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高木優希「第72回東京藝術大学 卒業・修了作品展」東京藝術大学

2024.2.2

高木優希さんの作品が面白かったです。
他人の部屋の写真をもとに模型を作って、それを撮った写真を描くという、やや入り組んだプロセスで生成された絵画とのことです。

「写真をもとに描かれた絵画」の備える独自の質感は絵描きからすれば一目瞭然ですが、その上で、この独自のプロセスを逆算させる(あるいは、違和感を覚えさせた上でステートメントまで誘導させる)ところまで描き切っている手腕が、まず卓越していると感じさせられました。

また、一見したところ、極めて写実的な絵ではあるものの(媒体が透明であるとも言える)、現代写実絵画の素朴な価値観からは辿り着き得ない独自の描写が見られて、大変興味深かったです。

例えば、このベッドを紙粘土か何かで作ったものの影に入れられた茶色は、肉眼ではそうは見えないはずの、写真を介した視覚に固有のものです。

そして、こうした色の選択は、現代写実絵画ではおそらく行われません。なぜならば、肉眼ではそうは見えないし、単に写真を模写しただけではいけないのが現代写実絵画だからです。

対して、髙木さんの作品は、写真を介していることを示すことがコンセプトの肝でもあるようで(ステートメントにも『明るい部屋』が引用されていた)、それが先のように、青を基調とした画面の影の中に、茶色を入れるという選択を可能にしたということが、絵描きとしてとても面白く見えたのでした。

もちまえの造形力の高さが、コンセプトの実現に適切に寄与している大変興味深い表現となっていたように思いました。また、現段階で可能な全力を出し切ったんだろうということが、作品やステートメントから伝わってきて、その熱量がとても良いなと思い、とても印象的でした。

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