私たちの時代ですと、津国(つのくに)にございますね。」
イマス「津(つ)とは、港のことであったな?」
きぃ「左様にございます。詳しく申しますと、川に面した港のことにございます。」
ニーハン「川に面しておらぬ時は、どうなりまする?」
きぃ「港(みなと)になりまする。水門と書く場合もございますね。」
ニーハン「なるほど・・・。」
イマス「それより、笠縫邑伝承地について語らねばなるまい。社名は、何と申すのじゃ?」
きぃ「吉志部神社(きしべじんじゃ)にございます。こちらは、天照大神が祀られておりまする。」
イマス「左様か・・・。」
ニーハン「されど、鎮座地が岸部・・・。字面は違えど、同じ『きしべ』にござるな?」
きぃ「きっと社名から、地名が生まれたのだと思います。岸部に有ったことが由来かも・・・。」
ニーハン「岸部? 淀川(よどがわ)からは、かなり離れておるように見えまするが?」
きぃ「私たちの時代の淀川は、もっと川幅が広かったので、岸部に有ったのではないかと・・・。」
イマス「作者の受け売りか?」
きぃ「さ・・・左様にございます。」
ニーハン「ところで、これにて、ようやく終(しま)いにござりまするか?」
きぃ「は・・・はい。長い間、お付き合いくださり、まことにかたじけのうございます。」
イマス「そ・・・そうか・・・。まことに、長かったのう。」
ニーハン「なにはともあれ、これで、天照大神の鎮座地は定まりもうした。残すは、日本大国魂神(やまとのおおくにたま・のかみ)こと『おっくん』の怒りを鎮(しず)めるだけにござるな。」
イマス「それが、最も難しいことなのじゃがな・・・。」
きぃ「大王(おおきみ)は、如何(いかが)致す所存なのでしょう?」
イマス「うむ。こればかりは、何とも分からんが、早く疫(やく)が収まらねば、国が滅びてしまう。それだけは確かじゃ。あとは、あにう・・・大王を信じようではないか。」
ニーハン「そうじゃな。これから、我が国が、どうなっていくのか・・・。気になるところじゃが、致し方あるまい。」
きぃ「えっ? それは、どういうことにございますか?」
イマス「も・・・もしや、クランクアップなされるのか?」
ニーハン「その『もしや』にござる。」
イマス「疫に罹(かか)ったわけではありますまいな?」
ニーハン「いえいえ、拙者も歳ゆえ・・・。作者の陰謀で、やられる拙者ではありませぬぞ!」
きぃ「されど、寂しくなりまするね。」
ニーハン「これも定めにござりまする。致し方なき・・・ウッ!」
イマス「ん? 伯父上? 如何(いかが)致した?」
ニーハン「作者め・・・。こと、ここに及んで、疫に罹らせるとは・・・。無念なり! ガクッ。」
イマス・きぃ「ああああ!!」×2
こうして、笠縫邑伝承地の解説は終わった。
ニーハンの死と共に・・・。
次回につづく
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