JW176 再会
【孝霊天皇編】エピソード31 再会
第七代天皇、孝霊天皇(こうれいてんのう)の御世。
すなわち、紀元前246年、皇紀415年(孝霊天皇45)。
孝霊天皇こと、大日本根子彦太瓊尊(おおやまとねこひこふとに・のみこと)(以下、笹福(ささふく))は、賊鎮定のため、遠征に赴いた。
向かう先は、伯伎国(ほうき・のくに)。
現在の鳥取県西部である。
同行する者は、下記の通り。
まずは、笹福の子供たち。
彦狭島(ひこさしま)(以下、歯黒(はぐろ))。
鶯王(うぐいすおう)。
彦五十狭芹彦(ひこいさせりひこ)(以下、芹彦(せりひこ))。
稚武彦(わかたけひこ)(以下、タケ)。
それから、宿禰(すくね)の物部大矢口(もののべ・の・おおやぐち)(以下、ぐっさん)である。
そして一行は、あっという間に伯伎に到着したのであった。
笹福「して、ここはどこじゃ?」
歯黒「妻木邑(むき・のむら)にござりまする。伝承では、どこを本拠地としたのか、全く書かれておりませぬが、地の理の明るい妻木邑をおいて、他に無しとの結論に至りもうした。」
笹福「ついに、妻木邑に来たのじゃな・・・。鳥取県大山町妻木(だいせんちょう・むき)に・・・。」
歯黒「左様にござりまする。そろそろ、村長(むらおさ)が来ると思うのですが・・・。」
するとそこに、都合良く、村長のヘンリーがやって来た。
ヘンリー「エピソード148以来だがん! お久しぶりだがん! 大王(おおきみ)!」
笹福「おお、ヘンリーか?! 息災であったか?」
ヘンリー「元気だけが、取柄(とりえ)だがな。」
笹福「左様か ((´∀`))。とにもかくにも、また会えて嬉しいぞ。」
ヘンリー「ところで、伯伎の鬼たちを退治(たいじ)てくれるというんわ、ホントかや?」
笹福「鬼?」
歯黒「大王。伝承では、賊のことを鬼と呼んでおりまして、今後は、鬼と呼ぶことに致しまする。」
笹福「なるほどのう。鬼か・・・。まあ、その通りじゃ。退治に参ったのよ。それに・・・。」
ヘンリー「それに?」
笹福「稲作技術の伝播(でんぱ)も道半ばであったゆえ、そちらも進めたいと思うておる。」
ヘンリー「おお! そげなことまで・・・。だんだんだんだん(ありがとうございます)。」
鶯王「と・・・ところで、大王。ここが、わ(私)の産まれ育った地にござりまするか?」
笹福「その通りじゃ。ここで、汝(いまし)が産まれ・・・・・・。」
鶯王「大王?」
ヘンリー「わ(私)としたことが、気の利(き)かんことを・・・。早速、呼ばいや(呼びましょう)。朝妻(あさづま)だがん!」
そこに、朝妻姫(あさづまひめ)がやって来た。
朝妻「み・・・皇子(みこ)。お久しゅうございます。」
笹福「あ・・・朝妻。会いたかったぞ。」
朝妻「わ(私)もだがん・・・・・・。あっ! もう、皇子ではありませんでしたね。大王。」
笹福「良い、良い。汝(いまし)にとっては、我(われ)は、いつまでも皇子のままじゃ。それより、汝に伝えねばならぬことが有る。我の傍に控える、この若人(わこうど)こそ・・・。」
鶯王「お・・・大王?」
笹福「汝(いまし)と我(われ)の子、鶯王じゃ。大きくなったであろう?」
朝妻「やはり・・・鶯王だったんかや? 本当に、立派になられて・・・(´;ω;`)ウッ…。」
鶯王「は・・・母上・・・にござりまするか?」
朝妻「母の顔を忘れてしまっても仕方ないがな。まだ小さかったんだけん(だから)・・・。」
鶯王「は・・・母上・・・(´;ω;`)ウッ…。」
芹彦「おお! それがしは、今、猛烈に感動しておる! (´;ω;`)!」
タケ「汝(いまし)が泣いて、どうするのじゃ!?」
芹彦「それがしも、母者とは、長らく離れ離れ! 思い出してしもうたのじゃ! (´;ω;`)!」
歯黒「芹彦の母御前(ははごぜ)は、讃岐(さぬき)であったな?」
芹彦「その通り! 母者ぁぁ! (´;ω;`)!」
こうして、親子の再会が果たされたのであった。
感動に浸りたいところであるが、話を進めよう。
笹福一行は、ヘンリーを迎えて、鬼退治に向けての軍議(ぐんぎ)をおこなった。
笹福「して、伯伎に蔓延(はびこ)る鬼とは、どこに居るのじゃ?」
ヘンリー「大倉山(おおくらやま)だがん! 標高1112mだがん!」
笹福「妻木より南の地か・・・。山中に踏み入ることになるわけじゃな?」
ヘンリー「そげだがん(その通りです)!」
歯黒「ヘンリー殿。鬼の大将とは、如何(いか)なる者ぞ?」
ヘンリー「牛鬼(ぎゅうき)という鬼だがな。がいにきょうてぇ(すごく恐ろしい)鬼で、べったぁべったぁ(たびたび)里に下りて来ては、じゃじゃくちゃ(目茶苦茶)にするんだがな。」
歯黒「ん? 話の半ばまでしか、聞き取れぬ・・・。」
笹福「なるほど。ヘンリーが『がいにきょうてぇ』と申すほどの豪の者か・・・。」
歯黒「大王は分かるのですか!?」
笹福「この地に、何年おったと思うておるのじゃ。汝(いまし)らも、少しずつ覚えるのじゃぞ。」
鶯王・歯黒・芹彦・タケ・ぐっさん「御意!」×5
笹福「そうか・・・。鶯王も、分からぬのじゃな・・・。」
鶯王「多少は、分かりまするが・・・。」
タケ「では、朝妻殿に教えてもらおうではないか!」
芹彦「なにゆえじゃ? 父上が、おるではないか・・・。」
歯黒「芹彦! タケの心遣いが分からぬのか?!」
芹彦「ん?」
鶯王「い・・・汝(いまし)ら・・・。」
ぐっさん「なるほどな。方言教室っちゅうことで、正々堂々と、お会いできるわけや!」
タケ「阿呆! 皆(みな)まで言うでない!」
ぐっさん「あっ! すんまへん!」
芹彦「ん? どういうことじゃ?」
笹福「・・・・・・芹彦らしいのう。」
こうして、大倉山の牛鬼退治のため、急遽、方言教室が開始されたのであった。
つづく
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