JW495 哀しみの膝枕
【垂仁天皇編】エピソード24 哀しみの膝枕
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
紀元前25年、皇紀636年(垂仁天皇5)10月1日。
垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)は、来目邑(くめ・のむら)に行幸(ぎょうこう:天皇の外出)した。
大后(おおきさき)の狭穂姫(さほひめ)(以下、さっちん)も同行しての行幸である。
そして、来目を治める、久米押志岐毘古(くめ・の・おしきびこ)(以下、オシキ)が歓迎するのであった。
オシキ「大王(おおきみ)! ようこそ、来目へ! ちなみに、来目邑っていうのは、奈良県橿原市(かしはらし)の久米町(くめちょう)のことっす。エピソード67で、俺の御先祖様、大久米命(おおくめ・のみこと)が、御初代様から、いただいたんすよ。すごいっすよね?」
イク「それより・・・。僕は、これまで、どこにも御幸(みゆき)してなかったのかな? 今回だけ取り上げられてるってことなら、ここで、何かあるってことだよね?」
オシキ「さぁ、どうなんすかねぇ。もしかしたら、作者が、久米一族の忠義について解説する気になったとか? 偉大な一族だと、ようやく気付いたのかもしれないっすよね?」
イク「まあ、とにかく、僕は疲れちゃったよ。少し眠らせてくれないかな?」
オシキ「分かったっす。じゃあ、宴(うたげ)の支度(したく)が整ったら、お知らせしますね。」
そう言うと「オシキ」は去っていった。
イク「じゃあ、少し、お昼寝しよう。『さっちん』・・・。膝枕(ひざまくら)してくれないかな?」
さっちん「かしこまりました。どうぞ・・・。」
イク「ありがとう『さっちん』。ところで、知ってた? 『古事記(こじき)』では、僕たちの子、誉津別(ほむつわけ)こと『ホームズ』は、このときも、まだ『さっちん』のお腹(なか)の中にいることになってるんだよ。でも、それだと、僕が酷(ひど)い夫(つま)になっちゃうから『日本書紀(にほんしょき)』のバージョンを採用したんだ。」
さっちん「えっ? それは、どういうことにござりまするか?」
イク「身重(みおも)の『さっちん』に膝枕させるなんて、僕には、考えられなかったから・・・。」
さっちん「お・・・大王・・・。」
こうして「イク」は、眠り始めたのであった。
じっと、寝顔を見つめる「さっちん」。
そのとき「さっちん」の心の中に、暗い闇のようなモノが湧き起こってきた。
そっと、懐(ふところ)から、短剣を取り出す「さっちん」。
さっちん「い・・・今、大王の周りには、誰もいない・・・。兄上の本懐(ほんかい)を遂(と)げるなら・・・。いや、ダメよ。そんなこと・・・。『ホームズ』が・・・。でも、このままでは戦(いくさ)に・・・。多くの人が・・・。でも、大王は、私の・・・。」
こみあげてくるモノを抑(おさ)えることができず、「さっちん」の目から涙がこぼれる。
その涙は、自然と「イク」の顔に落ちた。
イク「う・・・う~ん。あ・・・あれ? ここは?」
さっちん「あっ・・・。お・・・大王・・・。」
イク「そうか・・・。僕は、来目に来てたんだった・・・。でも、変な夢だったなぁ。」
さっちん「へ・・・変な夢? 何を見たのですか?」
イク「錦(にしき)のように鮮やかな、小さな蛇が、僕の首にまとわりついたんだ。」
さっちん「く・・・首にござりまするか?」
イク「それだけじゃないよ。大雨が、狭穂(さほ)の地から降ってきて、僕の顔を濡(ぬ)らしたんだ。ちなみに、狭穂って『さっちん』の実家が有る場所だね。」
さっちん「は・・・はい。ち・・・ちなみに、奈良市法蓮町(ほうれんちょう)の辺りです。」
イク「でも、一体、何だったんだろう? 何かの前触れ?」
さっちん「申し訳ござりませぬ!」
イク「えっ? 『さっちん』? ど・・・どうしたの?」
驚く「イク」。
果たして、二人の運命は・・・。
次回につづく
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