JW319 高志国、遥かなり
【東方見聞編】エピソード2 高志国、遥かなり
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
紀元前88年、皇紀573年(崇神天皇10)10月22日、大彦(おおひこ)たちは、高志国(こし・のくに:北陸方面)へと旅立った。
従う者たちは、下記の通り。
崇神天皇の皇子、大入杵(おおいりき)(以下、リキ)。
それから、葛城宮戸彦(かずらき・の・みやとひこ)(以下、みやさん)。
そして、和珥彦国葺(わに・の・ひこくにふく)(以下、くにお)である。
一行は、途次、男の子の赤ちゃんを拾う。
得彦(えひこ)と名付けられた赤ちゃんと共に、大彦たちは、淡海(おうみ:現在の琵琶湖)を渡り、角鹿(つぬが)に辿(たど)り着いたのであった。
大彦「ちなみに、角鹿は、二千年後の福井県敦賀市(つるがし)のことなんだな。」
リキ「この海を、七代目(孝霊天皇のこと)も拝(おが)んだんですなぁ。」
大彦「エピソード135のことなんだな。」
みやさん「おお! 皇子(みこ)! ようやく、得彦が泣き止んだのでござるよ。」
くにお「子守をしながらの旅になるとはのう・・・。」
リキ「ところで、大伯父。こっから、どないするんでっか?」
大彦「うむ。どう進むべきか・・・。」
みやさん「こういう時は、餅(もち)は餅屋にござるよ。」
くにお「角鹿の民(おおみたから)に聞けと?」
みやさん「左様にござるよ。」
大彦「で・・・では、聞いてみるんだな。ちょっと、そこの童男(おぐな:少年のこと)・・・。尋ねたいことが有るんだな。」
角鹿の少年「なんど(何ですか)? どんなんど(どうしたの)?」
大彦「ここから、高志国へは、どうやって行くのが良いのかな?」
角鹿の少年「おろぉぉ! おんじゃんらぁ(おじさんたち)、夜麻登人(やまとびと)な?」
リキ「せやっ。いわゆる四道将軍(しどうしょうぐん)やでぇ。」
角鹿の少年「おろぉぉ! ホンマけ?!」
みやさん「まことにござるよ。」
くにお「して、どう行くべきか、教えてくれぬか?」
角鹿の少年「ほんなら、八田(やた? はった?)に行ったら、ええど(いいよ)!」
大彦「八田? 読み方は、よく分からないのかな?」
角鹿の少年「作者が調べたんやけぇど、分からんかったげな(分からなかったそうです)。」
リキ「とにかく、そこに行ったら、ええんやな?」
角鹿の少年「そうやとこと(その通りです)! あのねやか(あのね)、そこには船着き場が有んがな(有るよ)!」
こうして、一行は、八田の船着き場に到着した。
大彦「さて、先導(せんどう:ガイド役)を誰に頼むか・・・そこが問題なんだな。」
リキ「それより、八田は、二千年後のどこになるんでっか?」
みやさん「読み方だけでなく、場所も分からなかったのでござるか?」
くにお「よく分からぬようじゃ・・・。ただ、作者は、福井県越前町(えちぜんちょう)の八田(はった)ではないかと考えておるようじゃ。」
大彦「地図を見ると、山間(やまあい)のようなんだな。」
リキ「それに、船着き場らしいところも、見当たらんで!」
みやさん「そこ以外の地ではござらぬか?」
くにお「まあ、山間ではござりまするが、その西隣には、舟場(ふなば)という地名も有りまするし、もしかすると、拙者(せっしゃ)たちの時代には、船着き場が有ったのかもしれませぬぞ。」
大彦「にわかには、信じられないんだな。」
くにお「それだけではありませぬ。八田と舟場の地には、和田川(わだがわ)が流れておりまする。そこから、日野川(ひのがわ)に至ることも出来ますれば、あながち間違いではないかと・・・。」
リキ「なるほど・・・。理(ことわり)には適(かな)ってるん・・・あっ!」
大彦「どうしたのかな?」
リキ「得彦のヤツ・・・おもらし・・・(´;ω;`)。わての衣(ころも)が・・・(´;ω;`)。」
みやさん「すぐ『おしめ』を換えねばならないのでござるよ。」
得彦の「おもらし騒動」で、てんやわんやとなる一行。
そんな時、杖をついた爺さんが、ゆっくりと近付いて来た。
爺さん「御一行よ。舟の先導を探しているのか?」
大彦「その通りなんだな。この子の『おしめ』を換えたら、探すつもりなんだな。ところで、汝(いまし)は、誰なのかな?」
爺さん「俺・・・いや、わしは、塩垂(しおたれ?)の長(おさ)だぜ。」
大彦「ハテナマーク? 読み方が分からないのかな?」
爺さん「その通りだぜ。」
くにお「どこぞの長老にござるか?」
爺さん「そんなところだぜ。この俺が、いや、わしが、素晴らしい先導を紹介してやるぜ。」
リキ「大伯父! 怪しい奴でっせ。気を付けなはれやっ。」
爺さん「怪しくはないんだぜ。そして、紹介する先導は、かなり頼れるオノコ(男)なんだぜ。では、紹介するぜ。安伊奴彦(やすいぬひこ?)だぜ。『ヌッヒー』と呼んでほしいんだぜ。」
ヌッヒー「お初にお目にかかりまする。うら(私)が『ヌッヒー』やが(だよ)!」
大彦「頼れそうな御仁(ごじん)なんだな。でも、読み方のハテナマークが、気になるんだな・・・。」
爺さん「作者も、いろいろと調べたんだが、よく分からなかったんだぜ。」
ヌッヒー「悔しいです!」
リキ「とにかく頼むわ。赤子も居(お)るんで、気ぃ付けてくれや。」
ヌッヒー「なんた(なんて)かいらしいねんね(可愛らしい赤ちゃん)なんにゃぁ(なんだ)。」
みやさん「名は、得彦と申すのでござるよ。」
ヌッヒー「こりゃぁ気ぃ付けて行かんと、あかんなぁ。」
爺さん「それでは、行ってくると、いいぜ!」
こうして、一行は「ヌッヒー」の先導のもと、川を遡上(そじょう)したのであった。
つづく
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