JW500 我の力に敵う者
【垂仁天皇編】エピソード29 我の力に敵う者
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
紀元前25年、皇紀636年(垂仁天皇5)11月。
狭穂彦王(さほひこ・のきみ)の謀反(むほん)は鎮圧された。
しかし、大后(おおきさき)の狭穂姫(さほひめ)(以下、さっちん)も命を落としてしまう。
悲しみに暮れる、垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)。
そんな「イク」に、大臣(おおおみ)の尾張建諸隅(おわり・の・たけもろすみ)(以下、ケモロー)と、垂仁天皇の甥、八綱田(やつなた)(以下、つなお)は、新しい大后を勧(すす)めるのであった。
つなお「ですから、新しい大后をば・・・。」
イク「い・・・嫌だ・・・。新しい大后なんて・・・。ぼ・・・僕は、嫌だ!」
ケモロー「ほうか・・・。丹波道主王(たにわのみちぬし・のきみ)こと『ミッチー』の娘は、我(われ)の孫娘だで。我の孫娘が嫌なら、それでええがや。大王の御兄弟が、次の大王になったら、ええだけのことだがや。それでも、ええんきゃ?」
イク「うっ・・・。こ・・・心の整理がつくまで、待ってくれないかな?」
こうして、新しい大后の一件は、オリジナル設定で、保留となり、「つなお」は、これにてクランクアップとなったのであった。
そして、二年の歳月が流れた。
すなわち、紀元前23年、皇紀638年(垂仁天皇7)7月7日。
ここは、纏向珠城宮(まきむくのたまき・のみや)の近郊。
久米押志岐毘古(くめ・の・おしきびこ)(以下、オシキ)と大伴武日(おおとも・の・たけひ)が語らい合っていた。
オシキ「謀反(むほん)の一件から、もう二年になるっていうのに、大王(おおきみ)は、なんか元気が無いっていうか、やる気が無いっていうか・・・。昔みたいに笑わなくなりましたよね?」
武日「そうやなぁ。まあ、思い人を亡くしたんやかい(亡くしたんだから)、仕方なか。」
オシキ「そうなんすけどねぇ。なんか、俺って、疑われてるんじゃないかって思うんすよね。」
武日「どういうことやじ? 何か、やらかしたんか?」
オシキ「やらかしたっていうか、俺の屋敷で、謀反が発覚したでしょ? 俺も一枚、噛(か)んでると思われてるんじゃないかって・・・。なんか、俺に対して、冷たいっていうか・・・。」
武日「そんげなコツ言うもんではないじ! 作者オリジナル設定やなかね。」
オシキ「そうなんすけどねぇ・・・。わだかまりっていうか・・・。」
二人が、そんな会話をしていると、ある男が、語りかけてきた。
ある男「そこで、オリジナル設定の会話をしてるのは、武日様と『オシキ』様ではありませぬか?」
オシキ「ん? 誰かと思えば、ヤマトで一番の怪力の持ち主、当麻邑(たいま・のむら)を治める、当麻蹶速(たいま・の・けはや)こと『ケハヤ』じゃないっすか! どうしたんすか?」
ケハヤ「どうしたも何も、人探しにござる。」
武日「誰を探しちょるんや?」
ケハヤ「四方(よも)を探しても、たぶん、我(われ)の力に敵(かな)う者はおらぬでしょう。されど、叶(かな)うことなら、強者(つわもの)と出会い、生き死にを問わぬ、力比べをしたいと思うておるのです。そこで、御両人(ごりょうにん)に、思い当たる人がおらぬかと・・・。」
武日「そんげなコツなら、大王に伝えるべきっちゃ! ヤマト中の強者が集まるはずやじ。」
オシキ「そうっすね。大王にとっても、気分転換になるかもしれませんし・・・。」
ケハヤ「もしや、二年前のこと・・・まだ、引きずっておられまするのか?」
オシキ「そうなんすよ。どうにかして、元気を取り戻してほしいんすよねぇ。」
武日「とにもかくにも、さっそく、参内(さんだい)するっちゃが!」
こうして、作者オリジナル設定により、「ケハヤ」は、「オシキ」と武日と共に参内したのであった。
つづく
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