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JW498 狭穂彦、死す

【垂仁天皇編】エピソード27 狭穂彦、死す


第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。

紀元前25年、皇紀636年(垂仁天皇5)10月1日。

狭穂彦王(さほひこ・のきみ)の謀反(むほん)が発覚。

垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)は、甥の八綱田(やつなた)(以下、つなお)に命じ、狭穂彦の館を包囲させる。

系図(つなお)

睨み合いが続き、気が付けば、11月に入っていた。

そして、大后(おおきさき)の狭穂姫(さほひめ)(以下、さっちん)は、息子の誉津別(ほむつわけ)(以下、ホームズ)を連れて、兄の籠(こも)る稲城(いなき)に入ってしまう。

系図(狭穂彦、さっちん、ホームズ)

二人の救出に、忍者の御先祖様である、大伴武日(おおとも・の・たけひ)が向かうのであった。 

系図(大伴氏:武日)

武日「さぁ! 大后、城から出てもらうっちゃが。袖(そで)を引っ張ってでも、お連れするっちゃ! あっ! これは、どういうことっちゃ? 袖が、引きちぎれたじ!」 

さっちん「衣(ころも)を酒に浸(ひた)して、破(やぶ)れるようにしているのです!」 

武日「こうなったら、腕輪(うでわ)を引っ張るっちゃが! あっ! こっちも切れた!?」 

さっちん「腕輪に切目(きりめ)を入れていたのです! 髪(かみ)を引っ張っても無駄ですよ。髪を剃(そ)り上げ、鬘(かずら:カツラのこと)にしておりまするゆえ!」 

武日「これでは、無理っちゃ。こうなったら、最終手段やじ。火をかけて、退散するっちゃが!」 

こうして、大后奪還作戦は失敗に終わった。

城が燃え盛る中、「イク」が進み出る。 

イク「『さっちん』! 僕の『さっちん』! どうか、御願いだから、出てきてよ!」 

その声に応えるように「さっちん」が、城壁の上に出てきた。 

さっちん「大王(おおきみ)! 知ってましたか? 『古事記(こじき)』では、この火の中で『ホームズ』を産むんですよ! そして、大王が、皇子の名は、どうしたらいいかと尋ねられるので、私は、火中出産だから、誉津別(ほむつわけ)とすれば良いと、提案するのです!」 

ホームズ「あわう。あうう。」 

イク「こんな時に解説なんていらないよ! 戻ってきてよ・・・(´;ω;`)ウッ…。」 

さっちん「私が、城に逃げ込んだのは、私と皇子が入れば、兄が許されるのではないか・・・と考えたからにござりまする。されど、それでも許されないことが分かりました。どうして、自ら後手(うしろで)に縛(しば)られることが出来ましょうや・・・。こうなったら、首を括(くく)って死ぬだけです。た・・・ただ、死んでも、大王の御恩(ごおん)だけは、決して忘れませぬ・・・(´;ω;`)ウッ…。」 

イク「『さっちん』! そんなのダメだ! 『さっちん』がいなくなったら、僕は生きていけないよ! どうするのさ! 誰が、僕の腰紐(こしひも)を解(と)いてくれるっていうのさ!」 

さっちん「後宮(きさきのみや)については、良い相手に、お授(さず)けになってくださいませ。私の義兄、丹波道主王(たにわのみちぬし・のきみ)こと『ミッチー』に、五人の娘がおりまする。皆、心が麗(うるわ)しい乙女(おとめ)たちです。この娘(こ)たちから・・・。」

系図(ミッチーと娘たち)

イク「ど・・・どうしても・・・どうしても『さっちん』は・・・(´;ω;`)ウッ…。」 

さっちん「大王! 皇子のことを頼みます! どうか、皇子のことを!」 

火が、城を包み込んでいく。

城が、崩れ落ちていく。

城兵が逃げまどう中、狭穂彦と「さっちん」は、最期の時を迎えようとしていた。 

狭穂彦「妹よ・・・。許せ・・・。汝(なれ)を巻き込んでしまった・・・。ミッチー兄上も、誰も、救いには来てくれなかった・・・。我(われ)は、何も見えておらなんだのじゃ・・・。」 

さっちん「良いのです。兄上・・・。これも定めなのでしょう・・・。もう、良いのです・・・(´;ω;`)ウッ…。」 

こうして、狭穂彦と「さっちん」は、運命を共にしたのであった。 

つづく

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