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平野泰子「hue and cry.」アートかビーフンか白厨
2024.4.14
アートかビーフンか白厨で「hue and cry.」を見ました。そこで展示されていた平野泰子さんの作品が興味深かったです。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/137305381/picture_pc_7f7893ee332b895ba41edf1e05df882b.png?width=1200)
作品を拝見した時の第一印象は、「写真っぽく見えるけどなんだろうこれ?」でした。というのも、この絵画の特徴である独特なグラデーションが、「フラッシュを焚いて撮った写真」の備えるグラデーションと似ている質を持っているように感じられたからです。
例えば、次の画像は、上が平野さんの作品、下が適当にフラッシュを焚いて撮った写真です。このグラデーションの質の類似はかなり驚くべきもののように思います。ちなみに、下の写真は平野さんの作品のようになるまで繰り返し撮ったというものではなく、適当に壁をフラッシュありで撮ったら一発で生成されたものになります。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/137305544/picture_pc_d93b8302844a24dc62bf32a34c670a60.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/137305521/picture_pc_c57acef640d42b66a7ef0bafcffbfd59.jpg?width=1200)
思うに、そうしたグラデーションが写真という媒体を想起させるのは、写真という媒体の備える形式的な特徴のひとつに、「被写体の形態の描写に与しないグラデーションが画面を支配しているから」というものがあるのではないかと思います(これはそうした先行研究があるのではなくて、ただの仮説です)。
それで、フラッシュを焚いて撮影すると、そうした「被写体の形態の描写に与しないグラデーションが画面を支配している」という写真という媒体の特質を際立たせる効果があるのではないかと考えました。この論点については、今年中に論文を書いて検証したいと思っています。
そうしたグラデーションの質以外にも、フラッシュを焚いて撮った写真を想起させる要素があります。それが、グラデーションの上に乗せられた筆触の落とす影も描画されているということです。
フラッシュを焚いて写真を撮ると、被写体のキワに影ができます。それは、カメラから発せられた光が被写体を照らし、それによってできる影が奥に伸びるからですが、平野さんの作品の筆触の影は、そのフラッシュを焚いて撮った写真の被写体の周辺にできる影を想起させます。
例えば、これは「フラッシュ 写真」と検索して出てきた写真ですが、人物のキワに、下方へと影ができています。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/137305682/picture_pc_99d9e5cb48a89339747f2b11be435d8c.png?width=1200)
対して、平野さんの作品の筆触の影は、筆触からやや離れた下方に描かれているので、その「離れている」という点においてフラッシュを焚いて撮った写真にできる影とは差異を持ちますが、かなり似通った性質を持っていると言うことができそうです。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/137305775/picture_pc_3e195b26d63eb7b6ee713db6de0f0eff.png?width=1200)
まとめると、こうした「グラデーションの質」と「筆触の落とす影」が備わっているからこそ、平野さんの作品を見た時に「写真なのかな?」と感じたのかなと考えました。
ところで、meet your artの平野さんの回を拝見すると、「風景」というものがコンセプトに重要なようなので、平野さんの作品の備える「写真らしさ」と、コンセプトにおいて重要な「風景」を総合した解釈ができると面白いのかな、とぼんやり思ったりしました。
コンセプト面についてはまだまだ分からないことが多いのですが、いずれにせよ、あまり見たことのない質感の作品で、大変興味深く拝見したのでした。
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