JW213 二人は従兄妹婚
【孝元天皇編】エピソード16 二人は従兄妹婚
第八代天皇、孝元天皇(こうげんてんのう)の御世。
紀元前193年、皇紀468年(孝元天皇22)1月14日、稚日本根子彦大日日尊(わかやまとねこひこおおひひ・のみこと)(以下、ピッピ)が日嗣皇子(ひつぎのみこ)に定められた。
それから四年後のこと・・・。
紀元前189年、皇紀472年(孝元天皇26)夏。
ここは軽境原宮(かるの・さかいはら・のみや)。
二人の豪族が、語らい合っていた。
二人の豪族とは、下記の者たちである。
葛城垂見(かずらき・の・たるみ)。
大倭飯手(やまと・の・いいて)(以下、いっくん)。
いっくん「娘さんが結婚したんだって? 本当に、おめでとう! 垂見!」
垂見「ありがとう・・・でござるよ。」
いっくん「汝(なれ)の娘、諸見己姫(もろみこひめ)と尾張建諸隅(おわり・の・たけもろすみ)こと、ケモロー殿が結婚しちゃうだなんて、ビックリだよ!」
垂見「べ・・・別に驚くことではないと思うのでござるよ。」
いっくん「そんなことないよ! 読者は、ビックリしてると思うよ。」
垂見「そ・・・そういうモノでござるか?」
いっくん「ん? あそこの柱に項垂(うなだ)れてる人が・・・。」
垂見「あれは、日嗣皇子の妃、包媛(かねひめ)様こと、カネ様にござるよ。」
いっくん「どうしたの? カネ様?」
カネ「あっ・・・。垂見殿、いっくん殿・・・。お・・・お元気そうで・・・。」
垂見「どうしたのでござるか? カネ様? 元気が無いようでござるよ。」
カネ「た・・・垂見殿・・・。なにゆえ、ピッピ様を屋敷に、お招きしたのです?」
垂見「どういうことでござるか?」
カネ「ピ・・・ピッピ様が、新しい妃を迎え入れられるでしょ? 汝(いまし)の娘を・・・。」
いっくん「えっ!? そうなの?!」
垂見「じ・・・実は、もう一人の娘、鸇比売(わしひめ)が、日嗣皇子の妃になるのでござるよ。」
いっくん「すっごぉい! これで葛城家は、安泰だね! 良かったね!」
カネ「良くなぁぁい! 全然、良くなぁぁい! 垂見殿が、屋敷に、お招きせねば、二人は出会うこともなかったのですよ! どうしてくれるのです!」
垂見「そ・・・そんなことを言われても、困るのでござるよ。」
カネ「嗚呼・・・アタシのピッピ様が・・・。」
いっくん「まあまあ、旦那様は日嗣皇子なんだし、その辺は、仕様がないと思うよ?」
カネ「仕様がなくない!」
いっくん「こ・・・こういう時は、気分転換が必要だよ。垂見も、そう思うよね?」
垂見「おっ? おお・・・そうでござるよ。」
いっくん「それじゃあ、今年の5月5日に創建された神社を紹介するよ。」
垂見「おお、そのようなことがあったのでござるか?」
いっくん「その名も、甲佐神社(こうさじんじゃ)だよ! カネ様? どこに鎮座(ちんざ)したのか、気になるよね?」
カネ「えっ? べ・・・別に・・・。」
垂見「き・・・気になるのでござるよ。」
いっくん「鎮座地は、熊本県甲佐町(こうさちょう)だよ! そこの上揚(かみあげ)っていう地区に鎮座してるんだよ! カネ様? すごいよね?」
カネ「えっ? べ・・・別に・・・。」
垂見「と・・・ところで、祭神が気になるのでござるよ。」
いっくん「当然、そうなるよね! カネ様も気になるよね?」
カネ「えっ? い・・・いや、別に・・・。」
いっくん「仕方ないなぁ。今回だけ、特別に教えてあげるよ! 祭神は、八井耳玉尊(やいみみたま・のみこと)だよ!」
垂見「は・・・初耳の神様にござるよ。」
いっくん「この神様は、阿蘇神社を創建なされた、健磐龍命(たけいわたつ・のみこと)こと、たつお様の御子だとされてるよ。」
カネ「えっ? でも、そんな人物・・・これまでに登場していないと思うのですが・・・。」
垂見「その通りでござるよ。たつお様の息子として登場したのは、速瓶玉命(はやみかたま・のみこと)こと、パヤオ様だけでござるよ。」
いっくん「でも、もう一人、御子がいたんだよ。パヤオ様の異母弟と言われてるね。」
カネ「異母弟・・・。」
垂見「どうしたのでござるか?」
カネ「たつお様の妃、阿蘇津媛(あそつひめ)こと『あっちゃん』は、アタシと同じ従兄妹婚(いとここん)・・・。新たな妃の登場に、どんな想いだったのかしら・・・。」
いっくん「え・・・ええっと、そうそう、創建当初は『鏑崎宮(かぶらざきぐう)』と呼ばれてたみたいだよ。たつお様が鏑矢(かぶらや)を放ち、落ちたところに創建したからだって!」
垂見「当初から、甲佐神社(こうさじんじゃ)ではなかったのでござるか?」
いっくん「そうなんだよ。すっごく気になるよね? カネ様も気になるよね?」
カネ「えっ? い・・・いや、別に・・・。」
いっくん「し・・・仕方ないなぁ。特別に教えてあげるよ。神功皇后(じんぐうこうごう)が、凱旋(がいせん)した後、甲冑(かっちゅう)を奉納したんで、甲佐と改名したんだよ。」
垂見「神功皇后? 初耳にござるよ。」
いっくん「十四代目の皇后だから、まだ生まれてないんだよ。すっごく、ロマンが有るよね?」
垂見「と・・・ところで、聞いた話によると、阿蘇神社(あそじんじゃ)、郡浦神社(こうのうらじんじゃ)、健軍神社(けんぐんじんじゃ)と共に、阿蘇四社と呼ばれているそうにござるな?」
いっくん「その通りだよ! 阿蘇神社を本社と見立てた場合は、阿蘇三摂社と呼ばれるみたいだね。ちなみに、阿蘇神社はエピソード84.9で紹介されてるよ!」
垂見「郡浦神社はエピソード86で紹介されているのでござるよ。」
カネ「えっ? じゃあ、健軍神社は?」
いっくん「そっちは、まだ紹介されてないんだよね。どうしてだろ? カネ様は分かる?」
カネ「わ・・・分かるわけないでしょ!」
こうして、甲佐神社が創建されたのであった。
つづく
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