JW531 大夫と姓
【垂仁天皇編】エピソード60 大夫と姓
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
紀元前7年、皇紀654年(垂仁天皇23)8月22日。
姓(かばね)の制度が始まり、大臣(おおおみ)は大連(おおむらじ)と改められた。
新制度を始めて、得意気(とくいげ)な、垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)。
そんな大王(おおきみ)に、大后(おおきさき)の日葉酢媛(ひばすひめ)(以下、ひばり)が語りかけるのであった。
ひばり「大王・・・。お見事です。尾張建諸隅(おわり・の・たけもろすみ)こと『ケモロー』おじいさまが、エピソード529で引退なされて、心細かったのですが、これで一安心ですね。」
イク「えっ?」
ひばり「私は分かっておりまする。大王が、狭穂彦(さほひこ)叔父上の一件のような、謀反(むほん)が起きないよう、此度(こたび)のことを始められたのだと・・・。」
イク「ちょっと待って。こんな展開、『記紀(きき)』にも『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』にも書かれてないんだけど・・・。」
ひばり「分かっておりまする。されど、言わせてくださいませ。」
イク「そ・・・そうなるの?」
ひばり「まずは、大夫(たいふ)という役職です。物部氏(もののべ・し)に権力が集中しないよう、大夫を任命されたのだと思いますが、その人選(じんせん)が、まことに見事です。」
イク「そ・・・そう?」
ひばり「はい。狭穂彦叔父上の謀反に加担(かたん)する恐れのあった、和珥彦国葺(わに・の・ひこくにふく)こと『くにお』殿を採用し、同じ不満を持つ豪族たちを抑(おさ)え込むことに成功しておりまする。」
イク「い・・・いやぁ(;^_^A」
ひばり「そればかりか、建国の功臣(こうしん)である、大伴氏(おおとも・し)や中臣氏(なかとみ・し)も大夫とし、長年続いていたと作者が考えている、高千穂(たかちほ)と中つ国(なかつくに)の派閥争いにも終止符(しゅうしふ)を打っておりまする。」
イク「ほ・・・褒(ほ)めても、何も出ないよ?」
ひばり「そして、彼らとのバランスを取るため、最も信頼のおける、大王の伯父、阿倍武渟川別(あべ・の・たけぬなかわわけ)こと『カーケ』殿を採用されるだなんて! こんな見事な策(さく)が有るでしょうか?」
イク「バ・・・バランス?」
ひばり「更には、姓(かばね)を定めることで、国政(こくせい)に関わる者に制限を設(もう)け、そう易々(やすやす)とは、国政に口を挟(はさ)めないように致しました。」
イク「二千年後の読者は怒るんじゃないかな?」
ひばり「時代が違うのです! 誰もが口出しをして、物事(ものごと)が、なかなか進まないのであれば、時には、寡頭政治(かとうせいじ)が良いことも有るのです!」
イク「な・・・なんで、そんなに熱くなってるの?」
ひばり「大王。私は嬉しいのです。最初は、酷(ひど)い御方(おかた)だと思っておりました。エピソード515で、妹の竹野媛(たかのひめ)こと『たかのん』を死なせましたよね?」
イク「うっ・・・。」
ひばり「あの一件で、母の河上摩須郎女(かわかみのますのいらつめ)こと『マス子』は、心の病に罹(かか)り、それ以降、出演しておりませぬ。妻を失った男が、他の家族を壊(こわ)していく様(さま)は、不憫(ふびん)を通り越して、不愉快(ふゆかい)でしかありませんでした。」
イク「そこまで言わなくても・・・(´;ω;`)ウッ…。」
ひばり「しかし、私も、母となり、ようやく分かりました。」
イク「わ・・・分かった?」
ひばり「はい。大王は、争いの火種(ひだね)を消そうとなされているのだと・・・。」
イク「さ・・・作者の妄想だよ?」
ひばり「良いのです。『たかのん』のことも、もう良いのです。私は、我(わ)が子のため、これからも、大王を支えて参ります。」
こうして「ひばり」の決意が語られたのであった。
つづく
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