記事一覧
【エッセイ】形式を見る眼
自分が絵の形式分析をする時の眼というか判断力というかの社会的条件がいまとても気になっています。
自分の博論での仕事は伝統的な絵の形式分析の前提に揺さぶりをかけるものだと自分では位置付けていて、というのも、伝統的な絵の形式分析は、ある特権的な位置、つまり「絵の正面でかつフレームが視野に収まる位置」からの眺めを対象としていたからです。その特権性を相対化する意味が自分の仕事にはあると考えています。
【エッセイ】文体について
私の参加する金沢で9月13日(金)から開催の展示、「釘を打つ(打たれる)」のステートメント(↓のURLから見れます)は、ギャラリストからもらった骨組みをを私が解釈して書いたのですが、出品者の新井さんから、「読んだとき菊池っぽい文体だと思った」と言われて、「自分にも文体ってあったんだなぁ」みたいなことを素朴に思いました。
https://poolsidegallery.jp/posts/hamme
【読書記録】千葉雅也『センスの哲学』
千葉雅也さんの『センスの哲学』を読んだ。センスをモノの形式を捉えることと繋げて論じていて、結構なるほどとなった。作り手の自分としては前半がやや内容が薄く感じたけど(モノをいったん形式から見てみましょう、リズムとして捉えてみましょうみたいなことって、何かを作る人なら全員やることなので)、このくらいの薄さがこうした観点を持ったことのない人にはちょうど良いんだろうなとも思った。自分の目指すアウトリーチ仕
もっとみる平野泰子「hue and cry.」アートかビーフンか白厨
2024.4.14
アートかビーフンか白厨で「hue and cry.」を見ました。そこで展示されていた平野泰子さんの作品が興味深かったです。
作品を拝見した時の第一印象は、「写真っぽく見えるけどなんだろうこれ?」でした。というのも、この絵画の特徴である独特なグラデーションが、「フラッシュを焚いて撮った写真」の備えるグラデーションと似ている質を持っているように感じられたからです。
例えば、次
高木優希「第72回東京藝術大学 卒業・修了作品展」東京藝術大学
2024.2.2
高木優希さんの作品が面白かったです。
他人の部屋の写真をもとに模型を作って、それを撮った写真を描くという、やや入り組んだプロセスで生成された絵画とのことです。
「写真をもとに描かれた絵画」の備える独自の質感は絵描きからすれば一目瞭然ですが、その上で、この独自のプロセスを逆算させる(あるいは、違和感を覚えさせた上でステートメントまで誘導させる)ところまで描き切っている手腕が、ま
母袋俊也「空の絵〈Himmel Bild〉のさらに上方へ」GALLERY TAGA 2
2024.3.19
我が恩師、母袋俊也の「空の絵〈Himmel Bild〉のさらに上方へ」を見た。二階建てのギャラリー空間を活かした、インスタレーション性の強い展示だった。
展覧会タイトルにも含まれている空の絵こと〈Himmel Bild〉は、展示空間の上方に掛けられる原則で制作された絵画シリーズ。その原則に則って、一階の上方に絵画が掛けられている。
それらを眺めつつ、階段を登って2階へ向う。
清川漠「触感と反射」FOAM CONTEMPORARY
2024.3.13
清川漠さんの「触感と反射」を見ました。アクリル板と塗料によって作られた作品とのことですが、「長時間露光によって得られた像」のような見え方を獲得しているのが興味深かったです。アクリルマウントの写真と並べたらどう見えるのか気になりました(解像度の問題とかが際立つのかもしれません)。
「境界線」をテーマに制作されているとのことでしたが、この独自の技法がどのようにテーマの表現と繋が
須貝旭「類推の湖」RED AND BLUE GALLERY
2024.2.29
須貝旭さんの「類推の湖」をRED AND BLUE GALLERYで見ました。銀箔と感光剤を用いることで、経年変化をあえて積極的に引き起こすことを意図した絵画作品が展示されていました。
描かれている架空の湖というモチーフについてや、修復についてなど、色々な論点がありそうな展示・作品だなと思いましたが、個人的には、絵画における「イメージ」という言葉について考えさせられました。
黒木結「地球に線を引く」櫻木画廊
2024.2.26
櫻木画廊で黒木結さんの「地球に線を引く」(飯盛希さんキュレーション)を見ました。
ガザとイスラエルの死者数とほぼ同枚数のポストカードがギャラリーの床いっぱいに並べられているという作品です。ギャラリーの中には入れずに、窓からギャラリーの中を鑑賞するという形式の展示でした。
キャプションによると、ポストカードは23枚ほど重ねられて置かれているらしく、表面からは見えない部分がかな
末永史尚「軽い絵」マキファインアーツ
2024.2.18
我が師匠、末永史尚さんの個展『軽い絵』を見てきました。(マキファインアーツ)
色々と興味深い点はありましたが、個人的には、ステートメントに載っていた「控えめに抽象的なイメージ」という言葉に特に反応しました。
私はこの言葉から、末永さんが2015年にキュレーションした『控えめな抽象』という展示を思い起こしました。
そこで、その展示のステートメントを久しぶりに読んでみたので
半田颯哉「public void re-anthropocentrism()」LAG
2024.1.27
半田颯哉さんの「public void re-anthropocentrism()」を見ました。
最近の流行に「脱人間中心主義」というトピックがあると思いますが、そうしたトピックに対して警鐘を鳴らす意図を持った展示と理解しました。
脱人間中心主義的な美術にくくり得る作品が採用しがちな手法として「人間以外の存在が生成したものを用いる」というのがあると思いますが、実際のところ、
門倉太久斗「スピードレクイエム 」Gallery10
2023.12.30
Gallery10で開催されている門倉太久斗さんの「スピードレクイエム 」がとても良かったです。
門倉さんは「技術の進歩などによって機能的に意味が失われたものをいかに肯定することができるか」という主題に取り組んでいるのかなと理解しました。端的に、機能的に意味が失われたとしてもそこに美を見出すことはできるわけで、そうしたかたちでものごとを肯定していく態度が好きだなと思いまし
MOYAN「周縁の身体」氷川参道ギャラリー
2023.10.12
MOYANさんの個展「周縁の身体」がとても良かったです。特に入り口すぐの大作を興味深く拝見しました。
画面は二枚のパネルに分割されていて、左のパネルはMOYANさん特有のリアリスティックな描写で構成されていますが、右側のパネルはキャンバス地がそのまま残された部分が多く、また、絵具が乗っている部分も地塗りがされていないため、暗く沈んだ色合いになっています。
そうした左右の